肩関節インピンジメント症候群に対する認知神経リハビリテーション

Neurocognitive therapeutic exercise improves pain and function in patients with shoulder impingement syndrome: a single-blind randomized controlled clinical trial.

E Marzetti, et al (2014)

【背景】

肩関節のインピンジメント症候群(SIS)を持つ患者に対し、従来のリハビリテーション(物理療法やストレッチ、コッドマン体操など)が疼痛や機能を改善させることが知られている。先行研究において、認知神経リハビリテーションは前十字靱帯損傷の再建術後の訓練として高い効果が認められている。しかし、SIS患者への効果はまだ確立されていない。

【目的】

この研究の目的は、固有受容感覚と神経筋のコントロールを基盤とした認知神経リハビリテーションによる疼痛と機能への効果を、従来的な訓練と比較することである。

【デザイン】

非劣性のランダム化単純盲検臨床試験。

【方法】

対象:48名のSIS患者をランダムに。18歳以上の発症から3ヶ月以上経過している外来患者からリクルートした。

徒手的な検査と画像診断により診断を行い、Neer stageⅠの患者を対象とした。

方法:対象患者をランダムに2群に分けた介入実験。2群ともに週3回を5週間実施し(計15回)、治療時間は1時間とした。

従来の運動療法(TTE):腱板筋の筋力増強と肩甲帯周囲筋の安定性向上のための訓練を実施した(ストレッチング、コッドマン体操、伸縮バンドによる抵抗運動)。

認知運動療法(NCTE):円課題や肩甲帯へのスポンジ課題、五目板の課題などを治療者が選択し実施した。

評価項目

① Quick-DASHスコア:ADLや仕事・睡眠時の上肢の使用や疼痛の程度をアンケートにて聴取する評価。

② Constant-Murleyスコア:疼痛や活動における重度さ、肩関節の外転筋力、肩関節屈曲・外転のROMを評価。

③ Visual analogue scale(VAS):安静時と運動時の疼痛を評価。

④ ASES:日常生活上の上肢を使用する動作(10項目)の困難さを聴取する評価。

⑤ Likertスコア:治療の満足度を示す評価。治療に合意できるかできないかを5段階で聴取する評価(良:5)。

①~④を、介入前と介入後、介入後12週、介入後24週時点で評価を行い、⑤は介入後のみ評価した。

【結果】

1. TTE群の安静時のVASを除き、両群ともに全ての項目で介入後に有意な改善を示した。

2. 群間の比較では、NCTE群がTTE群と比べ、安静時のVASで有意な改善を認めた。

3. Likertスコアは、TTE群は3.9±1.5点、NCTE群は4.3±1.2点となり、治療満足度に有意な差を認めた。

【まとめ】

今回の調査から、SISに対するアプローチとしてNCTEが有効であることが明らかとなった。そして、少なくとも介入後24週間は効果が持続されることも明らかとなった。

SIS患者は、認知神経リハビリテーションを受けることによって、肩関節の疼痛やROM、運動スキル、機能により高い利益を受けることができる。

(文責:濱田)