体を保つ

体を保つために必要なストレッチについて

-ストレッチとは「ほぐすこと」-

私はある年齢で腰痛と膝痛を経験し、合気道を続けるためには、体のバランスを保ち、腰

痛や膝痛が発生しないよう、特別な配慮が必要だと気づかされました。稽古と同様にスト

レッチが重要であると認識しています。

私も経験したように年齢と共に体のあちこちに不調が生じるのは、年齢とともに、老眼になる、白髪が増える、頭髪が細くなるなどと同じようなものです。色々な理由で我々は体のバランスを損ないますが、年齢と共にそのバランス回復力も損なわれるようで、年齢と共に体に変調をきたしはじめます。四十肩、腰痛、膝痛など比較的多い症状でしょう。

人間は使わない部分を退化させることで適応しているのでしょうが、一見不要でも、実際には重要な役割をしている部分を退化させてしまう場合があるようです。その原因の一端にはあまり利用しないインナーマッスルの衰えや筋肉の衰えがあるようで、通常の筋トレをしても直らないことが多いようです。

実際のストレッチは運動前、運動後に行いますが、特に運動後に重点を置き、疲労して凝

こり固まった筋肉をやわらかく、柔軟にすることが疲労回復、体のバランスの回復に効果的

です。ストレッチは柔軟体操のようですが、軽い筋肉運動の要素もあります。特に腰まわり

のバランスを整える効果が大きく、腰痛や膝の痛みを軽減、場合によっては痛みの原因を

取り除く場合もあります。

我々は怪我や体の変調でどこかに痛み等がありますが、そのまま運動や生活をしていると、痛みや変調のある部分を庇うために、体の使い方が偏り、結果として体のアンバランスを拡大させることになります。痛み等がある場合には運動をしないというのも一つの手ですが、それはそのまま運動ができなくなってしまうことを意味する場合もあります。一度やめると多くの場合そのままになってしまい、ますます体力が減衰することになります。このような場合でも、負荷の少ない弱い運動をしながら、矯正することが必要です。

体のアンバランスを矯正するためにも、ストレッチ、特に運動前後のストレッチは重要です。運動前のストレッチはアンバランスな体のコリをほぐし、運動中の体の動きや体のアンバランスを矯正します。運動後には、ストレスのかかった部分が凝り固まるのを防ぐことで、同じく体のバランスを矯正してくれます。運動中にどこに負荷がかかったのか、自分のアンバランスを知るためにもストレッチは役立ちます。

一般的なストレッチ方法は色々ありますが、痛みを感じない程度に筋肉を伸張させ、その状態で少し長めの呼吸をしながら一定時間保持するスタティック・ストレッチが我々には最適でしょう。合気道の準備運動でも重要なストレッチが行われていますが、重要なのは、勢いをつけないで穏やかに行うことです。もっと時間をとって、さらに多くの部分を念入りに行うことが必要です。

ストレッチは、そのままの意味どおり、筋肉を引き伸ばす動作が多いのですが、筋と同時に筋肉を引き伸ばすことで、筋肉に穏やかな刺激を与え、血流を多くし、凝り固まることを防止する効果があるようです。

その意味で、マッサージのように「もみほぐす」こともストレッチと同様の効果があります。マッサージまでストレッチを拡大してしまうと、異論のある方もおられると思いますが、私はストレッチの本質はむしろ引き伸ばすことよりも、筋肉をほぐすことにあるのではないかと考えています。実際に引き伸ばさなくても、マッサージするだけで、引き伸ばしたのと同じように筋肉の柔軟性が回復し、体も柔らかくなることに気づいておられるでしょう。これはもみほぐしたあとで、ストレッチをやってみると最初から体が柔らかくなりよく伸びるのでもわかります。

もみほぐすことの欠点は、背中などの部位は自分自身で「手を使ってもみほぐす」ことは難しいですが、そのような部位でもストレッチならできるのです。ストレッチは一人で筋肉をほぐす方法としても良い方法でしょう。ストレッチに運動後の筋肉痛を防止する効果があることは、良く知られていることです。

少し、わき道にそれますが、ストレッチに関する効果として、カイロプラクティスとぺルビックストレッチについて言及しておきます。

ペルビックストレッチは腰骨を中止としたインナーマッスルのストレッチと強化です。年齢とともインナーマッスルが弱り、それが体幹部の腰骨や姿勢のゆがみとなって現れます。その結果腰痛の原因やその他の体の不調につながると言われています。内容はステレッチとヨガと似たところもありますが、どちらも体を整えると言う意味では同じ目的の運動でしょう。

また、カイロプラクティックはこの脊髄の歪みを矯正することで色々な体の病気や痛みの改善に効果がある療法といわれています。脊髄に関わる歪みが神経や体液の流れを阻害し、病気や色々な痛みの原因を作り出しているため、その歪みを矯正するというのが基本となった理論体系のようです。どうやって歪みを矯正するのかという方法はとは別に、歪みが神経や体液の流れに影響を与え、体に影響を与えると言うのは直感的に分かりやすい考え方です。日本では民間療法ですが、米国、ヨーロッパを含む海外では医師免許を必要とするきちっとした医療行為として認められているものです。

ストレッチに話を戻しますが、実際にストレッチをしてみると、体の左右で硬さに違いがあるのがよく分かります。それが左右の筋肉バランスなどにも影響しているようです。そればかりでなく、日々体に変化があることや、日々の体調を含め、ストレッチをしているだけで体の微妙な変化がわかってきます。

特に最近は、運動後のある程度時間をかけたストレッチによって、運動後の疲労や筋肉痛を軽減するとともに、筋肉をある程度長い時間もみほぐすことが重要だと実感しています。

運動をしなくても、ストレッチを行うことは、体(筋肉)の柔軟性を高め、老化を防止するたために有効と考えています。

人間は生物として使わない部分はどんどんと切り捨てて行きます。ボケ防止に頭を鍛えるのと同様、筋肉の老化防止のため、そして自分の体調を管理するためにも、穏やかなストレッチを毎日行うことが有効でしょう。

合気道では左右対称に技を稽古しますが、左右の技を同じようにできる人はまれで、多くの人が左右の動きに違いが出てしまいます。最初からバランスは取れていないのですが、若い時には気にならなくても、年齢とともにそのアンバランスは増大し、苦痛を伴う症状を呈したり、異なった意味をもってきます。肉体年齢を努力により若く保つことは可能ですが、鍛えられない所は、見えない形で衰えます。年齢は怖い魔物です。

合気道はかなり激しい運動の部類に入ります。無理をしないようにしても、負荷は大きいですし、倒れては起き上がる回数も半端ではありません。一回の稽古で数百回は倒れて起き上がるということをしているはずです。屈伸を500回やるようなトレーニングをしている人は少ないと思いますが、合気道では一時間足らずで500回ぐらいは倒れて起きるを繰り返しているはずです。体をいたわるためにも、十分にストレッチをやってあげましょう。

最後に私の経験ですが、ストレッチで腰の痛みと膝の痛みのどちらも、改善されていることは言及しておきます。今は痛みを感じることなく合気道の稽古ができるのですから。