◎霊長類の視床皮質経路システム:多感覚と感覚運動相互作用のための解剖学的サポート

The Thalamocortical Projection Systems in Primate: An Anatomical Support for Multisensory and Sensorimotor Interplay

Cèline Cappe, Anne Morel, Pascal Barone and Eric M. Rouiller

多感覚と体性感覚統合は通常、大脳皮質と上丘で生じると考えられているが、いくつかの研究ではこれらの統合プロセスで関与している存在として視床を提示している。私達は異なるモダリティの視床-皮質(TC)システムの領域が、視床での多感覚と感覚運動相互作用のために表象する解剖学的支持として、部分的に重複するかどうかを検証した。2頭のマカクザルに、異なる感覚モダリティ(感覚と運動)の領域への視床が投射する領域の重複の存在を確認するために、吻側と尾側の聴覚領域、後部頭頂皮質(Area5のPE/PEa)、背側と腹側の運動前野に6つの神経解剖的トレーサーが注射された。TC投射は、一つから生じる特異的なユニモーダル感覚の核とは区別することができるTC投射は、運動-視床からPE/PEa・聴覚皮質へ、そして、感覚-視床からはPMd/PMvへ向かう経路が観察された(本文中のFig. 5Eに概略図が記載)。外側中心核(central lateral nucleus)と背内側核(mediodorsal nucleus)はすべての注射された領域への投射が確認されたが、最大のモダリティ間に渡る重複は視床枕内側(medial pulvinar nucleus)で見つかった。今回の結果は、運動属性とともに異なる複数の感覚モダリティが統合している視床領域の存在を論証する。TC経路と皮質-視床経路の分岐/集束のパターンに基づいて、多感覚と感覚運動の相互作用の4つの区別されるメカニズムが提案される。

※ 解釈として、連合野間でのみ多感覚の統合(相互作用)が生じているわけではなく、視床での神経シグナルの集束と分岐が見られているということは、より速い反応やより精度の高い反応を示すために、早期からの複数の感覚間での相互作用と感覚と運動関連領域間の相互作用が生じている可能性を示唆していると思われます。

※ 個人的に興味深い点としては、2頭のサルでも神経連絡の重複の程度の相違があることで、おそらくサルの遺伝的要因、経験(来歴)、志向性などが異なり、多感覚統合の神経経路の個別性が生じているのではないかと推察します。その結果、振る舞い(行動学的)にも相違が現れてくるだろうと考えます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19150924

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(文責:濵田)