慶應義塾大学大学院 文学研究科 英米文学専攻所属の寺澤志帆のホームページです。
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2026.2.21
astound は1600年から「†気絶させる」(18世紀前半に廃義)、17世紀前半から「びっくり仰天させる」を意味する語として用いられている。しかし、astound は中英語から複雑な過程をたどって成立した語とされる。
astound は前回取り上げた astonish の元となった語形でもある中英語の動詞 astone(n) に遡る(astone(n) は古フランス語の estoner からの借用語である。estoner は俗ラテン語の *extonāre から発達したもので、*extonāre はラテン語接頭辞 ex- と「雷が鳴る」を意味する tonāre から成る)。astone(n) の過去分詞 astoned は、OED の “†Astoned | Astunned, Adj.” の項によると中英語期には /aˈstunəd/ , /aˈstund/ と発音されていたが、他の -und で終わる語と同様に /u/ が長化して /aˈstuːnd/ となり、綴りも astound, astownd に変化した。同様の変化は bound, found, ground (古英語では bunden, funden, grund ) などに見られる。ただし、ここでの astound, astownd は過去分詞としての語形で、『英語語源辞典』によると astound, astownd からさらに -ed を付けた astonded に変形し、そこから逆成(back-formation)が起きて原形の astound ができたとされている。原形 astone(n) → 過去分詞 astoned → astound, astownd → asto(u)nded → 原形 astound と、現在の動詞 astound ができるまでには何段階もあり、過去分詞での語形変化を含む複雑な経路をたどって来たことがわかる。
また、『英語語源辞典』には、astound の成立にはアングロ・フレンチ語と古フランス語の eston(n)é, estuné, estouné (estoner, estuner の過去分詞) や、stun「愕然とさせる」(古フランス語の estoner から中英語期に借用され、語頭の e が脱落した stone(n), stune(n) の語形となった)の影響も考えられると記されている。しかし、OED の “†Astone | Astun, V.” の項によると stun との関係は未だにはっきりしないようである。また、近代ドイツ語の staunen, erstaunen と関係する可能性もあるようだが、不明とされている。
参考文献
「Astonish, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Astound, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Stun, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“†Astone | Astun, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/astone_v?tab=etymology. Accessed 21 February 2026.
“†Astoned | Astunned, Adj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/astoned_adj?tab=etymology. Accessed 21 February 2026.
キーワード:[<ou>] [back-formation] [French] [Latin]
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