外務省/IDDP国際機関就職ガイダンス議事録

外務省/IDDP国際機関就職ガイダンス

日時:2012年2月16-18日

場所:

2月16日(木) 17:30- サセックス大学

2月17日(金) 17:30- イーストアングリア大学

2月18日(土) 14:00- ロンドンビジネススクール

講師:小島美涼氏(外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部)

北迫絵美氏(欧州復興開発銀行インフラビジネスグループ運輸部門アナリスト)

①国際機関就職ガイダンス(在ジュネーブ国連機関日本政府代表部)―全日程同内容

(1) 主な国際機関

● 国連事務局、UNDP,UNICEF,UNHCR等は、日本人職員が多く働いている機関

● 人事管理(採用、異動昇進)は各機関毎独自におこなわれている。

● 国連共通システム(UN common system)を採用している機関は、職員の給与、年金等の処遇に差はなし。

● 国連共通システム以外の機関:世界銀行グループ、OECD、WTOなどは国連システムの機関とは給与など処遇が異なる

(2) 国際公務員とは

● 国連や専門機関に勤務する職員のこと。ニューヨークやジュネーブ等の本部だけでなく、フィールド事務所、途上国の現場で働く職員も大勢いる。

● 専門職(国際的に公募される職員。管理的な業務や途上国の現場で専門的な業務を行う。)

● 一般職(現地採用の職員。一般的、補助的な業務を担当)

● UNVやコンサルタントは職員としては扱われないが、これらをきっかけに正規採用の国連職員になる者も多い。

(3) 国連事務局における望ましい職員数

● 日本:現在の職員数65人、望ましい数202〜(238)〜273人。分担率は12.5%で第2位なのに職員数は6位

● 望ましい職員数と現職員数の乖離が激しいのでこの差を埋める必要がある。

(4) 国連機関の人事(採用・異動・昇進)の原則

● ポストごとに人事を行う⇔日本企業の場合新卒一括採用で組織の中で育てていく。

● 即戦力を求めている:ポストに見合う経験・学歴を重視。応募資格に満たす人を採用。能力開発は自己責任。⇔日本の場合ポテンシャル採用、その後育成するスタイル。

● 空席公告に応募して選考されないと異動も昇進もない。自らキャリアを作るというイメージ。

(5) 主な採用方法および特徴

1. JPO派遣制度

● 日本以外にも同様の制度をおこなっている国は多数ある

● 派遣先機関:日本と派遣取り決めを結んでいる機関のうちいずれかに派遣(UNDP UNICEF UNHCRなどが比較的多い)

● 2012年度JPO派遣候補者選考試験は3月1日から募集開始

● 今年から新しく英語筆記試験が追加されることとなった

● 合格発表(9月)から各機関へ派遣(翌年3月末まで)の期間が短くなった(去年までは1年以上)

● いくつかの国際機関については具体的にどのポストを募集するか発表する予定(2月末までに外務省国際機関人事センターのHPにアップ)。

● 邦人職員中JPO経験者は40%前後であり、JPOは国際機関職員になるための有効な手段である。

● JPO終了後に正規採用されるためには、日常業務をこなしていているだけではだめで、ぜひこのJPOを雇いたいと思わせるような存在感を示すことが大事。

2. YPP(Young Professionals Programme)

● 国連事務局が実施する若手職員採用・育成プログラム

● 従来の国連競争試験が変更され昨年から新制度として実施。

● 昨年は人道、広報、統計、管理運営の4分野で募集があったが、自分の専門分野が毎年募集されるとは限らないので注意が必要。

● 試験対象国:望ましい職員数が達成されていない無代表又は過小代表国(日本など)。2011年には77カ国が試験対象国であった。

● 同一国籍、同一専門分野で筆記試験受験者が40人を超えないように書類選考の段階で調整される。なお、筆記試験は4時間半の長丁場で、かなりの量の英文を読み書くことが求められる。

● 筆記試験合格者に対してコンピテンシーベースの面接試験がNYかジュネーブで行われる。

● 合格後、P2またはP1のポストが国連事務局からオファーされる。

● 他にもUNDP、UNICEFなどが類似の若手職員採用制度を実施。

● いずれも毎年1回の募集で若干名が合格。JPOを実施していない国の人達が大挙して応募してくるため競争は激しい。

3. 個別空席公告への応募

● 空席広告に記載されたDuty and responsibility/ Competency/ Qualificationを満たすことが必要

● 国連事務局における採用の流れ

● 60日募集 ひとつのポストに200人から1000人が応募。

→書類チェック(要件を満たしているかがまずチェックされる)

→上司(プログラムマネジャー)による書類選考があり、10人程度まで絞られ、筆記試験(筆記試験がおこなわれない場合も)

→コンペテンシーベース面接時に3-5人に絞られる。

→上記の過程を経て、採用候補者ひとりが決定される。

● 中央審査会で選考が公正に行われたかチェックされる。

(6) 人事選考の基準

● 国際機関における「優秀な候補者」とは、募集したポストに適した応募者のこと(即戦力を求めているため)。

● P2レベル(若手)であっても、どれだけ募集ポストに適しているかを判断される。

● 希望するポストでどんな能力が必要とされているかの情報収集、インターンなどを通して人的ネットワークを築いておくのが望ましい。単に国際機関内部に知り合いがいるというだけではだめで、自分の能力を具体的に評価してくれる内部職員を作ることが重要。

(7) 学生時代に準備するべき事項

● 自己分析。他人からみたイメージも参考になる。

● 目標達成への計画:目標のために何が必要か。アクションプランを書き出してみる。

● ライフスタイルも考慮してキャリア形成を考える

● 語学能力の向上

経験年数などその他の能力が一緒であれば、複数の言語能力を持つものが優先される

● 最近はアラビア語の需要が高まっている。

● 一貫性のあるキャリア形成

● 目指すべき国際機関の選択

● どの専門分野で経験を積んでいくか?

● 国際的な経験であることが重要。

● 専門家としての経験:あるプロジェクトをリードしたという経験は強みになる。

● コンピテンシーの理解と向上

● コンピテンシー=基本的な職務遂行能力

● 例:上司と意見が食い違ったときにどうするか、自分の経験をふまえて説明する

● 応募ポストに求められるコンピテンシーの研究が必要

● 日本人はチームワークは評価される。しかしコミュニケーション力が弱くプレゼン下手といわれる。自分を売り込むことをよしとしないメンタリティーがあるためでは。国際機関では多様なメンタリティーを持った人が働いているため、コミュニケーション能力は非常に重視されている。

● そもそもコミュニケーションとは?→ただ単に語学が出来るだけではない。自分の考えを説明する際の明確性、簡潔性、説得力。相手を納得させる能力。意識しながら磨くこと。

(8) 応募機関、ポストに関する情報収集

● どんな能力が求められているかを理解すべし。他の空席公告との比較も効果的。

● インターン等を通じて知り合った人(人的ネットワーク)を使って情報収集。

● すべてを満たすのは難しいが、応募ポストに求められる能力と最低80%のマッチングが必要。

(9) 応募書類作成の際の注意事項

● 応募書類は空席公告という問題に対する回答である

● 応募書類作成の際は空席公告に出ているキーワードを用いる

● 過去の経歴の職務内容は具体的に記述(部署名だけでは伝わらない):「私たちは」でなく、自分はなにをやったのかをアピールするべし。

● 関連外の仕事は書くか書かないかの戦略を練ること。アピールしない細部はカットする。

● 読みやすさ

● 1つのポストに200人〜1000人応募者があるので、ななめ読みをしても経歴を分かってもらえるような読みやすい書類を作成すること

● カバーレター(志望理由書)は簡潔かつ魅力的に。

● 他人にチェックしてもらうのも効果的

(10) まとめ (本日のポイント)

1. 国際機関の人事は日本の企業とは異なり、即戦力が求められている。

2. 一貫性のある学歴、職務経験が重視される。

3. 早い段階からの準備が必要。

主な質疑応答

(JPO派遣制度について)

【質問1】

JPO選考試験の応募資格に2年間の職務経験があるが、インターンやボランティアは職務経験に含むか?

回答1:

含まない。ただし、国連ボランティアや青年海外協力隊なら職歴に含めることとしている。

【質問2】

JPO選考試験でTOEFLの目安はどのくらい必要か?

回答2:

JPO試験合格者のTOEFLのスコアは公表をしていない。ただし、一定の点数で足切りすることはない。専門的な経験を重視するので、TOEFLのスコアが多少悪くてもそれを補い得る専門性があると判断されれば合格することもある。

【質問3】JPO応募の際のTOEFL証明書の提出に関し、英米大学院卒業者も提出が必要か。

回答3: 過去1年以内に受けたTOEFLのスコアの提出が必要。

【質問4】

JPO選考試験に合格するのに現場経験は必須か。

回答4:

専門分野により異なる。開発、人道分野ではフィールドの経験が重視されるので、JPO前に途上国での勤務経験等があるかどうか考慮される傾向。一方、例えば、気象関係(WMO)、知的財産(WIPO)、労働法(ILO)などの分野では、国際機関自体が本部中心の組織であり現場経験よりも、どれだけその分野の専門家であるかという点が重視される。

【質問5】

今年のJPO選考試験の応募用紙では希望する機関をひとつだけあげるようにとあったが、選考の過程で、外務省から別の機関への派遣を打診されることもあるのか。

回答5:

応募段階で希望する先としてあげることができる機関及びポストは1つに限られない。JPOは国の予算で派遣されるものなので、その後の正規採用につなげることが最大の目標。したがって、JPO試験合格者本人の学歴や職歴に鑑みてJPO任期終了後に正規採用される可能性がより高く見込まれる機関や地域があれば、本人の希望と異なっていても派遣を決定することはある。

【質問6】

JPO選考試験に関し、今年の採用から一部の国際機関については特に募集するJPOポストを発表するとのことであったが、その発表はいつ頃か?

回答6:

2012年2月末までに外務省国際機関人事センターのHP上に掲載予定。掲載がない機関についてはこれまでどおりの募集と考えてもらえばよい

【質問7】

JPOの各機関への派遣について、ポストのマッチングはどうやっておこなわれているか。

回答7:

外務省が各機関におけるJPO空席ポストとJPO試験合格者の希望や専門分野、適性等を照合した上で、派遣先ポストを決定している。

【質問8】 JPOの派遣期間は2年間ということだが、その間に正規採用のポストを見つけられなかった場合はどうするのか。

回答8: JPOの派遣期間は原則2年。ただし、予算上の制約があり全ての希望が通るわけではないが、タイミングによってポストが空かなかったり、あるいは国際機関側からの評価が非常に高かったりなど、いくつか条件がそろえば3年目の延長の可能性もある。日本人JPOのJPO後の正規採用率は、5~7割。国際機関にJPO後すぐに就職できなかった人は、日本に帰って仕事を探す人もいれば、外国の企業やNGO、他の国際関係の機関で働くなどの進路を見つけている。

【質問9】 JPO終了後、国際機関に残れなかった場合のペナルティはあるのか?

回答9: ペナルティはない。

(EBRDについて)

【質問10】

IPFの募集要項には、職歴2、3年の人が対象との記載がある。それ以上の職歴は、応募対象外になるのか?

回答10: 北迫氏は応募以前に6年の職歴がある。あまりにも長い職歴を持つ人は空席応募したほうが適当かもしれないが、あくまでも目安であると考える

【質問11】

EBRDにはバンカーが50%の割合を占めるとのことであったが、他にどのような職種、経歴を持った人が集まっているのか。

回答11:

環境部門:学歴が高い人が多い(修士号、博士号)、法律部門:弁護士資格保有者、経済部門:エコノミスト、開発のバックグラウンドを持った人、JICA、開発コンサルタント、民間企業経験者、コミュニケーション部門:元メディア関係者(BBC等)、ステークホルダーアナリシス部門:国際関係学、国際機関経験者、人事部:人事のバックグラウンド、ロシア語による業務遂行可能者、理事室:各国政府からの派遣

(キャリア形成について)

【質問12】

民間企業での経験はどのくらいアピールできるのか?

回答12:

民間企業でどんな仕事をしてきたかが重要。たとえば日本の運送会社で働いていて、現在、国際機関でロジスティクスを担当している人や、日本の銀行に勤務後国際機関のファイナンス部門で活躍している人もいる。

【質問13】

国連に就職を希望する際、キャリアを積むために民間企業にいくなら、経理やコンサタントなど分析的なスキルを見つけるとよいといわれたことがあるがどうか。

回答13:

日本の一般的な企業では、ジェネラリストを養成して将来の管理職を育てようとするのが一般的。それに対して、国際機関は専門職を求めている。財務など、専門的なスキルを必要とするところで経験を積むと国際機関のポストとマッチしやすいということはいえる。

(その他)

【質問14】

国連事務局の日本人職員数は、望ましい数に満たないということだが、その理由は何か。そもそも応募の母数が少ないからなのか、日本人の能力が低く、特に語学力の面などで競争に勝てないのか。それとも一つの会社で長く働き成長することを重視する日本の企業文化、採用制度との間にギャップがあるのか。

回答14:

理由はいくつかあると考える。まず語学力の問題は大きい。日本人の多くは英語で手一杯だが、ヨーロッパの国際機関では3、4ヶ国語を扱う人がたくさん働いている。ほかの能力が同じなら語学ができる人の方が採用される。また、日本国内の人事制度が国連機関とは全く異なるということも理由の一つ。一度、国際機関に行くと決めると、その後日本に戻って再就職できるか不安で飛び出せないという声はよく聞くところ。日本国内の企業や官庁と海外の国際機関との行き来がしづらく、フレキシブルな制度になっていないことは大きな理由ではないか。

【質問15】

空席公募から、オファーまで最長1年~2年かかるとのことであった。Dutyがいつから始まるか書いていない場合、1年~2年前を目安に応募すると良いのか。学生時代から応募したほうが良いのか。

回答15:

公募からオファーまで2年というのはかなり特殊ケースであるものの、国際機関の採用選考には時間がかかる。希望ポストが空席になるかどうかはタイミングの問題なので、業務開始時期の記載がない場合でも、興味があるポストであれば、早い段階での応募を勧める。しかし、通常応募時点での修士号保有が必須であるので、学生時代(修士号取得見込みの段階)で応募した場合、書類選考で落とされてしまう可能性もある。

【質問16】

国際機関での業務に関して、日本人であるから、ある業務につくというようなことはあるのか。

回答16:

業務内容と日本国籍はほとんど関係ない。日本の顧客に関しても、日本人職員が担当になるという決まりはない。例外として、日本政府ドナー担当者。