研究会の趣旨


                       


 本研究会の目的は、日本を含めたアジア、とくに東アジアのキリスト教をめぐる諸問題について共同研究を行うことである。とくに、東アジアのキリスト教が共有する宗教的多元性の状況を留意しつつ、この地域における新しいキリスト教形成の可能性を探ってみたい。

 東アジアのキリスト教は、16世紀のローマ・カトリック教会による布教開始から数えれば450年、あるいは、19世紀後半にプロテスタント諸教派による伝道開始-たとえば、日本には、ウィリアムズ、ヘボン、ブラウン、フルベッキら最初期の宣教師が、1859年に到着-から、すでに150年におよぶ歴史を有している。その間、キリスト教の布教は様々な困難中で継続的に行われ、キリスト教は、教育、文化、医療、政治など様々な分野で影響を与えつつ、それぞれの地域において活動してきた。すでに思想史的にも、高い評価を受けるに値するキリスト教思想の形成を見ることができる。

 以上の理由から、本研究会で取り上げられる問題は多岐にわたることになるが、本研究会では、次のようなテーマを中心に共同研究を行いたい。

1.東アジアのキリスト教史(過去)

 この150年の間にキリスト教がどのような道をたどって現在に至ったのかについての知識は、この地域のキリスト教を論じる前提に属している。これには、通史的な概観から始まって、個々の思想家の研究や個別的な教派・教会や組織・運動体の歴史の分析が含まれる。また、キリスト教史の理解は、この地域の近代史の文脈の中で、政治史や文化史との密接な連関を視野に入れる必要がある。この点で、本研究会は、日本思想史や日本近代史とも隣接することになる。この会では、こうした現在の問題状況の把握と、基本的な資料収集を行いたい。そのためには、隣接した研究会や研究者との連携が必要になる。

2.東アジアの現在の宗教的状況(現在)

 現在の東アジアのキリスト教が置かれた宗教的状況は、宗教的多元性という点から特徴づけることができる。キリスト教は、長い歴史を有する伝統的な諸宗教が存在する中に、いわば遅れて登場したのであって、東アジアのキリスト教を論じるには、諸宗教によって形成された宗教的文化的な状況を背景にして議論を行うことが必要にある。本研究会では、とくにキリスト教と仏教との関わりを、日本と韓国の比較研究を通して解明することを目指している。こうした研究により、日本と韓国では、類似した伝統的文化状況に対して、それぞれのキリスト教が異なった仕方で応答しているという事実を浮かび上がらせることが期待できよう。この比較のための視点として、日本と韓国におけるキリスト教と仏教の相互交流(対立と対話)の歴史・現状、家族制度の変化への対応などが考えられる。分析の方法としては、文献資料を基礎にしつつも、一定程度のフィールドワークが必要にあるものと思われる。

3.東アジアにおける新しいキリスト教形成(未来)

 東アジアのキリスト教を研究する最大の意義の一つは、まさにここに新しいキリスト教の可能性が見いだされるということに他ならない。アジアの歴史と伝統を基盤に、キリスト教はいかなる新しい形態を生み出しつつあるのか、この点に注目しなければならない。そのためには、キリスト教あるいはキリスト教思想の内部において、新しい文化状況における現実化(文化内開花)を捉える理論構築、とくに宗教的多元性を前提としたキリスト教形成の理論的根拠が明確化されねばならず、それは、まさに現在のキリスト教思想の争点に他ならない。本研究会は、東アジアのキリスト教の過去と現在についての精密な研究に立って、こうした理論形成に寄与することを目指している。

 なお、本研究会の前身である「アジア・日本のキリスト教と宗教的多元性」研究会は、現代キリスト教思想研究会の三番目の研究部門として、2002年4月より開始されたものであるが、この10数年間におけるさまざま状況の変化に伴い、独立した組織運営が求められるようになってきていた。こうした中で、本研究会は、2015年10月の総会をもって、現代キリスト教思想研究会から独立し、会の名称についても「アジア・キリスト教・多元性」研究会へと改められた。また、それにしたがい研究会規約が改訂された(「アジア・キリスト教・多元性」研究会・規約を参照)。

 
 



<5月の研究会>

     

日時 :  2017年5月26日(金曜) 15時より

会場 :  日本キリスト教協議会 NCC宗教研究所

ジャーナル第15号掲載論文合評会