P-Delta 効果に伴う超高層建物の強震時下層部変形集中現象

地震国である我が国で超高層ビルの設計を行う場合,強震動による振動を考慮する必要があります.構造物は常時作用する鉛直荷重(重力)に耐えるため自ずと鉛直方向には高い強度を有しますが水平方向の強度は相対的に低くなります.このように相対的に地震動の水平動に対する構造物の地震時安全性を検討することとなるのですが,ここに落とし穴があります.

設計のための構造解析を実施する時,様々な仮定が設けられ構造物が解析のための数値モデルにモデル化されます.通常この過程で,水平方向の力の釣り合いが考えられ,重力の効果は無視されます.構造物の地震時変形が微小な時は重力の効果を無視しても誤差は小さいのですが,構造物が極めて大きな地震動に晒された場合,この仮定が大きな誤差を生むことになります.構造物の重量P が変形Δ 分だけ偏心することにより生じる2次的な力のモーメント即ちP-Δ モーメントの効果により,構造物の見掛けの剛性の低下や耐力低下,変形の一方向への累積などの不安定な現象を生むことがあります.

当研究室では,高層建物のP-Δ効果を考慮した真の安全限界を明らかにし,今後発生することが懸念されている極大地震動に対する建築構造物の安全余裕度を高めることを目標とした研究を進めています.

参考:

E-Defenseでの鉄骨造高層建物倒壊実験

P-Δ効果による高層骨組下層部における一方向への変形集中が全体の倒壊に繋がる現象が確認できます.