7月勉強会議事録

JICA職員と開発コンサルタントが語る!国際協力の実務

目的:JICA職員、開発コンサルタントの具体的な仕事への理解を深める。開発業界の仕事を考えている方々に、より明確なキャリアイメージを持っていただく。

JICA(国際協力機構)職員:加納 大道 氏

開発業界 各プレイヤーのポジション

様々な開発業界への関わり方を、海外業務がメインか国内業務がメインか、そして公的な仕事が多いかどうかという2つの軸で捉えるのも1つの見方。JICAは海外と国内に幅広くまたがる業務が多く公的な機関の立場。開発コンサルタントは海外現場の仕事がメイン。

JBIC、JETRO、民間(日系)企業とJICAのプロジェクト

・JICAは途上国政府に資金供与 ・技術支援

・各国政府がプロジェクトを発注

・JETROは日系企業の海外進出を支援(情報提供等)

・日系企業は入札に参加し、プロジェクトを請け負う。

・JBICは日系企業に投融資

JICAと国際機関の比較(個人的見解)

・JICA ・国際機関

1)方針

日本政府の方針に従う 出資国間の合意に基づく

2)アプローチ

日本の知見・経験の活用 特定のものによらない

3)仕事の拠点

日本が拠点、海外駐在は10年に1回程度 プロジェクトによる(海外を転々)

4)業務上のパートナー

日本企業や日本ベースのNGOなどが多い 多国籍

JICAと民間の事業の特徴(個人的見解)

・JICAは持続性・公益性重視。

・決してJICAは駐在が長いわけではなく、民間企業の方が駐在が長く同じ担当者が1つのプロジェクトを最後まで担当することが多い→現地事情に詳しいことも多々

・JICAは公益事業・人材育成・高リスクな投融資が中心、民間企業は雇用創出等、BOP層へより直接的に裨益するビジネスの可能性。

・JICAは事業対象分野や、相手国の所得水準等に応じ、

1)技術協力

2)円借款(低金利・長期返済の融資)

3)無償資金協力

これら3つを組み合わせて途上国支援を行う。

JICA職員から見た開発コンサルタント(個人的見解)

・開発コンサルタントは案件ベースでプロジェクトに注力できる。

・JICAはシナリオ作り⇔開発コンサルは実際のプロジェクトを遂行するプロフェッショナル集団。

・開発コンサルタントとして活躍するには特定専門分野のバックグラウンドを要し、新卒採用は少ない

JICA職員の仕事

幅広いポジションで働く可能性がある。人事や総務などを経験する可能性も。業務経験や自己研鑽を通じて専門性を高めキャリアを形成していく。

・東京の本部では

1)組織運営系の部署(総務など)、

2)地域別部署、

3)セクター別部署、

4)事業促進系部署、

5)特定事業系の部署(協力隊関連、緊急援助など)等がある。事業担当はひとりあたり10件以上の案件を担当することもある。その他に国内拠点や海外拠点で従事する。

・プロジェクトのサイクルにおいて、以上のあらゆる国内外の部署が様々なタイミングで関わって事業を動かしていく。また、開発コンサルタントとは、サイクル上の案件デザイン・実施・評価等さまざまなタイミングで恊働する。

本部課題部の仕事の例

・例として、本部で事業を担当する際に求められるスキルとしては、長期的なシナリオを具体的につくる構想力、マクロ/ミクロ両方の視点でソリューションを提供する力、多様な関係者を巻き込む力など。

・海外に出張して案件を具体化する。

・案件を具体化するケーススタディとして太平洋の廃棄物問題で考えてみる。現場の状況から課題を特定し、解決に向け最適なアプローチを考える(専門家のアドバイスが必要か、機材が必要か)。その地域に使えそうなリソースがあれば活用する(三角協力)。

海外での仕事の例

・JICAの事務所で働くことが基本だが、プロジェクトの中のいちメンバーとして働くケースも(プロジェクト業務調整の仕事など)。

JICAで働く魅力・大変なところ

-魅力

1)開発のアップストリームからダウンストリームまで幅広く経験できる

2)働きながら専門性を高められる

3)組織運営にも携われる

-大変なところ

1)若手時代は専門家との仕事についていくことが難しい

2)プロジェクトの最初から最後まで関わることが難しい

2. 株式会社パデコ プロジェクトコンサルタント:角岡 正嗣 氏

開発コンサルタントとは?

-プロとしての仕事を提供し、対価をもらう→価値のある成果と会社利益の確保

-事業の具体化、実施、提言

-理系(技術)中心だが、ソフト面の開発ニーズ高まりで文系の採用も増加

経験者採用が中心

クライアントはJICAが多く、現地政府やADB案件がそれに続く邦人企業が多い

具体的なプロジェクト例

1)無償資金協力

有償案件に比べて金額規模が小さい

日本基準・固有技術も多く利用される

日本のタイド(日本企業しか応札できない案件)がほとんど

2)有償資金協力(円借款)

無償資金協力に比べて額が大きい

現地政府が借用した資金が原資となり、現地政府の方針や商習慣が強く反映される(アンタイド=国際入札になるケースが多い)

近年は、日本への裨益効果も考慮して案件形成を行っている

3)技術協力事業

人材育成や技術移転が目的(教育、医療などソフトが多い)

カウンターパートとの関係構築が重要

コンサルタント従事期間が比較的長い

インフラプロジェクトで文系が入りやすいポジション

1)経済財務分析

プロジェクトの経済的・財務的側面からの分析・評価

2)環境社会配慮

EIA(環境影響評価)、RAP(住民移転の影響評価)、SEA(戦略的環境評価)など

若手が入りやすいポジション

・業務調整/●●

業務調整=クライアントやカウンターパート、関係各所のリエゾン

調査団・現地・本社・クライアントをつなぐプロフェッショナル

計画書作成、ミーティングの調整など

専門家育成の側面もあるポジション- 専門家になるには専門分野が必要

・プロポーザル

公示された案件に対する提案書 最も重要な仕事の一つ

若手も携わる場合が比較的多い

・コンサルタントに求められるスキル

専門性(技術・地域)

経験

体力(とても重要)

開発コンサルの魅力・大変なところ

-魅力

1)案件に直接関与

2)専門が生かせる

3)様々な国・人と関わる

4)出張ベースが多く日本の生活を維持できる

5)個人ベース→独立・転職が比較的容易で年齢を重ねても続けられる

-大変なところ

1)受注できなければ仕事がない

2)常に評価され続ける

3)出張が多く家庭との両立が難しい面も