【同じ大きさのシカの角 なぜ重さが違う?麻布大学南正人さんの話し】2011.1.25

「同じ大きさでも重さが違う」そう言って、2つのシカの角をハンガーに付けた紐に掛けて聴衆に示し、麻布大学獣医学部野生動物学研究室講師の南正人さんが話しをされました。

北安曇地方事務所と、大北地域連携推進会議が大町市女性未来館ピュアで22日に開いた、観光ガイドや案内等の担い手を養成するインタープリテーション基礎講座の中でのお話しで、2回の講座のうちの1回目です。

南さんは89年より宮城県の金華山島で、600頭のシカの一生を追跡しながら継続的に研究しており、実際に調査した題材を使って、15年間ガイドをやっている経験から、生き物、特にシカの話しを随所に盛り込み、話しをしました。南さんの使った小道具の1つが「シカの角」でした。

重さの違う2つのシカの角の話しに聴衆を引き付ける、南正人さん

金華山と言う小さな島の中に生息するシカは、生息数が増えることで、餌が限られてしまいます。アザミも地面すれすれで花をつけるほど、餌が少ない時があるそうです。

右は別の土地の交通事故の雄シカの角。左は金華山の雄シカの角。「大きさが同じなのに、一方は軽いのです。かなり重さが違います。なぜだか分りますか。どうなっているんでしょう」と、南さんは質問します。

会場からは「骨の中がすかすか」、「空胴」などと、声が挙ります。「すかすかや空胴だったら、闘いをした時に折れますよね」と言うと、会場はまた考えます。

次に、「マウンテンバイクがヒントです。折れないけれど軽くしている」と言うと、どこからともなく「楕円形」という声が聞こえてきます。

「そうなんです。金華山のシカの角は、若干楕円形をしています。楕円の長い方に力が加わっても、強くて簡単に折れません」そう、南さんは言います。

「小さな島で、シカがいっぱいいて、餌が少ない。それで軽いんです。雄シカは雌をめぐって闘わなければいけません。雄は凄い競争をしています。栄養状態が良いと増えやすいのですが、食べ物が無くなり増えすぎると、角が軽くなるんです」と、南さんは実際に調査したシカの角の長さと重さをグラフにした図を示して、説明しました。

「シカの角一本でも、いろんな事が分りますね。そう言うガイドをするといいですね」と言った感じで、シカを題材にして、ガイドの仕方を教えました。

30人ほどの参加者は、北アルプス山麓で、観光関係の仕事をしている皆さんです。自然や、歴史、文化などを分りやすく人に伝えるためのガイドについて熱心に学び、最後に南さんに近づいて、実際に南さんが話しの中で使った小道具の角などを見せてもらっていました。

29日は南さんが講師で「インタープリテーションを体感する」といった内容で、スノーシューを履いて冬の自然を探訪します。