◎他動運動による形、長さ識別時における前頭頭頂の関与:脳卒中患者(皮質下損傷)と健常成人による比較

Frontoparietal involvement in passively guided shape and length discrimination: a comparison between subcortical stroke patients and healthy controls

Ann Van de Winckel, Nicole Wenderoth, Willy De Weerdt, Stefan Sunnaert, Ron Peeters, Wim Van Hecke, Vincent Thijs, Stephan P. Swinnen, Carlo Perfetti, Hilde Feys

Exp Brain Res (2012) 220: 179 – 189

運動‐感覚領域脳卒中患者の50~85%は触覚処理と固有感覚に障害が生じる.しかしながら、感覚フィードバックは運動能力改善に最も重要である.他動運動による感覚識別訓練による感覚フィードバックを用いているが,これまでこの処理過程中にどこの脳部位が活動に含まれるかについては研究されてこなかった.それゆえ,本研究では脳卒中患者と脳卒中患者と年齢を調整した健常成人を対象に他動運動による形・長さ識別時に関与する脳活動領域についてfMRIを用いて調査した.8名の皮質下脳卒中患者に対してロボットを用いて指の他動運動で異なる形と長さ識別をfMRIによって脳活動を計測した.コントロール条件として用いる対照的なデータとして音楽断片識別時のものを計測した.他動運動による感覚識別課題と音楽断片識別は健常成人に比べて脳卒中患者において前頭頭頂領域に類似した活動がみられた.さらに,脳卒中患者では健常人に比べて右角回,左舌状回そして右小脳小葉とV1に活動増加がみられた.反対に健常成人では脳卒中患者に比べて右中心前回に大きな活動がみられた.両グループにおいて,形識別課題では前頭頂間溝と運動前野に活動増加を,一方長さ識別課題では主に右側運動前野の活動と共に頭頂葉の中間領域により大きな活動がみられた.本研究は皮質下脳卒中患者における他動運動での形と長さ識別中の脳活動を解明するための第1歩となる.今後は感覚識別訓練を用いることによる脳の再組織化と脳の可塑性に対する効果へ調査することを奨励することとなる.

(文責:安田)