外務省IDDP国際機関就職ガイダンス 議事録

日時:2015年2月20日(金)17:00 – 20:00

会場:University of Sussex @ IDS Room 121

日時:2015年2月21日(土)14:00 – 17:00

会場:London Business School @ Sainsbury LT6

日時:2015年2月22日(日)14:00 – 17:00

会場:University of East Anglia @ Arts 2.02

第1部「国際機関就職ガイダンス」

講師:本田 英章 (ほんだ ひであき) 氏

外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 二等書記官

第2部 「国際機関職員を目指して」

講師:谷口 英里 (たに ぐちえり) 氏

UNFPA(国連人口基金)ソマリア事務所 Gender-based Violence Specialist

<第1部>

講演内容

· 自己紹介・所属組織紹介

- 外務省は、国際機関で働く意志のある日本人を支援する立場。

- 外務省の国際機関人事センターのウェブサイトにJPO派遣制度など各種情報を掲載している。また、Facebookにも国際機関人事センターのページがあり、最新情報を入手することが可能。

- ジュネーブのほか、ニューヨーク、ウィーンにも日本政府代表部があるので、担当の者に直接話を聞くことも可能。

- 国内でも大学に出張し就職ガイダンスを実施している。

· 国際機関の数

- 100以上の種類の国際機関が存在しており、仕事の分野は幅広く、どの分野でも国連職員として仕事ができるチャンスがあると考えてよい。

· 国連機関職員の主な仕事

- 交渉やフィールドワークのみではなく、いわゆるデスクワークも多い(文書作成、会議のマネジメントなど)。リサーチ、予算、人事など組織マネジメントに関わる仕事もある。民間企業で働いてきた人も、それぞれ自分が働いてきた分野で貢献することができる

· 日本人職員の割合

- 専門職員のうち、日本人は2.5%程度。

- 他方、日本は多額の分担金を国連に支払っており、地理的、金銭的な貢献度という観点から、現状の2、3倍の職員がいてもおかしくない。

- このため日本政府としては多くの日本人に国際機関で貢献してもらいたいと考えており、就職を支援している。

· なぜ日本人が少ないのか

- 応募者が少なく、日本人は全体応募者の数%程度。

- 言語の壁が応募を敬遠させてしまう。

- 主な要因として、日本の雇用慣行(新卒一括採用)との違いが挙げられる。国際機関ではキャリアを積んだ人の中途採用がメインで、資格要件厳しい(修士号保有、関連職務経験うち国際勤務経験が⚪️⚪️年以上など)。

- 言語の壁による採用関連情報入手の困難さも要因の一つ。

· 国連機関の採用制度

- ポストが要求する専門性をすでに持っている即戦力のある人が求められる(欧米型の転職市場)。

- 異動、昇進では、空席が出たポストに自己責任で応募し、競争に勝ち抜く必要がある。組織が昇格の面倒を見てくれる日本の一般的な昇格システムとは異なる。

- 常に次のポストを考えながら仕事をする必要がある。(資格や経験は自分で努力して獲得するようにする)

- 一つ一つのポストに対して募集をするので、たとえあるポストで面接まで行ってその後に進まなかったとしても、他のポストに斡旋してもらえることはない。

l 選考・採用の実際

- 空席公募は全世界に向けてインターネットで行われるが、現実的には内部候補者と外部候補者で採用実績に差があり、内部候補者が有利。以前に一緒に仕事をしたことがある上司がいる、など人脈がある方が有利。

- 人気のあるポストは競争倍率が100倍から1,000倍になることもある。

- 申し込みはオンラインで行われる。まず書類選考で9割程度が振り落とされ、次に筆記試験が実施される。オンラインで問題が送られ、一定時間内に問題を解いて解答を送り返す。

- 一つのポストに数百の応募が来るため、採用側は一つの書類に1分もかけないことも多い。そのため語学や学位などの形式要件で足切りとなる場合が多い。1言語より2言語、修士号より博士号の方が有利など。

- その後5名程度が3〜5人の面接パネルと対面、電話、スカイプいずれかの方法で面接を実施し、最終合格者を決定。

- 面接では、例えば直面した困難をどのように乗り越えてきたかということを英語で論理的に説明することが求められる。

- 日本人は、書類選考に合格するところまではよく聞くが、採用に至るケースが10人に1人くらいという印象。

- JPOを通さず直接国際機関に応募した場合、面接まで進むと外務省が関係の日本政府代表部や大使館を通じて採用への後押ししてくれる支援制度がある。(日本政府としての支援をする)支援を受けたい場合は、外務省の国際機関人事センターのメールアドレスか、担当官の知り合いがいれば直接連絡要。

- 採用プロセスは、長期間にわたる。早くて3ヶ月、通常6ヶ月、長い場合は1年間かかる場合も。

· 国際機関職員になるには

- 自身で小まめに空席がないかチェックすること。国連事務局関係のポストはUNキャリアのホームページにまとめられており簡単に検索可能。

- 中、長期的なキャリアプランに基づく準備が必要。

- 学歴に関しては修士号が最低限求められ、博士号があればさらに有利。

- キャリアプランに基づいて、関連する海外での職務経験や語学能力をできるだけ早めに身につけることをお勧めしている。

- 英語の文書を速く沢山作成できる方が有利。

· JPO派遣制度

- 外務省の予算で確保したポストに原則2年間の任期(事情により最高3年間)で派遣できる制度。

- 毎年30〜40名派遣している。

- JPOのメリットは、日本政府のお金で正規職員と同様の職務経験が積めることと、派遣機関終了後、概ね5〜7割が国際機関に残って勤務しているという実績があること(派遣期間終了前に自ら空席に応募する必要あり)。内部候補者としてその後の空席公募への競争に有利になることもある。

- 2015年度分は3月中に募集要項発表。(注:2015年3月11日発表)

- 応募要件において、9月末までに修士号の取得見込みを証明する必要があるが、イギリスでは証明が間に合わないとのご指摘を(イギリス大学院の留学生から)いただく。しかし、JPOではP2レベルの人材を派遣する取り決めとなっており、その場合修士号保有かつ2年の関連する職務経験[1]が必要。外務省としては国際機関に要件を満たす人材を、責任をもって提示しなければならず、また、スケジュール上、遅くとも9月末くらいには派遣先の調整に入る必要があり、9月末に修士号取得見込みが必要と設定せざるを得ない。

- 過去、大学と交渉し9月末修士号取得見込みの証明を発行してもらい応募していた人もいたと聞いているので、2015年度応募の可能性のある方は大学と交渉してみてほしい。

- JPOには繰り返しチャレンジしている人もいるので、一度不合格であっても前向きにチャレンジしてほしい。

- TOEFLのスコアについては、明確な足切り点数は設けていないが、合格している方をみるとおおむね100点を超えているという印象。ただ、TOEFL のみで英語が判断されるということではなく、あくまでも目安。

- 面接は英語と日本語で行われる[2]。

- 英語の筆記試験あり。英語で文書を作るなど。公務員試験のような過去問があるわけでもなく、組織で勤務できるかどうかを測るための問題が毎年作成されているため、問題の傾向はわからない。

- 最近の倍率は10倍程度。

- 応募書類の内容は例年のものと内容があまり変わらないことが多いので、内容を早めに考え出すとよい。書類作成には時間がかかる。

· JPO制度のメリット

– P2レベルの職員として仕事ができる。専門家として正規職員とほぼ同等の経験を積むことができる。給料もP2レベルと同等。

– JPO派遣後、正規ポスト獲得を目指す際に日本政府からの支援あり。正規ポスト獲得に向けたアドバイス、情報収集に関する手厚い支援をいただける。具体的には、応募したポストがある事務所の代表、大使館に日本政府側が出向いて採用を働きかける場合もある。

– 内部ネットワーク、情報を活用し次期ポスト獲得に繋げることができる。UNHCRなど、空席発生時にまずは内部職員に案内しどうしても埋まらない時だけ外部に公募する、というプロセスを取っている機関もある。この場合は内部にいないと情報さえつかめない。

· 国連YPP試験(制度、プロセス)

- 32歳まで受験可能。学士号があれば受験可能だが、他の国からの応募者も含めた競争となるため倍率が高くなる。過去2、3年で日本人の合格者は1人しか聞いていない。

- 試験では、相当な量のライティングあり

- 合格すれば最低2年、正式な国連職員として採用される。

· 国際勤務経験の積み方の例

- JPO以外にも、インターン、ボランティア等での国際勤務経験を積むことができる。平和構築人材育成事業(外務省の委託事業)は、勉強のあと1年間UNVとして国際機関で勤務が可能というプログラム。これらはJPOへステップとしても当然有効。費用の面でインターンが厳しいという場合でも、駐日事務所でインターンという手もある。在外公館の専門調査員として、外交官に近い形で仕事をしながら国際機関を考える人もいる。他にも協力隊、NGOなど。

· 国連機関職員の実像

- 仕事に対する満足度は高い。

- 語学力(文書、プレゼン能力など)はポストを獲得してからも引き続き課題。

<質疑応答> Sussex会場

· JPO受験に必要な職務経験は、修士号の関連分野である必要があるか。

(回答)ある程度関連していないと難しい。業務の中で何かしらつながりを見つけてアピールすることができればそれを考慮してもらえる可能性はある。例えば、キャリアチェンジを考えたきっかけとなった業務などに着目することなどが考えられる。(注:2015年度のJPO選考試験では、職務経験と学位の関連性は応募の要件とされていない。)

· 卒業後JPO受験を考えているが、希望する国際機関の職務内容について、どういった方法で情報をリサーチすればよいか。

(回答)昨年の例では6、7月にはJPOの受け入れ可能職種の一覧がインターネットに示された。そこで具体的な職務内容が書かれたものが掲載されるので、去年のものがあればそれを見る方法が一つ。一昨年は3月の応募の段階ですでに公表されていたが、年によって外に出るタイミングが変わる。分野によっては毎年のように募集している職種もあるのでそれを見て傾向を分析することと、UN Careersのウェブサイトでも関連のポストを探すことができるので、それぞれのポジションでどういう職務経験や学歴が必要になるのかを分析できる。

· ユニセフのインターンに応募した際に、実際のプロジェクトの内容に関する質問があったが、JPOでも職務内容に関する細かいリサーチが求められるのか。

(回答)もちろん職務内容について細かくリサーチするに越したことはないが、基本的に外務省の面接では特定のJPOポストに関する面接を行うわけではないので、そこまで特定のポストに関わる細かい知識は求められないことが多い。ただし、その後合格して特定のポストが派遣先として提示されたら、受入先事務所との面接が行われるので当然より具体的なリサーチが必要となる。

· 年によってJPOで募集をかける国際機関が変わると思うが、政府が重視する国際機関に年によってばらつきがあったり、採用が偏ったりすることもあるのか。戦略として、毎年応募される職種に応募すべきか、あるいは少し珍しい職種でもやりたければそこに注力すべきか。

(回答)自分がやりたいことを追い求める方が後悔は少ない。あまりJPOを派遣していない小規模な国際機関の場合、外務省としてもリスクを取ってJPOで派遣するかどうかは年によって考え方がかわるかもしれない。小規模な機関の場合、JPOの活躍の場が少なかったり、外務省の政策分野とマッチしなかったりすることもありうる。ただし、そのような機関での仕事が今は政策の優先分野ではなくても、数年後光が当たる場合もある。

· JPO全体での倍率はどれくらいか。

(回答)JPO全体だと10倍程度。通常の空席公募における100〜1,000倍という高倍率に比べればJPOは有利だし、競争相手は日本人。最近はJPOの応募者が減ってきているが、外務省はJPOの予算を増やそうとしている。国会で予算が通れば来年度からのJPOの数が増える可能性がある。

· 日本政府組織内からの派遣もあると聞いている。内部派遣された場合の役割の違いはあるのか。

(回答)政府からの派遣もあるが、公開ベースの公募が進んできた昨今、政府派遣だと採用されやすいということもなくなってきている。政府派遣の人も普通に応募する必要があり、そこで落ちることもある。省庁からの派遣を目指すことはいいが、英語能力を高めるなどの努力は不可欠。役所に入っても国際業務を担当できないこともあるし、必ずしも近道とは言えない。日本の役所で仕事することが好きで、さらに国際舞台で働きたいというのであればいいかもしれない。

· インターンや国連ボランティア経験など持っているが、JPOや空席公募で採用される可能性が高いなどの情報はあるか。

(回答)JPOの場合、採用者はなんらか国際機関でのインターンをやっている人が多い。メジャーな経歴としては、協力隊、国際NGOなどで働いた経験がある人がJPOに合格している。空席公募の場合、インターンの経験だけでは採用は難しい。例えばインターンの間に上司に掛け合って短期契約の仕事をもらい、それをつなげてポストを獲得するケースもある。UNボランティアの経験がある人が空席公募を通して受かるケースはあるが、最近はUNボランティアの経験があっても採用に至るのは難しいようである。

· JPOの試験では、英語での説明能力があればいいのか、それとも英語と日本語の間で翻訳するなど相互をつなぐ能力まで問われるのか。

(回答)あくまでも英語で英語の情報を要約するなどの能力などが問われる。

<質疑応答> London会場

· 博士後期3年間を実務にカウントされるのか。

(回答)含まれない。ただし、アシスタントリサーチャーなど給与をもらっている場合だと、在籍期間と並行して記載して実務として認められる可能性もある。週一回では難しいかも。

· JPO後に博士課程進学し、その後国際公務員になりたい場合の支援はしてもらえるのか。

(回答)JPOはその後国際機関での就職を前提とするので、最初からそれを前提としている方をJPOとして派遣することはできないが、派遣される職種によっては、将来の上位ポスト獲得のために博士課程に進学することがプラスになるようなケースもあり得るので、きちんとそのような事情を日本政府に説明し、理解が得られればその後改めて空席に応募した際の支援を得られる可能性はある。

· 2年間の職歴はどの程度関連性がないといけないのか。

(回答)JICAやUNVなどでなくても、何かしら共通項が見出せる業務をやっていて書類で表せられればよい。あくまでどういった業務を遂行していたかが重要。明らかに関係ない民間で海外との接点がある、駐在などあれば多少関係なくても関連する経歴と言える。修士号を取得してから積んだ関連する職歴の方が国際機関では評価されるが、JPO受験においてはそこまでは要件となっていない。

· 第二外国語はどの程度求められるか。

(回答)JPO選考試験では第二外国語が無いことによって不利になるということはない。フランス語やスペイン語ができる人は業務地域が広がるためアドバンテージにはなるが、英語のみの人でも多く派遣されている。ただし、派遣された先で、現地スタッフとのコミュニケーション等のために、勤務開始後の第二言語の研鑽は必要になる。例)ジュネーブでフランス語など。

· 国際機関後民間に流れる人材はいるのか

(回答)あまりいない。理由としては、日本はまだまだ雇用の流動性が低いことと、日本の民間企業において国連の職務経験を生かせる場が少ないから。日本の外務省、JICA、NGO、大学教授に戻る人や、医者や弁護士の資格がある場合は日本に戻ってその分野で仕事をする人もいる。

<質疑応答> UEA会場

· JPO派遣制度、派遣先の国際機関は毎年変わるのか?

(回答)原則としては、外務省が派遣取り決めをしているすべての機関に派遣可能。現在、赤十字、世界銀行等の金融系の一部は対象外。一般的にはJPOの空席ポストが外務省のウェブに載っている機関から選ぶと良い。ただし、ウェブに掲載されていない機関も、個別調整の上派遣している実績あり。したがって、応募の際は、掲載されていない機関でも希望があれば、応募書類に記入した方が良い。

· ロスター登録制度とは?

(回答)対象者は外務省ホームページにて登録可能。ある程度勤務経験があり、すぐにP2レベルに応募できる人対象の登録制度。登録済の方に応募可能なポストがあれば、外務省から個別にそのポストの紹介をする制度。その後の応募は個人で行う。

· UNV活用のメリットは?

(回答)UN正規職員ではない働き方の中では、かなり強い経歴として見られる。ある国際機関の例として、UN内部職員の中の採用優先順位は正規職員→JPO→UNV→コンサルタントの順となる。したがってJPOの次点ということになる。UNVであってもかなり経験のある人が採用されることが多いので、UNVとして採用されるのも日本人が採用されるのは簡単ではない。

· UN内のコンサルタントの採用プロセスと職務内容は?

(回答)インターン終了後にコンサルタントになるケースが一番多い。例えば、修士取得後インターン6ヶ月従事し、その後コンサルタントとして採用など。基本的には内部での属人的な採用、公募は少ない。そのため外部からの採用は少ない。仮に公募があったとしても体裁と整えるための公示ですでに候補者は内部にいる、という場合も考えられる。専門性の高い職種なら公募はあるかもしれないが、稀。コンサルタントの勤務内容は、正規職員の業務一部の下請けが多い。

· 国際機関でのインターン経験は2年間の職務経験に含まれる?

(回答)JPO応募の際の職務経験には含まない。ただし、有給のインターンについては考慮してもらえる可能性がある。無給インターンを職務経験と見なさない理由としては、所属の部署、上司によって勤務内容にかなりの差があるため。ただし、国際機関でのインターンの経験はJPOの職歴には含めないにしても有力な経験としてプラスアルファで評価される。国際機関への直接応募の場合は、無給インターンを職務経験に含めて検討してもらえることもあるようだが採用する国際機関の判断によるため一概に言えない。

· UNVと平和構築人材育成事業は行き着く先は同じUNVだが、どちらがJPOに有利?

(回答)JPO選考の際、UNVに受かる人材かどうかを評価されるよりも、UNVとして現場で経験した内容の方が評価されるため、基本的には同等。ただし、UNVに直接応募しても若い日本人が採用されることは少ない。過去の実績を見ると、若い応募者は平和構築人材育成事業の一環でUNVを経験した人の方が多い。

· JPO合格後、国際機関とのマッチングがうまくいかずに行くあてがなくなってしまう例はあるのか?どのくらいの割合でいるのか?

(回答)JPO合格後外務省が国際機関へ合格者を推薦したあと、国際機関の事務所との面接がある。この面接により派遣につながらない場合もあるが、その場合は国際機関の方から別ポストを提示されるケースが多く、応募者が再挑戦する機会が与えられる。そのため、これまでJPO合格後、派遣が取り消しになったという例は聞いていない。

<第2部>

講演内容

· 自己紹介

- 自らのJPOに至る道のりとJPOでの仕事、JPO派遣後の正規ポストの獲得プロセスについて。また、UNFPAについて紹介したい。

· JPOへの道のり

~JPO最初の挑戦~

- JPO制度が国際機関で働くための近道と判断し、挑戦を決意。

- オックスフォードのMPhil(Master of Philosophy)は2年コースだったので、1年目が終わったときにJPOに申し込んで、コース終了時に派遣を目指す計画だった。

- 書類審査をパスし、ジュネーブで面接を受け、年が明けて1月か2月に補欠合格の連絡をいただいたが、その後連絡はなく結局不採用だった。

- MPhilを修了したあと、大学の指導教官がUNDPのネパール事務所で働いている人を紹介してもくれた。インターンをお願いしたところ、受け入れ可能の返事をいただき、UNDPのネパールの事務所で3ヶ月インターンすることになった。ジェンダーに関する様々な質問に対するテクニカルサポートをするのが主な仕事であった。

- その後、上司がGTZ (ドイツの国際協力機関) での女性のエンパワメントの仕事に推薦してくれた。マイクロファイナンスがどの程度女性のエンパワメントに貢献したかモニタリング、評価する短期コンサルタントの仕事(2ヶ月)をいただいた。

- 今思えば、5ヶ月の間にもう少しここで自分の仕事ぶりを売り込んでネットワークづくりをしておけばその後のポスト獲得につながったかもしれないという反省はある。当時の上司がメンターのように相談に乗ってくれたことはよかった。

~就業経験を積んだ4年間~

- その後、日本に戻って就職活動を実施した。企業に入ることは考えておらず、国際的なNGOや 財団、国際開発コンサルタントなどに応募していたが、国際的な実務経験が少なく合格をもらえなかった。考え方を変え、少し間口を広げて海外に関わる仕事を求めて東京のタイ大使館の仕事にアプライしたところ、政治経済アシスタントとして採用してもらえた(4年間)。

- 開発とは直接関係ない仕事だったが、記者会見に行ったり、会議に出席して日本の政治経済状況をタイ外務省に報告したり、タイのハイレベル要人の訪問対応をしたり、タイの一村一品活動を日本で広げるために展示会を企画したりと、仕事内容は様々で良い経験だった。また、公式行事での司会業を通じて度胸もついた。

~途上国での実務経験と2度目の挑戦~

- それでもやはり開発協力に関わる仕事がしたいという思いがあり、たまたまネパールにある女性開発研修センターで、スキルシェアインターナショナルというNGOの仕事を見つけた。自分の興味がある分野の仕事であったし、ネパールでのインターン経験を生かすことができるので応募し、採用していただいた。

- ここでの3年間もいい経験であった。特に、着任2日目に街が交通ストに入っていて多くの職員が出勤できない状況となり、何をすべきか同僚に聞いたら、仕事などないと言われたのが印象的だった。ここは政府系の機関で昔はお金があったが、その後半分独立したため政府からのお金がなくなった。他方、給料は政府から出るため、職員のモチベーションが低かった。

- ネパールでは停電が多く、乾季は1日18時間くらい停電することもある。その間はパソコンが使えず仕事ができない。そのような厳しい職場環境の中で、どうやって仕事をするかを考えたり、相手のやり方を尊重しながら仕事を進めたりと良い経験を積めた。

- その後資金集めがうまくいったこともあり、2年目、3年目以降はカトマンズを出て、地方の行政官を相手に政策立案のアドバイスをする仕事ができた。

- その頃はJPOに応募することはあまり考えていなかったが、ネパールのインターンのときの上司が、ネパールを訪れた国連関係の日本人と引き合わせてくれて、その人に国連職員に興味があることを話したところ、JPO受験を勧められた。3年たったときにJPOを再度受けた。

- 大学院時代に受けた時に比べて実務経験もあり、結果的に合格することができた。

~選考から、ポジション決定までのプロセス~

- 選考プロセスにおいては、応募書類を出すときに派遣先機関の希望を示すことができた。UN Womenや UNDPなどジェンダーの仕事ができる機関を記載した。

- 面接のときには、その希望機関について、JPO派遣が終わったときにジェンダーにかかる正規ポストがあるのかどうか聞かれた。JPO派遣の先の正規ポスト獲得についても考えておいた方がよいのでは。

- JPOの派遣先機関での希望ポスト(事務所)を探す際は、外務省の人に関連する国際機関の日本人職員を紹介してもらって職場の様子などを聞き、参考にした。このような情報収集は非常に重要。

- アジアでのポストを希望していたが、アジアにはジェンダーのポストがなかった。いろいろ情報を集めて、ベトナムのアドボカシーオフィサーで、アドボカシーしながらジェンダーもできるかもしれないという情報を得たのでそこに希望を出した。しかしこれまでの経験がジェンダーに偏っていたためか面接では不合格だった。

- 再度ポストを探し、モンゴル事務所のジェンダーポストを見つけて応募したところ合格をいただいた。

- JPO面接では、今までどういう仕事をしてきたか、チームワークに貢献できるかなどが中心で、職務内容に関する専門的なことを聞かれることはなかった。

- 外務省からUNFPAと通知を受けて、実際にポストに就くまでに1年かかった。

· UNFPAについて

- UNFPA (国連人口基金) は1969年にUNDPの一部として設立。人口について担当する機関で、増え続ける人口をどのようにコントロールするか、家族計画をどのようにするかを課題としている。スタッフも予算も比較的少ない。

- 妊産婦死亡率を下げるための活動が中心。また、女性が子供を産むか産まないか、いつ産むのかなど個人が主体的に決められるようにするための支援を行っている。女性や青少年が主なターゲット。

- ジェンダー平等、女性が自分の体をコントロールするための環境づくり、人口動態(出産、死亡、移動)などの基本的な考え方を政策立案に生かしていくサポートをする。

- UNFPAでしか主張できないことがあるという点でユニーク。ただ、宗教や文化との関係でセンシティブな課題を扱っており、難しい面も多いがやりがいはある。

- 機関としては小さいが世界に150程度の事務所があり、UN Womenがない地域ではUNFPAが仕事をする取り決めとなっている。

· JPOとしての仕事

- モンゴルは旧社会主義国でロシアの影響も受けている。女性の地位は比較的高く、教育機会も比較的均等に与えられている。

- 大学進学率は男性より女性が大きく、ビジネスでも女性の活躍が目立つ。しかしこのことが男性の劣等感や不満につながっている面もあり、悪い場合は男性の家庭内暴力につながるケースもあった。

- 当時人口は300万人に達したところであり、UNFPAは家族計画を支援する方向性を打ち出していたが、政府としては増加傾向にある人口を減らす方向性に疑問を持っていた。人口の質を考えること、また安全に出産することが必要なことなどについて、政府と時間をかけて議論した。

- また、天然資源のおかげで中所得国になり、ドナーが引き揚げていく傾向があった。そのためUNFPAモンゴル事務所は民間企業と連携を進める動きもあった。

- ナショナルスタッフが多く、インターナショナルスタッフが少ない事務所だった。JPO派遣後の正規ポスト獲得にあたり上司に相談をする際にインターナショナルスタッフが少ないため少し苦戦した。派遣先のインターナショナルスタッフの人数も事前に調査しておくと良いと思う。

- JPO派遣だと若いが故にそれなりの扱いを受けることもあるが、モンゴルではどういうポジションにいても一人のプログラムオフィサーとして扱ってくれた。

- ジェンダーのプロジェクトマネジメントが主な仕事で、パートナー機関と一緒に年間活動計画を作成し、活動のモニタリングを行なった。時にはジェンダー関係の政策立案におけるテクニカルサポートを行った。

- また、日本から資金を得る、いわゆる資源動員の仕事もあった。さらに、他の国連機関とのジョイントプロジェクトにおけるコーディネートも重要な仕事だった。モンゴルにある大使館やJICAの方がサポートをしてくださり、大使館の行っていた草の根無償資金のプロジェクトを一緒に実施できたり、JICAの青年海外協力隊隊員をUNFPAの事業に受け入れたりと、日本からの資金動員に少し貢献し、事務所にアピールすることもできた。

- (GBDサブクラスターの会合の写真についての説明)災害が起きた際に対応するための、クラスターアプローチという活動にも従事していた。教育、保健、シェルターなどのセクターごとに調整をしながら対応していく方法。担当クラスターでは、災害時にも人権を守ることを目的とした活動をしていた。

- 仕事外でのスタッフ間の交流として、国連機関対抗のスポーツ大会や、クリスマスパーティーがあり、そこで歌って踊ることもあった。

· 正規ポスト獲得に向けて

- JPOは通常2年間、延長が認められれば3年間派遣されるが、2年はあっという間で、派遣期間内に次のポストを探すのは容易ではない。

- JPOで働いている事務所内で正規ポストをもらえるかは重要な要素で、調べておくとよい。

- 上司からのサポートも必要。2年目の終わりに日本人が事務所長になり、JPO出身者ということもあって正規ポスト獲得のサポートをしてくれた。

- ポスト獲得に向けて20〜30件ほど応募したが、面接に至ったのは1回。それも所長がサポートしてくれたことが大きいが、結局採用には至らなかった。

- JPOの場合は応募した段階から外務省の人事センターのサポートを得られるためとても有難かった。

- その後、Detail Assignmentといって他の事務所で短期間仕事をする機会を活用した。新しい日本人所長がソマリアの事務所長と仲が良く、9週間Detail Assignmentという短期のアサイメントとしてソマリア事務所で仕事をすることになった。そこで働きぶりを認めてもらい、たまたまジェンダーポストに空きがあったので応募して採用に至った。こうしたネットワークは重要。

- 応募からポスト獲得までのプロセスは比較的長かった。JPO2年目の終わりから様々な機関に応募開始、その後Detail Assignmentに応募、面接知らせが来たのが3ヶ月後、合格通知が来たのがさらに3ヶ月後。応募から6ヶ月かかっている。ただし、JPO終了から間を空けずに今のポストに就けてよかった。

- また、タイミングも重要。働きぶりを知ってもらっても空席がないと採用されない。

· ソマリアでの仕事

- 去年の10月ソマリアへ赴任したが、地域によっては紛争や災害があり、開発援助と人道援助が同時進行している。

- 治安の関係でモガデシュ(ソマリアの首都)に滞在できず、事務所はケニアのナイロビにある。現地情報が得にくいこともしばしば。職員は治安対策のトレーニングを受けた。

· 国際機関職員を目指す上で必要な資質

- 遠回りをしてもそこで得たものを大切にする前向きさと、何回失敗しても志を忘れない粘り強さ。

- 実績作りとアピールは日本人が苦手とするところだが、相手に伝えないと理解してくれない。きちっと自分の適正を伝えていくことが大事。どういう風にアピールするのか対策を立てておく。

- 情報収集するためのネットワークも重要。サポートしてくれる人も必要。

- 違う国で働く事への適応性も大事。自分の物差しが通用しないことも多々ある。異なる文化、宗教などを理解し尊重することが不可欠。相手に対する尊敬の念を持ち合わせることはとても大切。

- 日本人としての強みは、仕事に対する責任感や完璧さを求めるところ。任されたことをしっかり遂行し、細かいところに気を配る、組織の目標達成のために身を粉にして働く姿勢などは、日本人が評価されるポイント。

- 日本人のネットワークを使い、アドバイスをもらうことも重要。

<質疑応答> Sussex会場

· 応募の際にポストに関する情報(相手が求めている専門性)をどのように集めればよいか。

(回答)JPOの場合はそこまで深い専門性を求めておらず、比較的おおまかにJPOとしての人材を探している印象。あとは、実際には派遣されてから現場で議論しながら対応していく。

· 空席公募の場合も同じか。

(回答)空席公募では専門的なスキルや経験が求められる。自分の能力をアピールする必要があるが、その時にたくさんあるポストの中からある程度絞って、自分の経験とマッチさせてアピールさせる必要がある。

· カバーレターを書くときにはCompetencyに力を入れて書くべきか。

(回答)自分の経験としては、能力や資格よりも自分の経験を重視して書いた。面接でCompetencyを強調するようなイメージだった。

· 現在の職務において困難があったときにどのように克服したか。

(回答)比較的楽観的でストレスも感じない性格だが、いま一番のストレスはソマリアに入っている多くの国際機関との調整。個性の強いスタッフやソマリア人をまとめてチームをまとめていくのは大変。よく寝たりおいしいものを食べたりするなど、なんらかの息抜きをしている。

· JPOで採用される機関、その後の正規採用の機関は同じ場合が多いか。

(回答)同じ機関で正規ポストに申し込む方が、仕事の継続性やネットワークづくりという点で有利かもしれない。

· 適応性について、個人の経験上もっとも難しかった事は。

(回答)モンゴルにおける言語の面で苦労した。モンゴル人は英語もあまりできず、最初は通訳がいないとコミュニケーションがとれなかった。

· 今でも身につけておく努力をすべきスキルがあるか?

(回答)それぞれの専門分野を継続的に磨きつつ、横断的なスキルとして、プロジェクトマネジメント、アドボカシー、プログラムを担当する場合はモニタリング、評価など。

· やめたくなったことはないか?

(回答)ない。自分の場合は海外で仕事をする方が気楽で良い。

· 今後もUNで働きたいという希望?

(回答)UNに入ったのでしばらくは働きたいが、自分の興味があるジェンダーに関わる仕事を続けたいと思っている。

· UNFPA内での女性職員について、結婚、妊娠出産した場合の待遇はどうか。また、家族がいた場合の赴任に係る待遇(居住地等)はどうか。

(回答)UNFPAに限らず、出産休暇は産前1ヶ月、産後3ヶ月、時短制度があり。事務所内に保育所がある場合もある。また授乳のために帰ることが認められている。女性が結婚、出産しても働き続けることができる環境は整っている。家族帯同も可能。配偶者に国連機関内で仕事を見つけてくれるような制度があるなど、サポートは充実している。

<質疑応答> London会場

· 任期がある間に次のポストが決まったらどうなるのか。

(回答)移ることは可能だが、辞める一ヶ月前には通知が必要。赴任地ごとに、いなければならないという最低年数ある。

· 他の国際機関とのつながりから違う期間のポジションを狙えるのか。違う国際機関との人脈作りは可能なのか。

(回答)JPOのケースだと、働いていた機関に残ることが多い。その他の国際機関とのつながりは、コーディネーション等の仕事を通してつながりはできると思う。ジョイントプログラムなどがあれば働きぶりを見てもらうことも可能

· ソマリアへ行く可能性がなかった場合、ほかにどのような選択肢を考えていたのか。

(回答)JPO後は国際機関に残ることしか考えていなかった。JPO後に国際機関に残ることはJPOの方針でもあるため。

· 一度職務経験を積んでから大学院に進むのか、ストレートに学部から大学院に進むか迷っている。ほかのJPO職員の人の例はどのような人が多かったか。

(回答)一概には言えない。人それぞれだと思う。

· エントリーポイントの際に、どの程度のフィールド経験が求められるのか。

(回答)すごく必要。特に本部、地域事務所の仕事はフィールドサポートの仕事なので、選考のプロセスでもフィールド経験は重視される。本部、地域事務所は人気があるので、フィールドから受けに来る人が多い。途上国での経験やフルタイムで働いた経験が重要。

· 谷口様のお話で出た資金調達の際は、JICAや大使館以外はどこに働きかけるのか。

(回答)二国間援助機関にあたることが多かった。(例:スウェーデンのSIDAやスイスのSDC)。

· タイ大使館での言語は。

(回答)私のポストは英語だった。領事部ではタイ語が使われていた。

· JPO同期で、JPO派遣先と同じ機関に残る人はどのくらいいたのか。

(回答)半分以上程度はプロジェクト、コンサルタントポストも含め、何らかの形で残っていた。

· JPOで受かるか待っていないといけない間、落ちた場合にどうするのかなど考えていたのか。

(回答)自分自身が楽観駅な性格で、落ちたら落ちたでなんとかなるという心構えだった。心配しだすとキリもなく、エネルギーも削がれるので、やりたいことに集中し、後はなんとかなるという気持ちでいた。

<質疑応答> UEA会場

· 女性がUNで働く場合の産休の期間と産休取得の環境は?

(回答)日本の企業に比べて女性にとって比較的仕事を続けやすい環境が整っていると思う。したがって、キャリアを続けるには良い職場。産休は4ヶ月間。その後の元のポストも確保されている。授乳期間には時短勤務も利用可能で、柔軟な勤務体制が用意されている。保育所が事務所に併設されているところもある。

· 所属先、国が変わるたびに家族をつれていくケースが多いのか?

(回答)配偶者の仕事がある程度融通のきく仕事の場合は、一緒に国を移ってきているケースも結構見られる。その場合の配偶者の仕事は、コンサルト、建築家など。ただし頻繁な異動が原因で離婚に至るケースもあるが、配偶者次第だと思う。

· 在京タイ大使館勤務中に語学力キープのために取り組んでいたことは?

(回答)もともと英語が使える仕事を探していた。タイ大使館では日常的に英語を使う仕事に就いていた。そのため、留学時代に身につけた英語に加えて、大使館でビジネス英語も身につけられた。

· モチベーション維持の方法は?

(回答)自分は比較的楽観的な性格だと思う。落ちたらどうしよう、という心配はあまりしない。ネガティブなことはあまり考えないようにしていた。一度決めたら他の道はあまり考えない。

· Genderのスペシャリストになるに2年間のJPOは十分といえるか?

(回答)派遣先によっては、JPOだがアシスタントのような位置付けであまり仕事を任せてもらえない職場もあるようだが、幸い私の場合は2年間のJPO期間に、責任ある仕事を任せてもらえた。一人でプロジェクトを任されたこともあり、それなりの経験を積むことはできた。

· アジア圏、ジェンダー分野、国際機関へ関心を持ったきっかけは?

(回答)高校生のときから国際機関への憧れを持っていた。学部時代のゼミでジェンダー問題を学んだ。同じ女性のために不利な状況下にある人々のために何かできないかと考えるようになった。国連の仕事は、パートナーが政府機関であり、国づくり、制度、政策のための支援に携われる。国の根幹に関わるような仕事ができるのでそれが魅力。

· 日本での就職活動中、国際協力系、大使館以外に採用試験を受けていたところは?

(回答)シンクタンク、研究所にはいくつか応募した。それ以外は基本的に国際協力系以外受けなかった。

(了)

[1] 今年の応募要件について、下記のとおり変更あり(2015/3/11本田様より情報更新)。

応募資格のうち2年以上の職歴について、従来「修士号取得分野に関連する職歴」に限っていたところ「国際機関の業務に関連する分野の職歴」であれば応募資格が認められることとなった(職歴と修士号との関連性が応募時点では問われないこととなった)。当該職務経験は、「2015年9月末まで」に2年以上有することが求められる。

[2] 今年の試験情報について、下記のとおり変更あり(2015/3/11本田様より情報更新いただく)。UNDP及びWFPへの派遣候補者については、それぞれの機関が二次審査の選考を行います。(UNDPに応募する場合は、記入すべき英文応募書類が1つ追加されています。)