◎視覚学習の多感覚促通のための一致した刺激の利益

Benefits of Stimulus Congruency for Multisensory Facilitation of Visual Learning

Robyn S. Kim, Aaron R. Seitz, Ladan Shams (PLOS ONE, 2008)

背景:知覚学習の研究は単感覚に大きく焦点を当てられている。しかし、多感覚間の相互作用は、早期の処理段階であっても知覚上に偏在しており、潜在的に学習の役割を担うことができる。ここでは、私達は視覚学習上の一致した視聴覚の効果を検証する。

方法と結果:被験者21名は、5日間の視覚の弁別課題(visual motion coherence detection task)のトレーニングを実施し、学習条件は視覚と一致した視聴覚刺激提示群、不一致の視聴覚刺激群、視覚のみの刺激群の3群に分けられた。評価項目は、トレーニング前後の視覚のみの弁別課題を行い、聴覚刺激を付加した学習効果への影響を観察した。結果は、視覚弁別課題の試行を比較すると、視覚刺激と一致した視聴覚刺激群は、不一致の視聴覚刺激群・視覚のみの刺激群よりも有意によりよい学習を形成した。

考察:多感覚トレーニングの利益は、認知レベルというよりもむしろ知覚での視聴覚間の相互作用からの結果として生じさせるかもしれないことを、トレーニング中の視覚刺激と一致した視聴覚刺激の増強が示唆する。

補足

Ø 視覚弁別課題は、画面上の複数のドットの中で左右方向に一致して動くドットが、1回目に提示された動画と2回目に提示された動画でどちらが多かったか判断させる課題(運動視知覚)

Ø 視聴覚の一致した刺激というのは、視覚弁別課題に判断する課題に、聴覚の移動する方向を付加する(視覚刺激が右方向に一致して動く刺激であれば、左右に2つのスピーカーを設置して、聴覚刺激も左から右方向に音が流れるように刺激を与える)。

※ 多感覚刺激を使用することが、一つのモダリティの学習に対して効果を示したということは、臨床応用のための示唆となる可能性が推察される。視覚と体性感覚、聴覚と体性感覚、さらには空間情報と接触課題の中でも、相補的な学習が促進できる可能性が推察できる。

(文責:濵田)