第2回勉強会

第2回勉強会 「サブサハラ・アフリカにおける経済開発

-アフリカの大国ナイジェリアの民間投資を中心に-」

講師: 中本 健一 氏

(日本貿易振興機構(JETRO)ロンドン・センター リサーチ・ディレクター)

日時・場所: 2008年11月28日(金) 午後6時~8時/JETROロンドン・センター会議室

配布資料: プレゼンテーション資料 [閲覧] 、参考資料(経済指標等) [閲覧]

議事録: 勉強会議事録 [閲覧]

■ プレゼンテーション資料

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プレゼンテーション要旨

ナイジェリアはアフリカ最大の産油国であり、特に近年、高水準のGDPを維持している。原油依存の経済構造である点は従来から変わらないが、原油価格の高騰、非石油部門の成長、外国直接投資(FDI)の流入増加等により、経済成長が加速している。

1999年以降のオバサンジョ政権下で、民営化の促進(特に通信分野)、石油部門の透明化、2006年のパリクラブ債務免除・完済、インフラ整備を約束した国・企業に対する鉱区の優先交渉権の付与などが行われた。

石油の鉱区入札については、外資企業(欧米、アジア)が積極的に参入しており、アジア国営石油企業は、大統領はじめ政府高官がナイジェリアを訪問し、鉱区の優先交渉権を取得している。

非石油部門では、携帯電話市場が成長している他、自動車、家電等の消費市場も拡大傾向にある。

日系企業については、商社、メーカー、建設等の業種が進出し、事業を拡大しているが、治安、インフラ、汚職等が問題となっている。

2007年にヤラドゥア新大統領が選出されたが、石油依存、製品輸入依存、二重経済(貧富の格差)という体質は変わっていない。

■ 勉強会議事録 [閲覧]

【第1部: プレゼンテーション】

ジェトロについて (p.2)

日本貿易振興機構(JETRO)は、国内に36、海外に73の事務所を持つ。サブサハラ・アフリカには4ヶ所に事務所があり、ナイジェリアはその1つ(その他、南ア、ケニア、コートジボワール)。エジプトにも事務所があり、アフリカ大陸の東西南北に事務所を構えている。

ジェトロの活動 (p.3)

· 外国企業誘致(対日投資の促進)

· 中小企業等の輸出支援

· 日本企業の海外展開支援(海外で事務所や工場を立ち上げるための支援)

· ハイテク産業交流支援(ネットワーキングや技術の提携)

· 海外経済情報の調査・分析(その国で売れている商品の調査など)

· 貿易投資相談

(具体的に輸出をする際にどうしたら良いか、投資する際に気をつけるべき点などをアドバイス)

· 開発途上国支援(途上国の商品を日本で販売するための支援)

· 開発途上国研究(主にアジア経済研究所の活動)

ジェトロ・ラゴス (p.4)

ナイジェリアのJETRO事務所は、日本企業が集まるナイジェリアの商都ラゴスに立地。

同事務所が近隣国(ガーナ、リベリア、シエラレオネ、サントメ・プリンシペ)を管轄。JETROは貿易支援を行っているので、管轄国の中では、ガーナ以外ではまだビジネスを展開するのは難しく、ナイジェリア、ガーナが活動の中心。

ラゴス風景 (p.5)

空港からラゴスに向かう車中からは、高層ビルが並んでいるのが見える。

バスは市民の足となっているが、事故が多い。運転手と愚連隊との暴力騒ぎや、バスジャックが起こることもある。他に小型バイクのタクシー(後部座席に客を乗せる、一回50~100ナイラ(約50~100円程度)もあり、市民の主要な交通手段となっている。

ナイジェリア全図 (p.6)

もとはラゴスが首都だったが、北にイスラム教徒、南にキリスト教徒が多くアブジャは国の中心であること、またラゴスが人口過多になったことなどより、1991年、中央に位置するアブジャに首都を移転。

南部のナイジャー(Niger)川のデルタ地域一帯が原油の生産地域で、ポートハーコート(Port Harcourt)やワリ(Warri)が拠点都市。

アフリカにおけるナイジェリア (p.7)

人口約1億4千万人、GDP1670億ドルで、人口・GDPともにサブサハラ・アフリカの約2割を占める。サブサハラ・アフリカで名目GDPが1,000億ドルを越えているのは南アを除き、ナイジェリアのみ(資料「アフリカ各国の主要指標」参照)。

原油生産量は日量約200万バレルで、ナイジェリアはアフリカ最大の産油国。

ナイジェリア経済指標 (出所:IMF) (p.8)

07年GDPは、イスラエル、シンガポールなどと同水準。

実質GDP成長率は、06年6.2%、07年5.9%、08年(予測)6.2%で高成長率を維持。例えば、アンゴラはGDP成長率21%であるが、ポスト紛争国であり、もとのGDPが低い。ナイジェリアは比較的大きな経済規模で、高成長を続けている。

貿易は、原油の輸出減少により、07年の輸出が前年比8.9%減少し、輸入が41.3%増加したことから、貿易黒字縮小となっている(資料「貿易投資白書」参照)。

外貨準備高(金を除くベース)は、原油収益により、年々増加。イギリス(490億ドル、07年)、フランス(457億ドル、07年)の規模を上回る。

対外債務残高の減少の理由は、原油収入により積み上がった外貨準備を背景に、06年4月の約300億ドルのパリクラブ債務完済(うち約6割の約180億ドルは債務免除)などによるもの。パリクラブ債務の卒業は、借金を返済できる経済力がついた証であり、ナイジェリアにとって重要。これにより、信用度が向上し、国が融資保証を始める動きも出てきている。

為替レートは近年安定しており、年々、ナイジェリア通貨が少しずつ強くなる傾向。

ナイジェリア経済の近年の変化 (p.9)

【原油依存経済】 ナイジェリア経済は、原油に大きく依存。原油はGDPの約3割、輸出の9割、政府歳入の約8割を占めており、この構造は原油生産が始まってから基本的に変わっていない。

【1999年の民政移管】 60年の独立後、7回の軍事クーデタや内戦などにより、政情は不安定だったが、90年代後半から民政移管プロセスが始まり、1999年、軍事政権から民政へ移管。オバサンジョ大統領が2期大統領を務め、07年ヤラドゥア大統領が選挙により選出された。

【一人当たりGDPの上昇(=従来との違い)】 近年、1人当たりGDPが上昇しており、90年代は300ドル前後で停滞していたが、2000年以降、急増し、06年に1000ドルを越えており(資料「ナイジェリア経済指標」参照)、GDP成長率が人口の伸びを上回っている。

【原油価格の高騰、非石油部門の成長】 ナイジェリアの代表油種の07年価格は99年比で4倍増(資料「ナイジェリア産原油価格と生産量」参照)。原油生産量は約200~250万バレル程度で変わらないが、石油価格が上

昇している。ただし、実質ベースでは、非石油部門の方が成長に寄与。

【外国直接投資(FDI)の流入増】 07年FDI流入額は125億ドルで、92-97年平均の約9倍(資料「ナイジェリアに流入する外国直接投資額の推移」参照)。FDIが対総固定資本に占める比率は05年36.7%から07年69.6%に増加しているほか、南ア、ケニアと比べ高い水準。

オバサンジョ政権時に起きた変化の例 (p.10)

【民営化の推進】 通信分野では、01年に携帯通信サービスが民間に解放され、加入者が爆発的に増大。また、電話公社、電力公社が民営化された。ただし、これら元公社のサービスは変わらず、電話がつながらない・切れる、壊れた電線がなかなか修復されないなどの問題がある。電力についても、停電が頻繁に起こり、電力支払いにプリペイド式を導入したが混乱が生じた。

【石油部門の透明化】 石油による政府歳入は8割を占めるが、その収入・支出の流れは不明瞭で、汚職の温床にもなっていたが、「採取産業透明性イニシアティブ(Extractive Industries Transparency Initiative: EITI)」により、会計の公開化(石油会計をウェブサイト等に掲載)が進んだ。これについては、オバサンジョ大統領が世銀から引き抜いたオコンジョ=イウェアラ財務相による功績が大きく、原油収入が蓄積される構造を作ったと言える。

【銀行再編】 89行の銀行を、最低資本金を引き上げにより25行に再編。

【パリクラブ債務返済】 前述のとおり。

【油田鉱区入札とインフラ整備プロジェクトのバーター】 鉄道・発電・製鉄・製油などの投資を行うこととバーターで、国・企業に鉱区の優先交渉権(まずは石油探鉱権)を付与した。

【汚職対策】 経済金融犯罪委員会という独立機関を設置。検挙・逮捕は州知事や警察長官にも及んでいる。しかし、依然として汚職の終わりはみえていない。

【空港の整備】 外国に対するイメージ向上のため、施設の近代化、賄賂要求の減少に取り組んだ。

ナイジェリア携帯電話市場 (p.11)

【携帯通信サービスのライセンス入札】 第2世代GSM方式の公募入札で、南アMTN社がライセンスを取得し、08年9月末時点の加入回線数は2017万(ナイジェリア最大、シェア36%)(資料「ナイジェリア通信委員会が公表する電話加入者数」参照)。

【携帯普及の背景】 固定電話へのアクセスが限られており、携帯電話の方が広く普及している。携帯電話は、固定電話に比べ、設備投資が少なく、プリペイド方式(100ナイラ程度からチャージ可能)で固定費もかからず、敷居が低い。

【熾烈なシェア争いと外資による参入の試み】 英ボーダフォンが参入を試みたが、失敗。一方、セルテル(クウェートMTCグループの子会社)は国内携帯通信会社Vmobileを買収してシェアを伸ばしてきており(資料「ナイジェリア携帯電話会社別加入回線数」参照)、MTNとの格差が小さくなってきている。新聞報道によると、ボーダフォンは08年7月に国営ガーナテレコム買収で合意したものの、ナイジェリア市場に依然として関心を示している。

【世界有数の成長市場】 07年02年比で91.5%増加。

鉱区入札とインフラプロジェクト (p.12)

ナイジェリア石油資源庁(DPR)は、07年の入札でもインフラ投資をコミット(約束)した外資(国)・国内企業に対して優先交渉権を付与。インフラ投資としては、液化天然ガス(LNG)、独立発電所(IPP)(国内の発電能力が貧弱なため、独立の発電所を造って電力を確保しようというもの)など。欧米中堅企業(Repsol YPF、Centrica)の他、アジア勢(中国、韓国、マレーシア、インドの企業)も交渉権を取得。

ナイジェリアには精製施設はあるが(日本も80年代に支援)、メンテナンスが行われておらず、製油所の稼働率が低い。原油産出国でありながら、製油後のガソリンを逆輸入している。

アジア国営石油企業の動き (p.13)

アジア国営石油企業は、大統領等、政府高官が資源外交を展開し、鉱区の優先交渉権を取得している。例えば、06年、中国の胡錦濤主席がナイジェリアを訪問、05年、インド石油省高官がナイジェリア訪問し、それぞれ事業への投資をコミットし、企業が優先交渉権を取得している。

また、韓国KNOC(韓国企業3社の連合)は、05年の入札で2つの鉱区に約4億8500万ドルを提示。印ONGC社が提示したサインボーナス(最初に提示する金額)がKNOCのそれを上回っていたため、印ONGCは意義を唱えたが、ナイジェリアを訪問したノムヒョン大統領が、ガスパイプライン等の建設をコミットし、韓国KNOCが落札した。

消費市場としても魅力 (p.14)

【自動車市場】 トヨタ・ナイジェリアが最大のシェアを占め、年々販売台数を伸ばしている(05年新車販売数1万900台、07年2万台を突破)。韓国KIAは2位に躍り出て(08年1~3月期、同ウェブサイト情報)、トヨタを追い上げている。

【ショッピングモール】 05年、スーパー、家電量販店、書籍・DVD販売店、映画館などで構成されるショッピングモール「The Palms Shopping Mall」開店。

【家電】 世界各国産のテレビなどの映像・音響機器、冷蔵庫、洗濯機などの家電が販売されている。テレビについては、日本や中国製品も入ってきているが、LGやSamsungなどの韓国勢の活躍が目立つ。

【ビール】 ナイジェリアのギネス・ビール消費量は創業の地アイルランドを上回る世界第2位。

The Palms Shopping Mall (p.15)

現在、ショッピングモールに加えてオフィス・住居機能も備えた拡張計画(2億ドル規模)が進んでいる。核となるテナントは南ア系。05~06年の開店当初は外国人客が多かったが、その後ナイジェリア人が大半に。フィットネス機具など高級品も販売。

進出日系企業の活動 (p.16)

ナイジェリアには、商社、メーカー、建設など計14の日系企業が進出。活躍の事例としては、自動車、建設機械、鉄鋼製品などの輸出、原油・天然ガスなどの輸入、プラント等納入、製造(二輪車の製造・販売、食品の包装・販売)など。

最新の事例としては、ホンダが二輪車生産拡大を発表。パナソニックがナイジェリア3番目のサービスセンターを開設。住友科学が、タンザニアに続き、アフリカ第2の蚊帳工場の新設を計画。

日系企業が抱える問題点としては、治安、インフラ未整備、輸入規制(ナイジェリアでは物資調達は輸入に頼らざるを得ない)、不透明な制度(担当者によって運用が異なる)、賄賂要求への対応、中韓印製品との競争など。

オバサンジョ後のナイジェリアと課題 (p.17)

07年5月に就任したヤラドゥア新大統領は、学者肌でクリーンなイメージ。

他方、治安対策、汚職対策、電力事情(工場では自家発電、ディーゼル代がかさむ)は変わらず。石油精製能力も上がらず。オバサンジョ大統領時代(任期の終わり頃)にインフラプロジェクトを含む数々の発注契約が結ばれたが、これらは見直されている。

政治の不安定化(ナイジェリア閣僚20人解任など)、大統領健康問題(内臓の疾患を抱えるとみられる)なども懸念される。

製造業が育っておらず、一人当たり所得は増えているが、貧富の差が大きい。頭脳流出も課題。

ナイジェリアの課題をまとめると、①石油依存、②製品輸入依存、③二重経済(農村・都市格差だけでなく都市部でも極端な貧富の差)。

ナイジェリア滞在は、周りでバイク・タクシーの事故で亡くなる人などがいるなど、人生の中でいろいろ考えさせられる経験となった。

【第2部: 質疑応答】(演者により一部加筆)

Q-1. 02~04年、実質GDP成長率が2桁まで急上昇しているが、その要因は何か。また、06~07年のFDI急増の要因は何か。

A-1. GDPについては詳細なデータが手元になく、回答が難しい。IMFとナ中銀のデータを比べると成長率について大きな差があり(04年:IMF10.6%;ナ中銀6.6%)、実際に過去のIMFレポート(IMF Country Report No. 05/432)でも2002年の実質GDP成長率が1.4%(最新のWEOでは21.2%)となっているなどバラツキがある。

またこれら統計では1990年価格が実質値の算出基準となっているなど、統計への信頼性に疑問が残る。FDIについては、オバサンジョ大統領時代に、投資環境整備が進められ、環境が整ってきたことが理由ではないか。

Comment 投資環境整備に加え、石油・ガス価格の上昇の影響も大きい。ちょうどアジア国営企業もその頃に契約を結んでいる。これはナイジェリアのみならず、アフリカ全体の傾向。また、02年の実質GDP成長率の急増は、同年FDIも倍増しているので、この時期に何らかの規制緩和があったのではないかと推測。

Q-2. 英ボーダフォンの参入失敗の事例があったが、外国企業がナイジェリアに進出する際には、地場資本とのベンチャーが一般的か。

A-2. 現地のネットワークを知っているナイジェリア企業とのジョイント・ベンチャーが中心。現地のパートナーがいないと、事業を行うのが困難。日本企業も、ジョイント・ベンチャーで始めて、後から資本比率を引き上げるケースがみられる。携帯電話に関しては、すでにマーケットを持っている企業を買収した方が、市場のシェアを広げる上では早いという面もある。

Q-3. ナイジェリアでは製造業が育っていないとのことだが、GDP成長に大きく寄与する非石油部門には、どの産業が含まれるのか。

A-3. GDPでみると、農林水産業が3分の1、卸・小売業が3分の1、サービス産業が3分の1となっている。非石油部門では特に卸・小売業、サービス業が伸びている。

Q-4. 06年のパリクラブ債務免除は、ナイジェリアに債務返済能力が無かったという判断によるが、どのような経緯で債務免除が決定したのか。また、債務完済・免除は経済に対してどのようなインパクトがもたらしたか。

A-4. IMFにより、債務支払いがナイジェリア国内開発の足かせになっていると判断されたことによるが、ナイジェリア政府がまず約60億ドルの債務を支払うことを約束した姿勢も評価された。また、当時の債務帳消しに向けた世界の潮流を受けて、ちょうど良い時に達成されたと言える。イウェアラ世銀副総裁の起用は、債務免除のためでもあった。06年のパリクラブ債務完済により、ナイジェリアが支払い能力のある国であることを示すことができた。それまでは、国営企業の支払いが遅延し、借金取りが仕事だった企業もあるほど。返済能力があることが明らかになり、これまでとはビジネスをする上でリスクが減少したとみられるであろう。

Q-5. ナイジェリア政府は、非石油産業を振興し、石油依存を脱却するような政策をとっているのか。

A-5. 政府は、石油以外の天然資源の開発にも取り組んでいる。また、農産品等(ココア豆・製品、ごま等)の輸出増加を目指しており、JETROにも日本への輸出支援依頼が寄せられている。実際には、農産品等の輸出は商業ベースに乗せられるか否か(加工、包装等にも一定のレベル求められる)によるので、課題は多い。

Q-6. ナイジェリア政府は、昨今のグローバルな金融危機の影響をどう見ているか。

A-6. 現ナイジェリアJETRO事務所長の報告によると、ナイジェリアの国内金融市場は国際金融市場に組み込まれていないため、直接的な影響は受けていない。地場銀行へのヒアリングでも、グローバル市場に組み込まれていないので、直接的な影響はないだろうとの回答を得ている。ただし、金融危機により、原油価格の減少による影響(政府歳入減、新規投資見直し等)、FDI減少、インフラプロジェクトの遅延の可能性はある。

Q-7. JETROは、日系企業の投資環境の改善のために、ナイジェリア政府に対してどのように提言を行っているのか。

A-7. ナイジェリア政府と対話の機会に、インフラの未整備や制度の不透明さなどの問題点を伝達している。ただし、国の制度はなかなか変わらず、JETROとしてできることも限られている。最終的にはナイジェリア人自身が本気になってやらない限り変わらない。

Q-8. ナイジェリアの経済成長は、石油、サービス業などの支出関連が中心であり、背骨のない経済発展のように見えるが、雇用は増加しているのか。

A-8. 背骨のない経済発展というのはまさにそうで、石油が売れなくなったら、経済への影響は大きいだろう。製造業などが育たないと雇用の大きな増加は見込めない。FDIの雇用への効果としては、例えば、南アMTN社はナイジェリア人を積極的に登用し、昇進させており、雇用面でのインセンティブの向上に成功している。

Q-9. ナイジェリアの国家開発計画には、今後どの産業を中心に経済発展を進めていくかという戦略があるか。

A-9. 国家開発計画(NEEDS、あるいはIMFのもと作成したPSI)では保健・教育等対策、民営化、貿易自由化、財政(石油会計)の透明化、汚職対策などが盛り込まれている。NEEDS(National Economic Empowerment and Development Strategy)をみると、産業別(具体化されているもの)で重点化されているものでは農業、サービス部門(IT、観光、映画産業、金融サービス)、石油・ガス(下流部門の自由化、民営化など)、鉱物資源開発(石油・ガスに代わる産業として)がある。インフラ整備(電力、運輸、水)は競争力のある民間部門を育成する上で重要として大きな柱の一つとされている。

Q-10. 経済が加速度的に進む一方、貧富の格差が広がり、社会開発、治安対策が追いついていないように見えるが、政府はどのような対策を取っているのか。

A-10. 治安については、警察の賄賂要求の背景には、警察の給料の低さがある。自分の身は自分で守らざるを得ないという状況であり、そうした意味では投資環境が良いとは言えない。貧富の格差については、今の良い経済成長が雇用拡大、所得増加につながれば良いが、だいぶ時間がかかるのではないか。また、ナイジェリア人は貯蓄せずに、収入をすぐに使ってしまうという面もある。