⌘ 研究会設立の趣旨と目的
食品、医療、環境、工業材料、文化財などで適用される殺菌や滅菌、消毒などの処理において、その対象物の品質や材質へのダメージが懸念される場合、これを極力軽減するためにそれらの処理の負荷量を低減する傾向が強まっています。そのような条件での処理では損傷菌が発生し、処理後の条件によってそれらの生死は左右されることになり、滅菌の成否や殺菌の目標水準の達成は大きく変動します。
したがって、研究および実用の両次元での損傷菌の問題は、さまざまな分野で強く認識されるようになっており、その対策の必要性についての認識が高まっています。しかし、損傷菌の発生要因や検出の方法、損傷と修復の細胞メカニズムなど不明なことが多く、損傷菌に関わるサイエンスには生死の境界領域だけに大変奥深く解明が未だ困難な状況にあり、当然ながらその対策に利用できるテクノロジーの適用原理も確立には程遠いのが実情です。
わが国では、これまで損傷菌に関する組織的なプロジェクト研究は皆無と言っても過言ではありませんが、平成25年度から5年間にわたって進行中の農林水産省委託のいわゆる損傷菌プロジェクト研究は、その意味では損傷菌に関する科学技術の発展への嚆矢となる可能性があり、大変重要なチャレンジとしてその成果が期待されるところです。
わが国における損傷菌研究者は多くはありませんが、このような現状を踏まえ、将来のこの分野の進展の礎となるよう、このたび、関係研究者・技術者間の交流や連携を深め、損傷菌の発生機構や実態の解明、対応技術の構築を目指すことを目的として、日本損傷菌研究会(Japanese Research Society of Injured Microbes、略称名JRSIM、以下研究会と称します)を設立することとしました。