名前をつけていただいたクモ

クモを採集していると未記載種や不明種を発見することがあります。ここでは和名や種小名に私の名前がついたクモを紹介します。

1. アマミクサグモ: Agelena babai, Tanikawa 2005

分布:奄美大島・徳之島

頭胸部の白い縁取りがオシャレ。奄美で初めて見つけた時は感動のあまり、絶叫しました。公園や人家の生垣など、身近な環境で見られます。本土で見られるクサグモ Agelena silvaticaに比べて体は小さく、網も小さ目です。

2. ヒラヤジグモ: Atypus wataribabaorum, Tanikawa 2006

分布:奄美大島

種小名のwatariは大学院時代の同期で、第一発見者の亘 悠哉くんに因みます。見た目はジグモと似ていますが、微生息環境は違っており、発見するのに苦労しました。今のところ奄美大島でしか見つかっていませんが、周辺の島々にも分布する可能性があります。

ちなみに巣の外観はこんな感じです。普通のジグモと違って、巣が樹木やコンクリートなどの基質にくっついていません。

地面の色と完全に同化しているので、見つけるのがめちゃくちゃ大変でした。

3. ババコモリグモ: Hippasa lingxianensis (和名のみ)

分布:沖縄県(与那国島)

日本新記録の属 (タナアミコモリグモ属)で、沖縄県の与那国島でのみ分布が確認されています。コモリグモの多くは地表徘徊性ですが、本属のクモは網を張ります。最初はタナグモ科のクモだと思っていたので、正体が分かった時はとても驚きました。

発見当初は新種ということで、Hippasa babaiという名前が付けられましたが、その後中国で記載されたH. lingxianensisのシノニムであることが分かりました。残念。

与那国島 (久部良バリ周辺) 黄色い矢印の先にクモの網があります。タイ南部で見かけた同属の別種(HAT-YAI)。見た目はこんな感じ。

4. ババハシリグモ: Dolomedes fontus, Tanikawa & Miyashita 2008 (和名のみ)

分布:本州(愛知県・東京都・千葉県)

千葉県・房総半島で発見されました。

発見当時はスジブトハシリグモの色彩変異と思っていましたが、詳細な形態の観察やDNA解析により別種であることが判明しました。こんな大型のクモで新種がいるとは夢にも思いませんでした。他のハシリグモに比べて脚が短いのが特徴です。休耕田など湿地に生息しておりオタマジャクシやカエル等の水生生物を食べていると考えられます。

その他:(Type Series となる)標本を提供した種

シマコアシダカグモ Sinopoda derivata Jaeger & Ono 2002

タカラジマウズグモ Octonoba yoshidai Tanikawa 2005

ムナビロアリグモ Mymarachne latithoracica Yamasaki & Huang 2012

ヘリジロコモリグモ Pardosa albomarginata Tanikawa et al. 2014