実践レポート
友だちづきあいが苦手な生徒の基本的なソーシャルスキル向上をめざす
半年前から中学1年生のKさんの個別指導を担当することになりました。担任教師によると、Kさんはクラスで誰とも話をせず、学習面でも遅れがあるとのことでした。そこで、週1回、学習指導をしながら基本的なソーシャルスキルを獲得できるように支援することにしました。
〈目標行動〉
1. 挨拶をする
朝には「おはようございますと言う」。授業の開始時には「お願いしますと言う」、終了時には「ありがとうございましたと言う」。その際には、相手の顔を見る。
2. 指導者に聞こえる声の大きさで話す
3. 指導者の話が理解できたら「はいと言う」、あるいは「うなずく」。
4. 会話を続ける
〈指導方法〉
指導者がモデルを見せる:私がKさんの目を見て、はっきりとした声で挨拶をする。それに対してKさんが挨拶を返したら誉める。(時間がある場合には挨拶の練習をする)
指導者が、授業内容に関することだけでなく、家庭のことやKさん自身のことなどについても質問を投げかけ、雑談をする。
Kさんが「はいと言う」「うなずく」などの反応をしたら、指導者は微笑むことによって認める。
〈経過〉
4回目の指導が終わった段階(1か月後)で、「相手の顔を見る」「挨拶する」ができるようになった。ただし私から「挨拶をしましょう」と促すことが必要。声はとても小さい。「質問はありますか?」と聞くと、ある場合には「○○の問題がわからない」と言う(3回目までは無反応だった)。
3か月後 自主的に挨拶をするようになる。
4か月後 はっきりとした声で話すようになる。
6か月後、自ら、質問をしたり、塾やお稽古事での出来事や苦しかったことを話すようになる。会話のキャッチボールが成り立つようになる。
〈感想〉
週1回の指導ですが、徐々にKさんが私に対して心を開いていく様子がわかり嬉しく思っています。また、Kさんの反応を見ると「この実践を続けていこう」いう思いが湧き、私が励まされているように感じます。
担任教師も、私にKさんへの指導法について相談してくれるようになりました。教室でもこれまで以上に声かけをしているようです。
良い変化を見落とさず、すぐに誉めるように心がけています。もうしばらくKさんの指導は続くので、成長に合わせた課題を設定し、支援を続けようと思います。