東北支部だより2018

京大建築会東北支部だより2018

五十子 幸樹(平成2年卒)

2018年3月より前任の阿部成治先生より支部長の役割を引き継ぐこととなりました.若輩者ではありますが,どうぞ宜しくお願い申し上げます.

東北支部は会員が少ないこともあり,例会などの活動は実施しておりません.今回,支部長の役割を引き継がせていただいたので,支部会員の情報交換の場となるウェブページの立ち上げなど検討したいと思いますが,今ここでご紹介できるような状況にはありません.

東北支部だよりの執筆は2015年以来2回目となりますが,今回も私の近況報告をもって支部だよりとさせて頂きたく思います.

前回の支部だよりの原稿を仕上げて京大建築会の事務局に送付して間もなく,平成27年9月9日から11日にかけて関東・東北で記録的な豪雨が発生しました.この豪雨で,東北大学工学部建築付属実験所の大型振動台が水没するという被害に見舞われました.この大型振動台は志賀敏男先生のご尽力により東北大学工学部付属実験所に設置されたもので,これまで数々の教育的成果と研究成果を生み出して来ました.先代教授である井上範夫先生が退官されてから私がこの振動台の管理・運営を引き継ぐこととなって間もなくの被災です.東北大学では,この振動台の他にも二つの施設で豪雨被害を受けており,文部科学省に激甚災害に伴う被災施設の復旧補助金を申請することとなりました.学内での申請取りまとめと調整,文部科学省への申請,補助金が認められてからの修理工事の発注というプロセスに2年半の期間を要しました.2017年度中になんとか発注に漕ぎ着け,この原稿執筆時点,被災からちょうど3年を経てようやく修理が完了,復旧に至っています.

東北大学が保有する大型振動台は油圧源室を地下に設けているので,振動台の稼働中も比較的作動音が静かであることが特長なのですが,地下に油圧源を持つことが仇となって豪雨に伴って地中に浸透した雨水が侵入し水没してしまったのです.

油圧源室に設置されたモーターや油圧源室冷却のための空調機械など電気設備は全て交換せざるを得ませんでしたが,油圧系統は洗浄して復旧することとして修理費を極力圧縮する努力をしました.

このような経験をするまで私は振動台設備の一ユーザーに過ぎませんでしたし,構造力学の理論が専門で実験的研究の経験を殆ど有していませんでしたが,修理作業の中で油圧システムを専門とする業者さんと膝を突き合わせて作業を進める内に,振動台設備に関する知識を深めることができ,貴重な体験となりました.

もう一つ,前回の支部だよりで報告させていただいた近況からの更なるアップデートについてお話しさせて頂きたいと思います.大学のグローバル競争激化の中で,国際連携の重要性が叫ばれるようになっています.幸い私の研究室では,中島正愛先生のお声がけにより耐震工学日米共同研究企画会議にProtective Systems Session Convenerとして参加させて頂けたので,米国のコネチカット大学,南カルフォルニア大学,メリーランド大学との連携を進めることが出来ました.耐震工学日米共同研究は更に次のフェーズへと進んだ模様で,私自身はProtective Systems Session Convenerとしての役割から退いていますが,ここで得た日米の連携は更に発展させていきたく思っています.本年は全米地震工学会(11NCEE)に参加し,コネチカット大学のProf. Christensonと南カルフォルニア大学のProf. Johnsonらが主催する国際ワークショップにも参加して参りました.メリーランド大学の若手准教授Brian Phillips先生とは審査付き国際共著論文が3編採択されており,現在もう一編が査読中です.日中の連携にも注力しており,清華大学,同済大学,広州大学との連携の強化を目指しているところです.