外務省/IDDP国際就職ガイダンス

■ 外務省/IDDP国際就職ガイダンス概要

「外務省/IDDP国際就職ガイダンス」


講師:小島 美涼氏

(外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部 二等書記官)

日時:2010年2月20日(土) 14:30-16:30 London (SOAS)

2010年2月21日(日) 14:00-16:00 Brighton (University of Sussex)

配布資料:

プレゼンテーション資料

「国際就職ガイダンス」

勉強会内容:

Ⅰ 総論

Ⅱ 国連機関別、レベル別の

主な外部候補者採用制度

Ⅲ 採用方法及び特徴

Ⅳ 採用に向けての取り組み

Ⅴ 処遇

Ⅵ 参考となるHP

Ⅶ 質疑応答


Ⅰ 総論

1)国連事務局内部部局・地域経済委員会等

国連競争試験によりエントリーレベルの採用が行われる。

※PKOミッションへは、これと独立した人事管理が行われている。

2)基金・計画、専門機関及び国連システム外の機関

機関毎に独立した人事管理が行われている。

基金・計画及び専門機関には「国連共通制度」が適用されるため、給与等の処遇条件に差は生じない。

3)職員の種類

大分類:①専門職 ②一般職 職種別区分:政務官、広報官など

雇用形態区分:正規職員、技術協力要員、臨時職員、国連ボランティア

(UNV)、コンサルタント

4)職員数

国連事務局における「衡平な地理的配分」に服するポスト 専門職2809人うち、日本人職員数は111人(女性66人)。望ましい職員数は265~359人とされている。

5)国連機関の人事(採用・異動・昇進)の原則

①空席発生→②公募→③書類選考→④面接→⑤採用

①ポスト毎、空席が発生した時に募集が行われる。新卒一括採用はなし。

②内部公募のみの場合がある。

③内部候補を優先させる。

④筆記試験実施の場合もあり。コンピテンシーに基づく面接。

特徴:即戦力を求めている。(ポテンシャル採用はない)

OJTは行われないのが実態。

空席広告への応募と選考通過なしには昇進も異動もない。

Ⅱ 国連機関別、レベル別の主な外部候補者の採用制度

原則としてレベルを問わず空席広告による採用が行われている。

Ⅲ 採用方法及び特徴

1)JPO(Junior Professional Officer)

外務省が人件費を負担し、若手邦人を国際機関へ派遣する制度。

派遣先機関は、派遣取り決めをしている41機関の中から、派遣者の学歴・職歴をもとに決定される。JPO派遣者の経歴は様々だが、国連インターンやUNVの経験者も多い。正規職員ではないため、任期中に積極的に空席広告に応募することが望ましい。最低限の社会人としての基礎は派遣前に身につける必要がある。

2)YPP(Young Professional Programme)

UNDP、OECD等が実施する幹部候補生育成システム。

JPOを実施していない国の若者が応募するため、競争率が高い。

3)採用ミッション

中堅以上の職員を対象としているものが多い。中途採用の可能性を具体化している。

実施は不定期。また将来の採用を約束するものではない。

4)PKOミッション等への採用(ロスター制度)

国連フィールド事務局が管理するロスター掲載者から採用される。

現在およそ数百人が掲載されている。

5)国連競争試験(National Competitive Recruitment Examination)

※2010年試験については、本年夏まで延期するとされている。

受験資格を得られるのは、国連加盟国のうち現在の職員数が「望ましい職員数の範囲」に満たない国、あるいは近々無代表・過小代表国になる可能性のある国の国民のみ。2009年対象国は56カ国(含日本)。

Ⅳ 採用に向けての取り組み

1)人事選考の基準 優秀な候補者が選考される。

→優秀とは? 当該ポストに適した候補者のこと。能力の高い事を意味するのではない。

※いかにそのポストに適しているかをアピールする必要がある。

インターンやボランティアなどを通じて、自分の能力を評価してくれる採用決定者との人脈を作ることは大変有利である。応募前に情報収集を徹底すること。

2)学生時代に準備するべきこと

自分に適した国連機関の選択。

希望機関・希望職種はこれまでの自身の職務経験および学歴(専攻分野)を踏まえて検討する。

語学能力の向上

3)コンピテンシー(職務遂行能力)の理解および向上

“United Nations Competency for the future”:コンピテンシー説明資料を参照する。

コミュニケーション能力の向上をはかる。(日本人が最も苦手とされている能力)

4)応募先機関、ポストに関する情報収集

空席広告だけでは応募するポストに関する十分な情報は得られないため、その組織の目的等も理解する。 各国連機関のHPをよく理解する。

人的ネットワークを構築する。

→「知り合い」ではなく「自分の能力を評価してくれる人」と繋がることが重要。

※インターンやボランティアなどで人的ネットワークを構築することが出来るが、金銭的な負担もかかるので無理のない範囲内で努力をすること。

Ⅴ 処遇

給与は、国連総会でほぼ毎年改定される俸給表に沿って支給される。基本給とは別に勤務地に応じて地域調整給が支給される。その他補助金は、教育補助金、異動・困難手当、住宅費補助、年金、健康保険。

Ⅵ 参考となるHP

国連HP: http://www.un.org/en/

各国連機関のHP一覧: http://www.unsystem.org/

国連競争試験: http://www.un.org/Depts/OHRM/examin/exam.htm

国連事務局空席広告: https://jobs.un.org/Galaxy/Release3/vacancy/vacancy.aspx

基金・計画、専門機関空席広告: http://www.mofa-irc.go.jp/

国連本部インターンプログラム: http://www.un.org/Depts/OHRM/sds/internsh/index.htm

人道支援関係の空席情報: http://www.reliefweb.int/rw/res.nsf/doc212?OpenForm

国連ジャーナル: http://www.un.org/Docs/journal/En/lateste.pdf

国連公式文書システム: http://documents.un.org/

UN Competencies: http://www.unescap.org/asd/HRMS/odlu/files/Compentencies.pdf

UNDP JPO Service Centre: http://www.jposc.org/career_management/content/welcome/welcome-en.html

外務省国際機関人事センター: http://www.mofa-irc.go.jp/

国際機関人事センターニューヨーク支部: http://www.un.int/japan/jp/hr/index.htm

Ⅶ 質疑応答

Q. なぜ、JPOの合格者の女性の数が男性に比べて圧倒的に多いのか。

A. 応募者の女性の割合が多い。試験の結果として女性の合格者が多いが、女性を特に優遇しているといったことはない。


Q. UNVの給料や手当てについて教えてほしい。

A. UNVに関する日本語のHPもあるので参照してほしい。住居費を含めて月額10~15万円、着任手当てや渡航費用が支給される。医療費の100%が支払われる保険にも加入できる。


Q. 国連職員について産休等は取れるのか?

A. 正規職員については産休・育休の制度が整っているため、国連は女性にとっては働きやすい環境だと思う。


Q. JPO派遣選考試験における職務経験の要件について、修士号学位取得前の職務経験も考慮されるのか。

A. 職務経験は学位取得の前後に関係なくカウントできる。


Q. JPO派遣候補者選考試験の英語のスコアの基準について教えてほしい。

A. 語学だけで足切りをすることはない。他の経歴などを参考にして書類選考をしている。


Q. 危険地域への応募の際に、男性の方が優遇されることがあるのか。

A. 採用に性別の違いでの優遇はない。しかし、現状では男性職員が多いことからジェンダーバランスを考慮して、同じ能力の男女の候補者がいたら女性を優先的に採用するとしている国際機関もあり、女性が採用されやすいと言えるかもしれない。


Q. JPO派遣候補者選考試験における職務経験とは修士号の内容に関係のあるものという意味か。

A. 職務経験が修士以上の課程で勉強した専門分野と関連していることは必須条件ではないが、これまでのキャリア形成、自分が行ってきたことに一貫性があるかないかには着目する。


Q. JPOの派遣まで1年程度期間があるが、その間に派遣が中止になることがあるのか。

A. 基本的にはない。なお、派遣先については、外務省は本人の希望を聞くが、外務省側の提案した派遣先を本人の都合で断ることはできないことになっている。


Q. JPOが派遣されるタイミングについて教えてほしい。

A. 合格しポストが決まるまでに時間がかかるが、ポストが決まってから派遣者本人の現職との関係等も考慮して3ヶ月前後で派遣されることが多い。


Q. インターンは無給で、UNVは有給であるが、職務内容の差はあるのか。

A. UNVは2年以上の職務経験が求められるので、専門家としての位置づけである。インターンは、基本的に大学院生のみを受け入れ、勉強の機会を与えるという位置づけ。


Q. インターンに求められる能力は何か。

A. 機関の募集要項により異なる。ただインターンになるのもなかなか難しいので、応募の際には電話をかけてフォローアップするなどの積極性が必要だと聞く。


Q. 国連職員の雇用形態について、2~5年毎に次のポストを探すというイメージがあるが、自動的に契約更新される場合もあるのか。

A. 機関によって、また、契約形態によっても異なる。正規職員であれば更新により継続勤務が可能なILOなどの機関もある。


Q. 学生時代にインターンやボランティアをすることは国連関係の仕事を得る際に有利になるのか。

A. 国連機関の業務に関連のあるNGOであれば採用に有利に働く場合は多い。

フィールドの経験があることが重視される機関やポストも多いので、国連の業務に関連のあるNGOなどでボランティア経験を積むとよいのではないか。


Q. 平和構築人材育成事業研修員とJPOを受験することを考えているが、JPOに絞って受験を考えたほうがよいか、それとも平和構築人材育成事業研修員の経験がJPO選考の評価にもつながると考えられるか。

A. 平和構築人材育成プログラムの経験はひとつのフィールド経験としてJPOの選考にも考慮される。


Q. UNVが競争試験を受ける場合は、内部者とみなされた状態で選考が進むのか。

A. UNVは外部者という位置づけになる。ただし、UNVとしての国際機関での経験が採用において評価されることも多いと思う。


Q. 国連の年金制度について何年以上働くと年金をもらう資格ができるのか。

A. 制度は複雑だが、基本的に勤務期間5年を超えれば、年金の受給資格を得ることができる。


Q. JPOに合格してから派遣されるまでにかなり時間があるが、その間は仕事をしていてもよいのか。

A. 派遣先決定までに時間がかかるため、現職がある人は仕事を出発前まで続けるよう薦めている。出発の時期については調整することが可能である。短期のUNVや外務省の仕事をしながら派遣されるまでの間を待っている人もいる。


Q. 資料2ページに載っている国連システム外の機関(世銀、IMF、WTO等)について、 処遇は国連機関と同じと考えてよいのか。

A. 国連システム内の機関であれば、P2といったグレイドの区分や給料等の処遇は同じだが、国連システム外の機関における処遇は異なっている。


Q. 機関や専門分野をまたいでの異動はありえるのか。

A. 機関をまたぐことはあっても、キャリアの一貫性が重視されることから専門分野をまたぐことほとんどない。

■ 講師経歴:

2003年東北大学法学部卒業後、人事院採用。人事院国家公務員倫理審査会事務局、同給与局、内閣府男女共同参画局に勤務し、国家公務員の人事制度等を担当。2009年より、外務省に出向し、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部にて国際機関における日本人職員増強・人事管理に従事。