慶應義塾大学大学院 文学研究科 英米文学専攻所属の寺澤志帆のホームページです。
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2025.10.20
ampersand は and を意味する記号 & の呼び名である。これは & per se and(「& それ自体(per se)で1語の and」の意)が短縮されたもので、『英語語源ハンドブック』によると、不定冠詞の a や人称代名詞 I、驚きを表す O! についても、a per se a, I per se I, o per se o と同様の呼び方をすることがあった(p. 14)。また、& の字体は大文字の E と小文字の t を組み合わせたもので、ラテン語の et 「そして」を表している。
『英語語源辞典』によると ampersand には ampussy (and), ampusand, amsiam などの様々な異形がある。OED によるとこれらの種々の異形はイングランド内の方言に由来するもので、例えば ampussy and は West Midlands、amsiam は南部の Oxfordshire や Berkshire で見られる。ちなみに ampersand の語形は18世紀から見られるようである。
また、& の記号は近代英語以降に主流になったもので、古英語・中英語では and を表す記号として ⁊ が使われていた。これは Tironian notes (ティロの速記)と呼ばれる共和制ローマ時代から中世にかけて広くヨーロッパで使われた速記記号の一つで、もともとは & と同じくラテン語の et を表し、Tironian という名称はその発明者でキケロの秘書であった Marcus Tullius Tiro に由来する(『英語語源ハンドブック』p. 14)。古英語では ⁊ は and を表すだけでなく、<and> の綴字を含む語について <and> の代わりに用いられることもあり、例えば answered にあたる andswarode が ⁊swarode のように綴られた(『英語語源ハンドブック』p. 14)。
参考文献
「Ampersand, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Ampersand, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/ampersand_n?tab=forms. Accessed 20 October 2025.
キーワード:[abbreviation] [shortening] [Latin]
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