実践レポート

「問題解決法」で教室復帰を支援

私は小学校で養護教諭として働いています。

3年生のAさんは、クラスメイトのBさんとのもめごとがきっかけで、教室に入れないようになり保健室にやってきました。

今年度、同じクラスになってからしばらくの間、Bさんと仲良くしていたAさんですが、徐々にBさんの行動を負担に感じるようになりました。

Bさんは何事もAさんと共有したいタイプです。ところが、Aさんは、友だちと親しくするのは好きではあるものの一人で過ごすことも好むタイプです。特に、Bさんに身体に触れられたり自分の物を勝手に使われたりするのがとても嫌でした。ある日、意思をうまく伝えられずBさんを避けようとして手が出てしまい、大きな喧嘩になってしまいました。その結果、Aさんは教室に入ることに強い不安を感じるようになりました。

これまでも、しばしばお腹が痛いと訴えて保健室に訪れていたAさんでした。そこで、私は、彼女の話を十分に聴いたのち、「作戦会議」と称して問題解決法をおこないました。


<<1日目>>

◆問題の明確化と解決案のリストアップ

Aさんの今の気持ちを聴いたところ、Bさんにしつこくされると不安と恐怖を感じるとのことだった。そこで、Bさんの行動への対処法を一緒に考え、Aさんに書き出してもらった。 

解決案は

◆解決案の検討、決定、実践計画

私がBさん役をつとめ、ロールプレイを実施しながら案を検討した。Aさんが第2案の「視線を感じても、Bさんの方を向かない」をやってみると述べたので、さらに数回練習し「上手だね。きっと本番でもうまくできるよ」と伝えた。


<<2日目>>

Aさんは、1時間目終了後、保健室にやってきた。Bさんに睨まれたが関わらずに過ごしたと報告してくれたので、それを誉めた。Aさんの表情は少し明るくなってきた。その後、翌日の計画について「1時間目と2時間目に出る、視線を合わせないようにする」と述べた。


<<3日目>>

2時間目終了後、視線を合わせないようにしていたのだが、肩を触られたので「触られるのはイヤ」と言ったところ、Bさんは怒ったようだったが何も言わずに離れていったと報告してくれた。上手く言えたかどうかわからないと不安そうだったので、手を出さず言葉で表現できたことの素晴らしさと「それはAさんの努力の成果だよ」というフィードバックを伝えた。Aさんは安堵の表情を浮かべ「明日も頑張る」と述べたので、他の案もリハーサルをし、対策を練った。


その後、約2週間、毎日Aさんの報告、私からのフィードバック、翌日の実践計画決めを続けた。Aさんは徐々に参加できる授業が増えていき、2学期からは通常登校できるようになった。

《感想》

Aさんは理解力、行動力などの高い資質があるものの、友だちづきあいに苦手意識を持っていました。友だちへの対応スキルを身につけることによって、早期に教室復帰することができたのはとても嬉しいことでした。担任教師や保護者にも協力してもらいながら、よい支援ができたのではないかと思います。