⌘ 損傷菌とは
損傷菌とは何か?
1. 外的な物理ストレス、化学ストレスに曝された微生物細胞
2. タンパク質変性・凝集、DNA損傷(それによる突然変異)、膜損傷などで正常な代謝状態とは異なる損傷を受けた細胞集団
3. 殺菌処理後の生菌数測定法により、生菌か死菌かの判定が大きく変動する細胞集団
4. 殺菌処理の直後には死滅せず、その後の培養条件(環境)によって生死が決定される細胞集団
5. 復活可能な損傷菌は亜致死的損傷菌(最適な方法では生菌と判定)、不能な損傷菌は致死的損傷菌(死菌と判定)
損傷菌の何が問題なのか?
1. 殺菌効率の過小評価:
生きているのに死滅したと誤判定している可能性
生死判定法・条件の選択の違いにより死菌と判定した場合、生残菌による重大事故の危険性
2. 生死判定の迅速化が困難:
損傷細胞は、再増殖までの増殖停止時間が非常に長くなる、
または増殖速度そのものが遅くなるなど、生死判定の迅速性と安全性の両立が困難
(品質管理の分野などで経験的に知られる何日も経過してから出現する主コロニーとは
異なる小さなコロニー集団など)
3. 損傷菌の定義、評価法の問題:
殺菌条件により、細胞が受ける損傷は異なる
殺菌条件だけでなく、微生物の種類によっても受ける損傷は異なる
殺菌条件、微生物の種類だけでなく、微生物の発育履歴によっても細胞の外部ストレス耐性能が変動し、
それによっても損傷や回復能力が異なる
これらの多様なパラメーターから生死判定や、損傷回復条件の最適化は個々の微生物への個別対応となり、
統一条件の設定が困難
損傷菌研究の目的
1. 安全性、正確さの追求:
個々の微生物に対応した損傷回復条件の最適化
生死判定法選択の最適化
2. 損傷と死滅の因果関係の追求:
どのような損傷を受けていて、それは死滅に関与しているのか
損傷と生死との相関について精査を行い、損傷と生死との因果関係を明らかにする