2025年8月の結果報告
最優秀句
新しき音の加はる秋初め 悟 牛
優秀句
秘め事のひとつやふたつ白日傘 や ま と
百歳を愚直に生きて茄子の牛 令 月
本心は隠し通せず蚯蚓鳴く 宍野 宏治
長き夜やまたカーソルを見失ふ や ま と
特選句選評
宍野 宏治 選
子ら駆ける高く掲げる捕虫網 山 の 子
いつの世も子供達は何かに夢中になり、必死となって追及していく。一方、現代人は時として無気力になりがちである。こんな時にこそ、幼少時の前向きな好奇心を思い出し、力強く生き抜いていって欲しいものである。
や ま と 選
新しき音の加はる秋初め 悟 牛
秋は空気も水も澄んで周囲の気配が変わってくる。この変化を音に感じている。「新しき音の加はる」とはなかなか洒落た表現。まだ暑い日が続くが、ちょっとした秋の気配も感じ取る繊細な詩人の句だ。
ポ ニ ョ 選
宇宙葬の夢さざめかす星月夜 小 町
葬儀も墓も最近はさまざまな型になりつつある。宇宙葬とは宇宙へ散骨するらしい。まだ一般的ではないと思うが、清々しい気持がする。星月夜の美しい季語がさらに夢をときめかす。
え つ こ 選
流燈や此の世彼の世の狭間ゆく や ま と
今は色々規制があり見られなくなりましたが暗闇の中、灯しを見送る人の寂しいような安心したような気持ちがあの世この世と言う表現に有ると思います。
迷 亭 選
山姥のくれなゐの舌月の蟹 宙
アカテガニは満月の夜、渚に集まり、幼生を一斉に海へ放出する。血を求める山姥の紅い舌と、月光の下で繰り広げられる蟹の群の生の営み。山姥と月の蟹という幻想的な取り合わせが、妖しくも美しい。