第7回勉強会 議事録・発表資料

テーマ:開発業界とICT(Information and Communication Technology)活用

第1部「情報発信のツールとしてのICT - 主に"先進国"側での利用についての経験から」

講師:神尾 幸子氏

経歴:

2003-05年メキシコとのフェアトレードプロジェクト(学生団体)に参画し、主にウェブサイト構築などIT面を担当。日本のIT企業でシステムエンジニアとして勤務後、渡英。2014年UNU-IASにてITインターンとして環境政策サポートのシステム開発に従事。Royal Holloway University of London, Msc Practicing sustainable development (ICT4D) 2013年卒業。現在はロンドンのIT企業でITコンサルタントとして勤務。

第2部 ディスカッション 「途上国のICT活用」

1. 教育のケーススタディー

2. 開発金融のケーススタディー

日時:5月16日(土) 13時〜16時

会場:Institute of Education (IOE) Level 3 Student Union S16 room

講師:神尾 幸子氏

<第1部>

「情報発信ツールとしてのICT−主に"先進国"側での利用についての経験から」

★ICT4Dとは?

ICTを用いて途上国の社会経済を発展させようという「ICT4D (=Information and Communication Technology for Development) 」の考え方。 ICTというとパソコンを想像されることも多いが、 現在ではモバイルやタブレット、付随する技術としてQRコードの利用などもある。ラジオ等も含まれる。

★Transition Town 活動(同movementの理念に共感した各地域住民による包括的な環境活動)におけるICTの活用

・参加を促せるのか?啓発活動を参加までどうICTを使って落とし込めるのか?

→環境活動に参加している人がどう思っているのか、活用実態調査・ソーチャルメディアはどのように貢献?

The Internet for social movement・・・便利で早く安くすぐ入る情報、組織だけでなく個人が情報を発信できる(Citizen Journalism)

・Internet とsocial movement はどのような関連があるか→情報を様々な人に知ってもらうのに一番有効

Ex アラブの春で、デモへの参加者を募るツールとして使用された。

環境運動(Environmental movement)は、インターネットが普及してから広く起こるようになったのではないか。→インターネットによる情報の普及により、一般市民にも環境運動が広まったという考え方。

但し、ITは活動に役立つものの、信念として相反する部分もある(Doubt the goodness of advanced technology)。Locality で起こる社会生活におけるフローと、ICTという情報のフローとの間に背反性が生じるという議論も。

インターネットがソーシャルムーブメントにどう役立つのか?

・人はインターネット上でどのような行動をするのか→

①書くこと自体がモチベーション

②(オンライン上で) コミュニティーに属するため

③その存在・業績を他者に知ってもらうため

④フィードバックを得るため

⑤Social Mediaを使用した多様なアクション(The Engagement Pyramid)

・環境問題での行動の事例

環境活動に特化したソーシャルメディアについての研究事例より:ソーシャルメディア上に自分の活動が載ることで、“社会的に認知”され、活動継続につながる。

→具体的なアクションへの落としこみについての調査結果としては、要望書を送るのは、タスクとしてわかりやすく、反応が良い。しかし、時間・労働が伴うものは、反応が良くない。尚、ソーシャルメディアは若者がより使う傾向にある。

Transition Town movement : ピークオイル等を問題提起として始まった環境活動。全世界的に広まりつつあるが、個々人の活動対象は自分の関連のある地域に特化して行うローカルの活動。例えば大量に使用する石油に対する取組み方法、省エネ、地産地消等、環境問題の観点から「移りかわる」活動。自分自身の中でもトランジションが必要(Mind transition)という観点からのワークショップもある。

Transition Network Web Project: 自分たちでやっていることをブログ等で広めることは有効であるとしてソーシャルメディアの活用を推進している。Social reporterという役割を立て、定期的に活動を紹介している。全体として、Blogだけでなく、Twitterや Facebook、You tube等も使用。

Transition Town(グループ)のケーススタディー

1Transition Belsize:

自分の住んでいる比較的狭いエリアでやっているグループ。

2Transition Town Brixton: 1.より広いエリアを含んでいる。Brixton Energy等、1つの活動に特化したグループが複数存在し、それぞれで活動している印象が強い。(Transition townと自覚していない人もいる。)

調査方法: それぞれアンケート(1と2、それぞれ20名、10名)、面談(各グループ5名)、グループディスカッション(各1回、5~6名ずつ)(フォーカスグループという方法)

1では、実際の活動には頻繁に参加していて(かつFacebookを使っていて)もグループのFacebook pageの存在を知らなかったという人がいたのが印象的だった(Twitterも同様)。Websiteは結構見ており、活動をしていること、またその信頼を得ることの象徴 (Website as legitimacy of the group) として考えられている。

2では、組織を運営するという点でGoogleのサービス等を有効活用している。Brixton Energy (グループの1つ) では、例えばソーラーパネル設置などのFund-raisingを活用。

ヒアリング結果:アクティブな参加者にとって、ICTは使えるツール。対外的には告知。オンライン上で自分たちの存在をアピールできる、オンラインで寄付等も容易にできるようになった。E-mailをICTで最も使っているとの回答が印象的だった。また、オンライン上での信用付与(Develop credibility Online)の側面もあり。

その他:

・月一でメールを流す→つながりは確保できるが、参加まである程度期間を要する場合も

・ニュースレターだけでなく、Websiteにリンクをして更に情報を集める

・問題点としては、アップデートしないことがネガテイブに捉えられる。ボランティア団体の場合特に問題になる(誰がアップデートするのか)。アップデートの仕方を知っている人と知らない人との貢献度の違いが顕著に出てしまう。

結果)

・影響力が強い人(創設者など)がいることは、ICTと別個のところで、新規で参加してもらうのに大事。

・Online で見つけて参加した参加者は2グループ30名中4名のみだった。

→とはいえ、アクティブな参加者になるまでにオンラインとオフラインの組み合わせを経ていくことも多い。環境活動は情に訴えることも大事だが、オンラインの情報をくっつけることで、より強い参加動機につながりうる。また、その逆(オンライン情報→知人に情報を訊く)のケースも然り。

・フェイスブックで参加者を募っても、短期的な参加者数のみで評価される(失敗とみなされる)のはどうかという議論もある。長期的に考えると参加に繋がるケースも。

・2において、ネットワーク戦略として、ローカルに訴えるには、自分のメディアだけでなく、地元のメディアで取り上げてもらう、キーパーソンからの口コミ等、もう一工夫必要。

・時間的制約やモチベーション等で、Facebook等インターフェイスツールへの参加継続の問題や、セキュリティーや他者の利用頻度を過剰に気にする動き等もみられた。

・オンラインとオフラインのどちらの方が活動について話しやすいか:

オンライン・・・自分の好きな時に流せる、一般的な情報になりがち

オフライン・・・タイミングを計る必要がある、その人に対して個別で有益な情報を提供できる

結論)

・参加者のコミュニケーションツールとしてICTは効率的。しかし、情報を更新続けるのは必要だが負荷が高い。長期的に続ける工夫が必要。すぐに効果がでるものはないが、きっかけになる可能性は常になる。

・ローカルの非参加者に対しては、戦略、工夫が必要。

環境政策研究におけるICT活用

・システム開発をエクセルで行い、Websiteとリンクさせるという作業に従事した。エクセルはITのスペシャリストでなくとも様々な機能をVBAで構築できるため非常に便利だが、全てWebsiteでおこなうようにするという方法もあった。構築初期からITの専門家もかませて最適な方法を選択する必要があるのではないか。細かい点を詰めておくこともシステム構築において非常に重要。例えば、User Loginした上でツールをdownloadできるようにする、Passwordを忘れた場合の対策など。ツールにより簡単に実現できるものとできないものがある。

・ICT人材の利用について:

プログラマー(例えばWebsiteの具体的な制作)、システムエンジニア(業務フロー仕組みの設計)ができることと、ウエブデザイナー(Design面のプロ)ができることとは違う。例えば、ウエブサイトを作る場合、ソフトの専門家であるプログラマーは構築できる場合もあるが、デザイン面においてはクオリティが低い場合もある。また、ITエンジニア=パソコン(PCなどのハードウェア)に詳しいというわけではない。例えば、ソフトウェアの専門家がハードウェアについてはあまり知識がないことも多い。途上国開発の視点では、インフラ整備やネットワーク(インターネット含む)を繋ぐ専門であるフィールドエンジニアの領域で活躍できることが多いのではないか→状況に応じ、適切な人材の利用が重要。

<第2部>

第2部はディスカッションのため、割愛。