第5回勉強会議事録

「国際投資政策に向けたOECDのアプローチ~途上国・新興国の投資環境改善~」

日時:2014年2月15日(土) 14 : 00 - 16 : 30

場所:Institute of Education 675教室

講師名:藤田輔氏(上武大学ビジネス情報学部専任講師)

講師経歴:大学卒業後、みずほ銀行で法人融資担当として勤務。立教大学大学院修士課程で経済学修士取得。立教大学大学院博士課程在籍中、立教大学平和・コミュニティ研究機構でリサーチアシスタントとして勤務。その後、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)でリサーチアシスタントとして、「少子高齢化のもとでの経済成長」のプロジェクトに携わる。立教派遣留学制度にて、University of Essex, Department of Economicsに留学後、経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部(パリ)専門調査員として勤務。OECD日本政府代表部では、国際投資政策、企業の社会的責任(CSR)、新興国との関係強化に関する国際会議等を担当。

(議事録担当:並木)

---------------------------------------------------------------------------

<議事概要>

自己紹介

在学中は大学教授になることを夢見ながらも卒業後にみずほ銀行へ就職し中小企業向け融資などを担当した。その後立教大学大学院に入学して国際経済学・アジア経済論を研究し政府や国際機関に関心を持つ。博士課程に進学後、人口問題と経済成長の問題に関心を抱き、Essex大学に留学して、その際にはIDDPスタッフも経験した。その後専門調査員としてOECD日本政府代表部で勤務する。現在は上武大学の専任講師として研究者・教育者を兼任。

本編:「国際投資政策に向けたOECDのアプローチ」

Ø FDI(Foreign Direct Investment)について

外国の企業に対して永続的な権益を取得することを目的に行われる投資。

例としては外国の投資先の企業に対する株式の取得、貸付、債券保有、不動産の取得、海外子会社の再投資収益等などが挙げられる。メリットは、企業の経営資源を生かし、同企業内での取引を実現させ、物流・労働コスト削減や利潤最大化を追求できること。

FDIは開発途上国において、工業化と経済成長を大いにもたらす一方で様々な課題も残る。

また、開発途上国はもとより日本経済にとってもFDIは非常に重要といえる。

Ø 経済協力開発機構 (OECD)について

1961年に設立された本部をパリに持つ経済協力のための国際機関。開発途上国の経済発展に寄与することなどが目的にある。日本は1964年に加盟し、今年OECD加盟50周年になる。

Ø 国際投資と開発について

2002年にはモンテレー合意が採択されるなど近年では国際投資に注目が集まり、日本はOECDの投資分野でプレゼンスを高めている。投資の政策枠組み(PFI)は非規範的なツールであり投資環境改善に必要な政策分野について政府が検討できるようにチェックリストを提供する。またOECDによるアウトリーチ・イニシアチブにおいて共通の対話ツールになりうる。PFIは近年、エネルギーインフラとリンクさせる動きがある。

Ø UNCTADの投資政策アプローチ

持続可能な開発に関する投資の政策枠組みの提案をする。OECDのアプローチとの共通点は長期的な視点で持続可能な開発に資する投資政策を遂行することを世界的な潮流とするべきとの観点、相違点は、UNCTADの場合レビューの対象国がアフリカに集中していることなどが挙げられる。これらを踏まえて役割を決めて互いの強みを発揮できるような関係を築くとともにOECDは,対アフリカ戦略をUNCTADから学ぶべきである。

Ø OECDの東南アジアへのアウトリーチ戦略

PFIによる投資政策レビューの実施が行なわれるがそれ自体は手段に過ぎないため、然るべき制度の下で企業にとって投資しやすい環境を構築することが重要である。東南アジアは、日本の主張を受けて当地域を戦略的利益のある地域と指定された。中国とインドは独特の大国意識があるためOECDにとってはアプローチしにくい国。OECDは,同じような所得水準の途上国・新興国(中東,中南米等)も「宣言」に加盟済みであること,援助機関ではない中立的アドバイスが可能であること等を強くアピールすべき。

Ø 今後期待されること

-OECDが途上国・新興国の投資環境改善を達成させ「貿易はWTO,投資はOECD」という時代がやってくる可能性がある。

-日本は,東南アジア諸国を中心として途上国・新興国の投資環境改善を目指し、日本のビジネス界の発展に貢献するべきである。

-上記の実現により、途上国の経済的繁栄の実現、OECDでの日本の存在感拡大などが見込まれる。

番外編:「OECDの特徴と邦人職員増強に向けた提言」

OECDは幅広いテーマの事務局で構成されるため、様々なフィールドの人に門戸が開かれている組織。日本の影響力を高めるためにも、今後は日本人職員の増強が期待される。

Ø OECDへの就職方法

① Aグレード(Professional Staff)での募集 (多くはA2〜A5で募集される)

② YPPでの募集 (かなりの高倍率を覚悟のこと)

③ JPO派遣制度 (日本人にとっては最もチャンスが大きく任期満了後に正規採用が期待される)

Ø OECD就職のためのアドバイス

-「立派な日本人であれば世界中どこでも通用する」ことを信じて専門性を磨く。

-文書作成の作業が多いので英語でのドラフト能力が求められる。

-第三外国語(仏・西)も不可欠。

-OECDの場合事務局と加盟各国との協議が仕事のカギを握るため根回しや調整能力が大切。

-OECDは極めて広い専門分野で募集をかけるため様々な分野での経験が生かされる。

<質疑応答>

[質問1] 将来国際機関勤務を希望しているが、現実的に考えて最も職員になる可能性が高い方法は何か?

[回答1] インターンを通した採用の可能性がある。無給だが高い貢献度が認められれば本採用に繋がることがある。また、日本人は国際機関において比較的採用枠が広いため挑戦する価値があるのではと考える。

[質問2] 東南アジア地域へアプローチしていく上で日本人として大切なことは何か?

[回答2] 東南アジアでのOECDのプレゼンスは低いが、現地の人々と根気よく接することで、理解を深められた経験を個人的に持っている。これまではパリで行なわれることが多かったOECDの会合を今後は東南アジア現地で開催することを増やしていくことで組織の認知度が上がることが期待される。