2025.7.22
affair は「行為、用事、仕事」を意味し、1300年以前に初出したとされている。『英語語源辞典』によると、中英語での語形は現代の標準的な綴字とは異なる afere で、アングロ・フレンチの afere から借用された。afere は古フランス語の afaire に相当し、‘to’ を意味する à(ラテン語の ad に由来する)と「…をする、行う」を意味する faire(ラテン語の facere から発達した)から成る à faire からできた語である(ado は英語で à faire に相当する意味の語を組み合わせた語である)。
afere から affair への変化は、フランス語の北部方言に近いアングロ・フレンチに由来する綴字からフランス語の中央方言である古フランス語に沿った綴字への変化と言えるだろう。また、affair で <f> が2つ重ねられているのは、 フランス語の à がラテン語の ad に由来し、接頭辞 ad- はしばしば後続する子音 f に同化して af- となることによる連想であると考えられる(「46. ad- ―語形変化を起こす接頭辞―」を参照。また、ad- が後続する子音に同化する同様の変化については「34. <c>か<cc>か、それが問題だ!」を参照されたい)。また、『英語語源辞典』によると、中英語の afere は初期の北部方言形で、現在の affair の語形およびこの語の普及は William Caxton に負うところが大きいという。OED の affair, n. の項で挙げられている Caxton からの用例は8例あるが、いずれも <affayre> や <affaire> の綴字が用いられており、OED の用例では Caxton 以前にこれらの綴字が用いられているものは挙げられていない。これを検証するにはコーパスなどのより詳細な調査が必要であるが、Caxton による affair の綴字への影響は現段階の調査では小さくなさそうである。
参考文献
「Affair, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Affair, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/affair_n?tab=meaning_and_use#9434189. Accessed 22 July 2025.
キーワード:[French] [Latin] [assimilation] [ad-] [etymological spelling] [Caxton]