Section4
Opinion
Opinion
いま、YMCAがなすべきこと
和解と倫理の回復を
日本キリスト教団
神奈川教区巡回教師
グローバルなパンデミックの中で、人類の文明が問われている。特に19世紀、20世紀以降から深刻になった資本主義の矛盾、格差、差別、対立、競争主義の中での弱肉強食、そういった矛盾が全世界に広がっている。コロナは、矛盾に対する警告ではないか。スペイン風邪のような一過性のものではなく、何を意味するかということを受け止めていかなくてはいけない。差別、対立、貧困、核兵器などの矛盾に目覚め、それぞれの国が新しく歩み始めなければならない。
日本は第二次世界大戦のつらい経験から、憲法、特に憲法9条が与えられた。日本のYMCAがなすべきは、和解と、そして資本主義に対する、矛盾に対する警告である。倫理の回復、物質と利益を求める競争社会の矛盾を食い止めていくためには、イエス・キリストの「汝の隣人を愛せよ」「いと小さきものひとりになしたるは、我になしたる」という、一つの魂に対するかけがえのない慈しみを大切にする、そういう方向性で、新しく出発し、その中心に日本の良心としてのYMCA運動があるべきだろうと思う。コロナを単なる災いとして済ますのではなく、災いの意味をはっきりと捉えていくということを、YMCAはしなければならないのではないか。
(2021年2月日本YMCA大会)
下からの変革を求めていく
国際基督教大学上級准教授
日本のデジタル格差を埋めるため、子どもたちやユースのために今後何ができるのか。これは今後の勝者になるためにIT技術を身に着けましょうといった表層的な話では全くない。かといって従来のYMCAの良さを守りぬくことが大切であり、何も変えないままでいいと言っていられるような時代でもない。ウェルビーイングを達成する全人教育の一環としてのオンラインプログラムや、ITプログラムの創設や提供を考えていく必要があると思う。コロナ後の新しいニーズをとらえて大胆に戦略をたて、それを実行してゆく先見性と胆力が必要ではないだろうか。
同時に、これから国家がIT技術による管理を進め、危機に迅速に対応できる国家を作るべきだという議論もなされるだろう。しかし、むしろポストコロナの時代の中で日本に住む私たちが目指してゆくべきなのは、下からの変革を求めてゆく市民セクターの力を強化してゆくことだ。さまざまなレベルで行政や企業や他団体などとのネットワークを構築し、社会のニーズをくみ取り、包摂的な社会づくりを目指してゆく。こうした社会変革を目指してゆく担い手になるところに、今後のYMCAの役割があると考える。 (2020年6月日本YMCA同盟協議会)
国際、地域、新たなネットワーク
元日本YMCA同盟/アジア・太平洋YMCA同盟総主事
一つ目は国際。このコロナを通して世界がいかに近いか、世界の問題がいかに自分の問題になるかが感じられた。特に東アジアのYMCAと交流することによって人材を育成したり、環境問題に取り組んだりすることが私たちの役割として大きいのではないだろうか。
二つ目は地域社会。地域社会はいまだんだん意味が見えなくなってきている。一方で、地域でいろいろな課題を抱えている人は増えている。地域、家族の機能も変わり、そういう中でニーズをきちんと把握して、地域に向かって私たちは何をするのか。そこにボランティアが関わる、そこにユースが関わる、こういう働き方をすべきではないだろうか。地域をより身近な、携わるものにするということ。
三つ目はこれらを行うのに、新たなネットワークを作っていくということ。YMCAの内部だけでやるだけでなく外部の団体、自治会連合会、あるいは大学、病院、さまざまな団体とつながって、世界の課題はなにか、地域社会、小さなコミュニティの課題は何か。これらについて話し合って協力してできることを考える。このようなネットワークをいま築くとき。コロナを通してYMCAに問われている一つの方向性であり、大きく羽ばたいていくチャンスを与えられているのではないだろうか。
(2020年6月日本YMCA同盟協議会)
新型コロナ肺炎に感染して
YMCA会員・協力者
2020年10月、新型コロナ肺炎で1ヶ月ほど入院した。マスクと手洗いを徹底し、出張と外食を避けても感染を防げず、「中等症2」に該当し常時酸素吸入が必要となった。主治医からは「早々に人工呼吸器をつけることになる」「その場合、全身麻酔で意識がなくなり、ずっと眠ったままで炎症がおさまるのを待つことになる」「治ればまた目が覚めるが、そのまま亡くなるケースも多い」「いま意識があるうちに、亡くなった後のことをご家族に依頼してもらうのが良いと思う」と告げられた。あまり息もできず高熱でひどい咳が止まらない状態であったが、大学の寮で暮らす息子に所属教会司祭への連絡、葬儀ミサの手配、連絡すべき人々とその内容、各種契約の対応等について依頼した。あまり思い出したくない、とても厳しい状況であった。
幸いにも治療薬「レムデシビル」が効いたため、結局人工呼吸器は不要となったが、肺機能が回復するまで4週間程度を要した。当時は医療スタッフにも余裕があったので根気よく治療してもらえたが、今はもっと厳しいだろう。ワクチン接種までは徹底したオンラインの活用が必要だ。また、家庭内感染が急増し、子育て子育ちの視点から、家族を支える役割がますますYMCAには求められるだろう。