2014/15年度 IDDP第5回勉強会 議事録・発表資料

「エネルギーインフラと開発 ~低炭素社会実現に向けたJICAの取り組み~」

◇開発援助機関としてのJICAの役割

・52億 この数字は何を表している? → 開発途上国で暮らす人の数

・途上国が抱える課題は?→貧困、紛争、教育、保険医療、気候変動、インフラ不足。

・ODAとJICA

→JICAは二国間援助で、無償有償資金協力、技術協力・技術援助、貧困削減に資するプロジェクト等地球規模の課題に取り組んでいる組織。相互依存の関係を進め、相手国の生活を良くすることで、日本の生活を良くし、ひいては日本の国益を守ることに繋げている。国際協力もその目的の一つ。

支援スキームは主に5つ:

①技術協力 例 技術専門家派遣、研究員受入

②有償資金協力 円借款(長期返済期間・低金利)と海外投融資(民間セクターを通じた開発促進)に分かれる。

③無償資金協力 例 道路、学校、病院など基礎インフラの整備

④国際緊急支援 バヌアツの緊急援助等の災害からの復旧支援、国際緊急援助

⑤市民参加協力 例 青年海外協力隊(ボランティア事業)、開発教育支援

★JICAの支援の流れ・・・途上国からの要請に基づく案件形成のための調査、案件審査、方針策定、実施

◇エネルギーセクターにおける課題と取り組み

・世界地図上、サハラ以南アフリカの電化率が突出して非常に低い:都市部60%、地方部14%。

(例えば非OECDアジア:都市部94%、地方部73%。)

・エネルギー需要の伸びについては、非OECD諸国が急増している。特にアジア諸国の電力需要増大が顕著。

・エネルギーの発電量の推移については、OECD諸国で減少しているが、非OECD諸国では石炭が引続き増加。(石油は減少。)また、風力、太陽光が急増。エネルギー全体の量、特に化石燃料が増えており、今後も増加見通し。

→気候変動対策の問題とも繋がっている。化石燃料減少に向けて、どう対策をとるのか。また、再生可能エネルギーを如何に増加させていくのかが、今後の鍵。

・発電所建設のニーズは高いものの、莫大な資金が必要。(ざっくりいうと1メガワットで約1億円程度)

→途上国は今後この分野の投資が必要だが、世銀やUNDPなど単独で支援を行うのは限界があり、民間資金導入が必要。

課題のまとめ)1エネルギーへのアクセス向上 2化石燃料利用の抑制 3莫大な資金ニーズへの対応

→上対応に際し、経験者の人材不足であり、先進国からの技術支援が課題。

◇持続可能な開発には先進国の協力が必要 ではJICAの基本方針は?

対象分野:

1次エネルギー(枯渇性・再生可能エネルギー)→エネルギー転換(発電)→最終エネルギー消費(産業、民生)

(注:スライド黄色の部分がJICAの役割の部分)

基本方針: エネルギー供給について・・・

Low Cost ライフサイクルコストや外部不経済を含めたトータルコストの逓減を目指す。民間も活用。

Low Carbon 日本の優れた技術を活用した高効火力、水力、低炭素電源導入等。

Low Risk エネルギーベストミックス、1次エネルギーの安定確保等。

★JICAの得意分野は二国間援助。相手途上国の基幹電力システムが主要なターゲットとなる。日本の技術を活かした協力推進を目指し、豊富な資金力を活かしながら、NGOができない規模のものを、他の国際機関と協力しながら推進する。

◇低廉、低炭素かつ低リスクのエネルギー供給 (基本方針) について :課題は①-⑤ の5つ

①上位政策の策定

・エネルギー政策立案→ 途上国ではまだきちんと纏まっておらず、(電力需要等情報不足)この分野で協力が重要。

・電力開発計画→途上国インフラ省等で専門家が助言、長期的戦略のマスタープランを策定。

この点、どういったルートで送電線をつくるのか、最小費用、最適投資を踏まえた開発計画を作っていく。

・電力セクター構造改革→発電送電配電など分割してやるのか、民営化するのか等見極め、国毎にサポート。

・電力人材育成と電力基準等の整備→電力保守管理の指導はJICAの得意分野だが、海外で教えられる人材は不足している。日本国内のリソースをどうやって増やすかが、国内の課題となっている。

②エネルギーアクセスの向上

・発電所から変電所を経て家庭への電気の流れ→発電所から一次変電所に送られ、二次変電所に送られ、さらに電圧を落としたものが家庭へ。 (・・・オングリッドと呼ぶ。)

⇔ オフグリッド・・・太陽光や水力、風力などグリッドに繋がっていないもの。離島や山間部等遠隔地に多い。

問題

オングリッドの問題として、送電線延伸において、不採算部門は、民間は作らない傾向にあること。→アフリカのザンビアなど不採算地域に以下に電力を届けるかが現在の課題となっている。

★最適な電力開発を策定する計画に対応する資金調達を行うことは容易ではなく、やはり上位政策に基づいた計画に基づく資金調達が重要となる。また、一次変電所等電圧の高いところは技術が必要で高コストなので、JICAが円借款等を利用して重点的に協力している。

オフグリッドでは、ディーゼル発電が主要になっている。但し、ランニングコストが高い。最近ではBOPビジネスの一環として、例えばソーラーランタンの普及活動なども行われている。

③低炭素社会に向けた電源開発

(1) ディーゼル発電 途上国の地方部で広く使われている。代替電源の開発が課題。

メリット 負荷追従性が高い(すぐに電力が作れる)。 調達や補完が容易で、建設期間が比較的短い。

デメリット 生産コスト高い。大気汚染に繋がるような物を排出する。

(2) 火力発電 蒸気にしたあと、タービンで発電して電気を送る。

・日本は天然ガスの環境負荷対策の技術的水準で世界最高クラスであり、輸出もしている。

メリット 構造は大筋で天然ガスも基本同じだが、天然ガスは火力発電の中で環境負荷が一番小さい。

他の発電より大気汚染物の放出が少ない。小規模から大規模の物まで発電設備が造れる。

デメリット 建設に2-3年の期間がかかる。建設コストが高い。 日本の場合、燃料を海外からの輸入に依存していることから、エネルギーセキュリティーの面からも不安定

(3) 石炭火力発電

デメリット 環境負荷は高い。CO2を如何に減らしていくのか、例えば地中に減らす、熱効率を良くするなどが研究されている。

(3) 原子力発電

メリット: CO2は排出しない

デメリット: 高レベルの廃棄物 処分が世界各国で問題。

(4) 大規模水力発電 (再生可能エネルギー)

メリット: CO2を出さない。発電の起動停止が簡単。

デメリット: ダムを必要とする場合に莫大な建設費が必要。生態系への影響。地方は送電コストがかかり発電効率が低下。

(5) 省水力発電 小さな流れている川に水車を取り付けるなど比較的小さな発電。

メリット: 建設費用が小さいので取り組みやすい。

(6) 地熱発電 九州などで活発

メリット: 二酸化炭素を排出しない、再生可能エネルギー、朝から晩まで安定した発電が可能。日本の技術が高い。

デメリット: 開発費や調査費が高い (開発リスク)。調査から稼働までの期間が長い。水質変化への懸念。

→NZやアイスランド、ケニア等海外では活動は活発にやっている。

(7) 風力発電

メリット:再生可能エネルギーの中では、発電単価が比較的安価で発電効率が良い。

デメリット: 風が吹かないと発電できない(稼働率が高くない)、台風など強すぎても不可、場所も限定、バードストライクの問題などもあり。

(8) 太陽光発電 JICAは無償資金協力などで多くの実績あり

メリット:低炭素、低ランニング・コスト

デメリット: 急な天候の変化に伴い、電圧が急激に変化し、機材に負荷が生じる、その電圧変動を抑えるためにNAS電池などが用いられることもあるが、高コスト、メンテナンスが必要。また、売電の単価は政策に影響される

★コストについてのまとめ

・設備利用率(1年間フルに発電した時に比べ、実際に発電できるのはどのくらいあるのか)を考慮しないといけない。風力で20% 太陽光12%など低いが、石炭火力やLNG火力は80%と高い。その石炭火力やLNG火力は2010年、2030年ともに低発電コストだが、太陽光は、2010年は高く、2030年は2010年より低下する予想。

・各国の電源の割合 再生エネルギー割合に注目、ドイツ、スペインは高い(22%、30%)が、日本は少し低くて11%。

・日本の発電量の構成は、2011年の震災以前は石炭、ガスに並び、原子力の割合が高く(26.3%)、震災後は石炭・ガス火力による発電が主流(43.2%)。しかし、燃料の単価は比較的高く、また輸入に頼らねばならず、セキュリティーの問題にも左右される。

④効率的な電力輸送

・途上国では、電力輸送でのロスが大きいので、ここを国際支援としてもカバーすべき。

⑤省エネルギー

→日本と海外とで考え方が違う:

日本 行動抑制を含めて需要の絶対量を減らすことを目的 政府主導の規制に重点

欧米 高効率危機や代替技術を採用することによるエネルギー消費の逓減を目的 民間企業の市場原理を活用

事例1) ルワンダ 電力システム開発のための電力公社能力向上プロジェクト

・内線で人材が不足し、技術資料も無いため、電力施設を改善できず、ルワンダ政府からJICAへ、技術協力と無償資金協力を要請された。無償協力では、配電線は地下に埋められているが、どこを直せばいいか、技術資料(地図)が無くなったため分からない。どう探せばいいかを含めた支援を行った。

事例2) 地熱開発支援

・民間が地熱開発支援を行っているが、試掘など多大なリスクを伴う箇所は政府が行う。

★JICA協力の方向性

・途上国ニーズの把握、国際社会の潮流に対する理解及び対応、日本による協力の意義の検討の3本柱。

エネルギーセクターの留意点→国別にどういった物が求められるのか、民間との連携、技術の活用、官学連携など

◇日本の電力事業の特色について

・かつては電力会社は600社以上、地域独占ではなく、料金も設定自由 →過当競争による構造変換→政府主導により、料金、地域独占

オイルショック以前: 電力需要は年10%以上の割合で増加。電気事業者は設備投資に注力。

オイルショック以降: 経済成長鈍化に伴う電力の伸び悩み→政府と事業者が共同で脱石油依存のための提携の多用化、電源立地対策を推進。

地震による原発事故、→安全管理、原発停止にもと舞う電力不足

・日本では、発電送電配電などの体制の見直し機運が高まった一方、民間電気事業者の経営を安定させ、それが必要な質・量の電力を必要なタイミングで供給し、それが結果、経済発展に寄与してきた。→ 発展途上国では、政治経済等、各国の事情を勘案しつつ、協力を進めるべきである。

以 上

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