【すずむし:安曇節】2010.10.9

「千草八千草神戸の原で 銀の鈴ふる虫の声」

長野県北安曇郡松川村で、「安曇野松川すずむし保護条例」が9月8日に施行され、1か月になりました。

村条例によると、スズムシは「古来より村に生息する貴重な地域資源」で、「村の特別シンボル」だそうです。条例では、すずむしの里づくり推進のため、村長が認めた以外の捕獲が禁止されました。

そんなスズムシですが、安曇地方を詠った「安曇節」の中でも詠われています。

村教育委員会は2009年3月、村制施行120周年と、すずの音ホール竣工を記念して、「精選安曇節集」を発行しました。安曇節の産みの親でもある榛葉太生(しんは ふとお)(1883ー1962)が、当時、安曇地方を詠った民謡がなかったことから、歌詞を作ることに燃え、詩を公募したことなどが書かれています。

太生は、号を出原処士(しゅつげんしょし)と言い、村の医師をしながら自ら歌詞を作りました。同好者も集まり、代かき唄、田植え唄、代かき唄、盆踊り唄などを参考にして、曲も作りました。

広く地域から集まった5000首を超える歌詞の中から、太生が選んだ1500首が、この3版になった安曇節集に掲載されています。この中でスズムシを詠った歌詞は7首あり、さらにその中から私が選んだ3首を紹介します。


「千草八千草神戸の原で 銀の鈴ふる虫の声」

「籠で売られて行く鈴虫は 月の神戸原なき別れ」

「籠の鈴虫声たつ限り 野山恋しと鳴き通す」


現在松川村では「里づくり」の一環として、村経済課に事務局をおく有志からなる「村おこしこぶし会」が、スズムシを飼育し、販売しています。松川村役場経済課によると、スズムシは6匹で1つのケースに入れられ、直接窓口に来てくれた人には1200円で、発送の場合は2000円で、年間で500ケースが全国に向けて出荷されました。

神戸(ごうど)原でなき別れしたスズムシたちは、故郷の野山恋しと鳴き通していたのでしょうか。