第3回勉強会
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【第1部: プレゼンテーション】
ガイダンスの項目
・ 総論:人事管理の単位、職員の種類、人事の原則
・ 国連機関別、レベル別の外部候補者の採用制度
・ 採用方法及び特徴:国連競争試験、JPOや採用ミッションについて
・ 採用に向けての取り組み:人事選考の基準、語学能力の向上、コンピテンシーの理解や応募書類の作成方法
1. 国連システムの人事管理
・ 人事管理の単位
国連事務局:国連事務局内部局や地域経済委員会等、およびPKOミッション(ただし、PKOミッションの人事は独立)。
基金・計画・専門機関: 機関毎に独立した人事管理が行われているが、「国連共通制度」により、給与・年金等の処遇に差がでないようになっている。なお、年金は、国連機関で共通しており、異なる組織で働いても通算されるようになっている。
・国連機関に勤務する職員の種類
専門職・一般職、職種・雇用形態による区分。機関・職種・雇用形態によって採用手続きや公募方法に違いがある。
・国連機関の職員数
国連システム全体の職員数(2007年末時点):専門職25,562人、一般職49,720人(うち、日本人専門職員676人)。日本は望ましい職員数を大幅に下回っている。
2. 国連機関の人事(採用・異動・昇進)の原則
国連機関の人事サイクルは、「空席発生→公募→書類選考→面接→採用決定」である。
人事の特徴は以下の3つ。
1. ポスト毎に人事を行う。
2. 即戦力採用。コンピテンシーに基づく採用。
3. 空席広告に応募して合格しないと異動も昇進もない。
・ 日本人の弱いところ:応募書類の作成や面接時の自己能力アピールで謙虚になってしまうこと。
・ 電話面接:事前に電話面接の想定問答を作成する、コンピテンシーを理解する等のテクニックを身に着けておくことが肝要となる。
>>コンピテンシーとは (UNDPによるプレゼンテーション資料)
・ 日本の組織と違い、定期的な異動・昇進は無く、昇進できなければ将来的に昇給もストップする。
・ 以上の人事のルールを知った上で就職活動や採用後のキャリアを考えていかなければならない。国連機関では、日々の仕事をこなすことと同時に、次のポストに向けた準備を自ら行わなければならない。
3. 国連機関別、レベル別の主な外部候補者の採用制度
・ 国連機関の職員の採用は、レベルを問わず空席公募による採用が原則である。しかし、職員の雇用安定のため、内部公募を優先するのが実情。
内部に適任者がいない場合に、初めて外部からの応募者が選考の対象となる。
・ 外部の者のエントリーポイントとしては、「国連競争試験」、「JPO」、「YPP」、「採用ミッション」、「PKOミッション」等への登録(ロスター制度)や、個別空席への公募がある。
【国連競争試験】
・ 日本国籍を有し、かつ32歳以下の人に受験資格がある。
・ この試験は、「望ましい職員数に達しない国」等に限定的に実施される試験。よって、日本などの限られた国の人間のみが受けられる試験である。ただし、競争率は高い。例えば、過去5年の日本人応募者は1,400人、そのうち筆記試験の受験者は650人、合格者は16人である。
・日本の公務員試験と違い、募集される職種が毎年違うことが一因。日本人の多くが専攻している開発学や経済学といった分野が毎年募集されるとは限らないことに注意したい。
【JPO】
・ 35歳以下で日本国籍を有する人に向けた、日本政府からの国連機関派遣制度。多くの先進国も同様の制度を有している。
・ 近年、応募者が少なくなってきているため、倍率は低くなっている。
・ 2008年度の試験合格者は約40名。米国の次に英国での修士・博士取得者が多い。英国留学経験者の中では、サセックス・SOAS・LSE出身者が多い。
・ JPOから正規職員になるためには、日常の業務を問題なくこなすだけでは不十分。自らの市場価値を高めつつ、積極的に空席公募に応募する必要。
・ 各機関からは、日本人JPOは即戦力として働きぶりを高く評価されている。
・ 過去約1,200人を派遣し現在も国連職員として働いているのは300名程度
(政府職員をJPOとして派遣していた時期もあるため、それらの者を除いた実質的な残留率はもっと高い。現在では、JPO任期満了直後の残留率は6割程度。)
【YPP】
・ 各機関が人件費を負担して幹部候補生を育成するプログラム。機関によっては35歳以上の者に門戸を開いているケースもある。
・ 世界中から応募が殺到するため、高倍率である。
・ 英語に加えてフランス語(もしくは他の国連公用語)が求められるため日本人には壁が高い。
【採用ミッション】
・ 一部の日本人採用に積極的な機関が実施する。国連機関への適性をみることが目的であり、これだけで採用となるわけではない。しかし、この採用ミッションで「適性あり」と判断された場合には、当該機関の内部職員向けの空席広告へのアクセスが可能となったり、実際に応募した後の選考過程において内部職員の応募と同様の扱いとなるなどの便宜が図られる。
・ ミドル~シニアレベルの人材も募集対象となるため、JPO等への応募資格が無い者にもチャンスがある。
・ 2009年には国連事務局の採用ミッションが2月末~3月に来日・面接予定。応募締め切り2月6日。
【第2部: 質疑応答】
Q-1. JPOの採用の際に男女比率に関して方針はあるのか。
A-1. JPOの選考にあたっては、選考段階で男女比についての調整は入らず、実力本位で合格を出す。
実際の数字を挙げると、応募数は1994年までは男女ほぼ同数であったが、95年以降、応募者・合格者ともに女性が増えている。
最終合格者65名中女性52名(2001年)というケースからも見られるよう、男女比は年によって異なる。2007年は、応募者315名(うち女性227名)、最終合格者43名(うち女性29名)。
ただし、(JPOを経て)各機関へ応募する際は、女性であることは有利。(国連ではどの機関でもジェンダー・バランスの達成を目指しており、女性が継続して働きしやすい職場である。)
Q-2. JPO応募時に、目指す機関を明確に特定した方がよいのか、あるいは選考プロセスの中で軌道修正することができるのか。
A-2. 応募書類には、学歴・職歴に加え、海外在住経験の有無・希望職種・希望機関名・希望地域を書く欄があるので、そこに希望機関(複数でも可)を書く。
希望職種、機関等にに相応しい職務経験があり、書類が論理的に一貫性を持って書かれているかが重要。また、希望機関については、合格後に最終的な意向調査を行っている。
Q-3. JPOの合格者は、具体的にはどういうキャリアを持つ人が多いのか。
A-3.人それぞれなので、確実な道はない。外務省の専門調査員やJICAやNGO出身者も多い。開発分野では、ODA案件を扱っている開発コンサルタントでの経験者も多い。実際に派遣される先は途上国が多いため、途上国での社会人経験は有利。
国連フォーラムのウェブサイトや配布したパンフレットに、経験者のキャリアパスが記載されているので参考にしてもらいたい。
Q-4. 傾向として、募集が多い専門分野や応募が多い機関はあるのか。
A-4. JPOの派遣状況は、UNDPが約20名と多く、UNICEFやWFPへの派遣者がこれに次ぐ。正規職員のポストについても、開発や人道が国連の大きな柱になっているので、応募・募集共に多い。ただ、その中で職種は細かく分かれているので具体的にどの職種の募集が多いのかは一概には言えない。
特定分野の深い専門家になってしまうと、他への応用が全く利かなくなってしまうというリスクもある。プロジェクトのマネジメント等は応用が利く。ポストを増やす決議など、国連の内部政治にも左右される。
Q-5. 学部から一旦就職を考えているが、将来国連での就職に向けたステップアップとして、望ましい職業・職種はあるか。
A-5. これを経験したら国連に就職できるというものはない。具体的な経験としては、NGOやJICA、開発コンサルタントが近いが、それ以外の職業からの道が閉ざされるわけではない。例えば、国連も一つの組織(役所)なので、どの職場にもある人事・経理等のポストはある。
国際的なことにつながる仕事の方がいいのかもしれないが、あまりこだわらずにまずは社会人としての経験を積むといい。自分のやりたいことと一貫性のある職業であるとよい。
Q-6. 国籍別職員数に関する資料を、国連が作成しているが、この資料に関して国連自身はどこまで受け止め、人事に反映しようとしているのか。
A-6. 採用に当たっては、「世界最高の人材」「幅広い地域からの人材」という基準があり、望ましい職員数に達していない国からの採用の必要性はわかるが、人材が見つからないといういい訳をよく耳にする。
外務省は各機関に対し日本人職員増強について申し入れしてきているので、特にマネジメント層が問題意識を持っている機関は多いが、個別の採用選考に関してはDecentraliseされている部分が多く、選考に直接関わっている各ポストの上部のマネージャーにまで問題意識が浸透していないのが実情。
これはうがった見方だが、日本人が少なければ各国に配分が回ってくるため、日本人職員が望ましい職員数を大幅に下回っている状況は、他国にとっては望ましい状況とも言える。
Q-7. 国際協力を目指している人は多いと思うが、JPOへの応募が減っているのは、何か理由があるのか。
A-7.明らかな原因はわからないが、JPOの応募にあたっては、英語での受験の場合TOEFLか国連英検特A級の資格が必要になる。TOEFLがiBT(Internet-Based Testing)に変更したため点数の伸び悩みから断念している人が多いのではないかと考えられている。
実際に合格している人の点数は公表していないが、語学面での足きりは行っていない。英語力の向上は必須だが、書類応募する前にあきらめる必要はない。
Q-8. JPOの応募資格について35歳以下となっているが、35歳以上を対象にした同様の制度はあるのか。
A-8.現在は35歳以上を対象としたJPOのような派遣制度はない。以下の可能性が考えられる。
・ YPPのLEADプログラムは、P3での応募になるが応募資格が開かれている。
・ UNICEFには、NETI(New and Emerging Talent Initiative)というプログラムがある。
・ 採用ミッションで合格すると、内部公募広告へのアクセス権を持つことができる
(採用ミッションは、ミッド・キャリアの人材も対象としている)。
Q-9. 国連機関へ応募する際に、地域を限定したいことを伝えることは、採用において不利となるのか。
A-9. JPOでは、原則として途上国のフィールドに派遣することになっている。アジア等の特定の地域を希望することは問題ないが、あまりに勤務希望地域を限定することはお勧めできない(その地域に人材ニーズが無ければ、将来的な正規職員としての採用はおろか、JPOとしての派遣自体が実現しない)。
勤務希望地については、面接審査で必ず聞かれる点なので、自分なりに整理した上で、面接官にアピールするのがいいのではないかと思う。
Q-10. 国連事務局等の雇用形態は、「permanent」(恒久契約)なのか。
A-10. 国連事務局については、競争試験に合格し採用されれば仮採用期間を経て「permanent」を獲得することができる。
・ その他の機関については、状況はさまざま。たとえば、UNDPはポスト毎の採用を重視しているため、JPOでUNDPに派遣された方は、その後UNDPから他の組織に移られているケースが多い。これに対し、UNICEF、WFP、UNHCRでは、JPOを主要人材供給源としており、多くの元JPOが継続して勤務している。
・ 専門機関の中には、何年か任期制の雇用形態で働くことによって、勤務成績が良好であれば、「permanent」(各機関によって名称は異なる)に移行できる場合もある。
・ 機関によって人事制度は異なるが、国際人事委員会がモデルとして示した3類型(continuing, fixed-term, temporary)に簡素化しようとする取組が行われている。「continuing」(継続契約)は、これまでの「permanent」に近い。
Q-11. P3に昇格した以降は、その後のポストを狙うことは容易なのか。
A-11. そもそもP2やP3のポストで組織の中で生き残っていくのが難しい理由は、それらのポストが組織の中で相対的に少ないということが挙げられる(ピラミッド型の人員構成にはなっていない)。
一方で、P4のポストはそれらに比べてポスト数が多いので、P2からP3に比べてP3からP4へのステップアップはポストの数という面では有利ではある。だからといって、その組織に所属しない者が、いきなりP4のポストを空席公募で狙うことは相当難しい。
これを実現させるためには、例えば採用ミッションで合格したうえで、P4に挑戦することが考えられる。
Q-12. PKOミッションで日本人が少ない理由は何なのか。
A-12. 雇用形態が理由であると考えられる。つまり、原則6か月という短期であり、その延長は確約できないという雇用形態に原因がある。また、他の国連機関におけるベネフィットがPKOミッションには期待できないということも理由として考えられる。
・以上のような不安定な雇用形態等の理由により、PKOミッションの平均的な空席率は2割程度と高いものがある。国連事務局では本年7月より新たな契約形態を導入することとしており、今後はPKOミッションの人事をめぐる環境も変わっていくものと思われる。
Q-13. 国際事務局の競争試験について、職務経験は必要なのか。また語学能力を証明する資料は必要か。
A-13. 競争試験の資格は、32歳以下で、かつ希望する分野の学士以上の資格をもつものである。したがって、職務経験がなくとも応募すること自体は可能だが、修士号や関連分野での職務経験があった方が望ましい。書類選考の倍率が高いので、職務経験がない場合には、試験に進むのは極めて困難。
・競争試験において、語学能力を証明する資料を添付する必要はない。これは、空席公募についても同様である。JPOについては、TOEFLのスコアか国連英検特A級の証明を添付する必要がある。いずれにせよ、応募書類を作成する際は、最低限、英語については全ての項目を最高評価とすること。そうしないと、書類選考すらパスできない。
Q-14. UNEPに派遣されたJPOはいるのか。
A-14. いる。2007年にナイロビ本部に1人。UNEP管轄の機関であるバーゼル条約事務局に派遣された方もいる。
Q-15. JPOの面接にあたって重視されるポイントは何か。
A-15.
・ これまでの職務経験を踏まえ、自分がどの分野で国連に貢献できるかについて、説得力ある説明をすることが重要。
・ JPOの応募書類作成および面接の際には、職種・地域について国連機関で十分なニーズがあるのかについて、事前に情報収集して臨んでもらいたい。また、応募書類に記入した希望職種・地域について、面接官を納得させる説明ができるように準備すること。
・ 参考になる資料として、UNDPのJPO向けキャリア支援ウェブサイトを見ていただきたい。
(コンピテンシーについての説明資料: 「United Nations Competency for the Future」)
【リンク集】
国際機関でのキャリア形成支援制度
JPO(AE)派遣制度 JPO派遣制度は、(国連事務局以外の)国際機関へのキャリアパスとして最も一般的。以下のサイトで昨年度の募集要項が閲覧できる。2009年度の募集要項等については、2009年春先に発表予定。
・ http://www.mofa-irc.go.jp/boshu/boshu_aejpo.htm
国連競争試験(NCRE) 試験合格者は、国連事務局のP2ポストへの採用資格が得られる(職務経験によっては、P3レベルの資格も付与)。国連事務局のP2~P3レベルの正規ポストへの採用ルートはほぼNCREに限られるが、各職種の試験が毎年実施されるとは限らないため、資格を満たす方は積極的にチャレンジしてもらいたい。
・ http://www.mofa-irc.go.jp/boshu/boshu_kyoso.htm
・ http://www.un.org/Depts/OHRM/examin/ncrepage.htm
平和構築分野の人材育成事業 外務省の委託により、現在、広島大学の広島平和構築人材育成センター(HPC)がパイロット事業の運営を行っている。研修の中には、約5ヶ月間の海外実務研修(国際機関やNGOのフィールド事務所での勤務)も含まれる。
・ http://www.peacebuilderscenter.jp/index_j.html
※ 本事業については、2009年度より実務研修期間を最大1年間に延長するなどの拡充が図られる予定。詳細は、以下を参照。
・ http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/peace_b/h21_ji.html
今後のキャリアパスを考えるに当たって
外務省国際機関人事センター 外務省の公式情報が満載
国連フォーラム(注) 国連現職職員の生の声が紹介されている。インターン体験記などもあり、情報量が豊富。
Club JPO (注) JPO経験者の体験談、NCREの過去問題集などが紹介されている。
・ http://homepage3.nifty.com/clubjpo/
(注)外務省や国際機関は、これらのサイトの運営には関与していないが、現場の生の声を知る場としては最適。
応募書類の書き方について UNDP JPOサービスセンター(UNDPや他機関のJPO派遣事務を統括) 現役JPO向けに開設しているキャリアマネジメントのサイト。この中に、応募書類の書き方についての情報もある。
・ http://www.jposc.org/career_management/content/welcome/welcome-en.html