職員室に置いてある、『ヘンな科学 "イグノーベル賞"研究40講』から、いくつか面白いテーマを紹介します。
「こんなテーマでも、研究になるんだ」ということを知るのは、研究テーマを考える際の刺激にはなるはずです。
ただ、これらの研究は、テーマこそ風変わりであるものの、研究手法やデータの取り方は一流の物ばかりです。テーマ設定も大切ですが、やはりそもそも「どのように研究するのか」という部分が大切なことも、忘れないようにしてください。
オックスフォード大学 チャールズ・スペンス教授ら
教授は、五感がどのように連携し合っているのか研究してきました。ポテチの研究の前は、車の運転手に効果的に危険を知らせる方法を研究していました。この研究では、危険を知らせる音が後ろから聞こえてきた時の方が、横から聞こえてきた時よりも、注意がすばやく前方に向くことを突き止めました。この成果は、実際のあるメーカーのトラックに活かされているそうです。
教授は、ある日、飲み屋でおつまみのポテチを見て「ポテチのパリパリ感も音に影響されるのでは?」とひらめき、研究を始めたようです。結果、同じポテチでも、かんだときに聞こえる音を大きくしたり高音域を大きくしたりすると、15%程度かみごたえが強く、新鮮に感じられることが分かりました。
聴覚以外の五感も味の感じ方に影響にしており、以下のようなことが研究で分かりました。
・ポテチと同様の効果は、リンゴ、ニンジン、セロリ、クラッカーなど、カリカリ、コリコリした食べ物なら同様の効果が得られる。
・いちご味のムースは、黒い容器よりも白い容器で出される方が10%甘く感じる。
・コーヒーは、ガラスのコップから飲むよりも白いマグカップで飲む方が2倍ほど濃く感じる。
・五感以外にも、2人で食事をする時は、1人の時よりも35%多く食べ物を食べる。
香りマーケティング協会 田島幸信 理事長 滋賀医科大講師 今井眞 ら
開発チームはもともと、香りを使った情報伝達技術を作ろうとしていました。というのも、広告など、情報伝達に使われるのは視覚や聴覚に訴えるものがほとんどで、「嗅覚に可能性はないだろうか」と着目していたそうです。どんな場合なら香りが役立つかを調査したところ、視覚や聴覚が不自由な人、特に聴覚障害を持っているため、寝ている時に火災に遭うことを心配している人が多いことが分かったそうです。
始めのうちは。どの香りを使えば良いかが分からず、香り選びに難航しました。朝を連想させるような香り(パン、コーヒー、味噌汁など)、ミントの香り、腐った卵のような不快な匂い、どれもダメでした。ところが、ある日たまたまワサビの抗菌剤を嗅いでみると、強い刺激を感じ、この材料が使えるのではないかと仮説を得て、実験を行ってみると被験者が起きたそうです。しかも、わさび成分は空気よりも重く、下に落ちていくため、寝ている人にはぴったりでした。
その後、研究開発を進め、最適なわさびの濃度、香りの届け方などを突き止め、開発にたどり着いたとのことです。