EMERGENCY RESPONSE
緊急対応
日本では、2020年2月、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染を機に感染が広がり、13日に国内で初めての死亡者発生。厚生労働省によるクラスター対策班設置に続き、27日安部当時首相によって全国の小中学校・高校に臨時休校要請が表明される。
3月2日から一斉休校、春休みとなり、全国のYMCAで対応に追われた。「日本YMCAコロナ影響緊急ヒアリング調査」を行ったところ、全国240施設のうち130が開館、53が一部開館、57が全面閉館となったが、全体として76%がなんらかの形で活動を継続していることがわかった。特に保育園、学童保育、放課後等デイサービス、高齢者施設ではステイホームできない子ども・高齢者とその家族約2万人を支える働きを担った。そのためにスタッフは部門を超え、昼夜わかたず、最前線で働いた。
4月7日、政府は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を発令し、4月16日にはその対象を全国に拡大した。
緊急総主事会議を何度も行い、運営状況を互いに確認した。日本YMCA振興資金の緊急貸付を行った。そして、4月10日には職員、役員、会員、ワイズメン、OBG等に呼びかけ「YMCA共同の祈り」を開催し、その後5回続く。誰もが不要不急の外出を控え、人と会えない不安な時間を過ごしており、全国から800人が参加し、祈りを合わせた。各地のYMCAや、アジア、世界のYMCAの苦境と懸命な取り組みについて知り、連帯を確かめるときでもあった。
この第一次の緊急事態宣言下で大きな影響を受けたのが、専門学校・日本語学校の留学生事業、ホテル・キャンプ場、大型施設でのウエルネス事業であった。しかしながら、苦境と対応を迫られる中で、YMCAがなすべきこと、できることを、一人一人が悩み、考え、突き動かされたときでもあった。
緊急事態宣言後、無人となった銀座
「新しい生活様式」、「ソーシャルディスタンス」、「三密回避」、「ステイホーム」
世界YMCA同盟リーダーズ・トーク「レジリエンスへの道」が4月9日から5月14日まで6回行われ、国際連合、WHO、企業、研究者の第一線の分野より講演があった。激動の時代、「新しい日常」に適応するためにYMCA自身の変革、デジタルリアリティ、パートナーシップ、メンタルヘルスなどが世界共通の課題として次々と語られた。「レジリエンスへの道」の「レジリエンス」は日本語にはそのままあてはまる表現はなかったが、衝撃に耐えられる柔軟性や回復力を意味するものと受け止められた。「ネガティブ・ケーパビリティ」、不確実なものや未解決のものを受容する人間本来に備わった力と共に認識されるようになっていった。
レジリエンスな組織であることは、継続的な目標があること。人と人とのつながりの中で、「共感」から「行動」へと励まし、喚起していくその過程、道筋をYMCAがコミュニティで示し、創出していくこと。そのためには不断の努力が必要であるとの覚悟が、胸に迫っていった。
日本でも、アジア、世界との協力、協働がいち早く展開された。
中国、韓国からウエルネス事業再開マニュアル提供
5月、中国、韓国YMCAより、ウエルネス事業(プール、体育館等)再開のための感染対策マニュアルが提供される。これらをもとに専門医にも相談の上、日本の状況に合わせた事業再開ガイドラインを作成し発信した。マスク不足の報道を受け、中国からマスクが各地のYMCAに提供される。
中国YMCAから
北海道YMCAに
感染発生時に中国に寄せられたメッセージ
感染症対策諸外国連携
7月、北米YMCAとアメリカキャンプ協会が策定した「CDC(アメリカ疾病予防管理センター)ガイダンスに基づくキャンプのためのフィールドガイド」を日本YMCA同盟と日本キャンプ協会とが共同翻訳し、YMCAとして監修を経て公開。夏季キャンプ運営のエビデンスとなった。
日中韓YMCA平和フォーラム
2021年3月、日本がホストとなり開催。アジアの平和安定のために3カ国から92人がオンラインで会し、「コロナ禍でのわたしたちの祈り」を捧げ、差別、偏見、自民族・自国中心主義の世界の変化にどのように対峙するか考えるときとなった。
中国YMCAのプレゼンテーション
韓国YMCAのプレゼンテーション
Our New-normal
安全のために「♯はなれていてもつながっている」キャンペーン
自分と大切な人のいのちを守るキャンペーンとして、物理的な距離を取らなくてはならないいまをポジティブに乗り越えるメッセージの配信と方策を推進した。メッセージは12言語(英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、フランス語、ベトナム語、タイ語他)でSNSにおいて展開。同時に、全国のYMCAが、休校対応の教材提供やメッセージ、オンラインを利用したウエルネスプログラムや英会話のポイントレッスンなどを次々と配信。ZOOMを用いた双方向の野外例会の試み、子ども向けオンラインコンサート・チャリティイベントなどを展開していった。
横浜YMCA 家でできる運動の動画配信が報道
子どもたちによるアマビエのイラスト
5月、第一次緊急事態宣言明けに向けて、ブランドコンセプトに沿った感染対策ポスターを制作し、全国YMCAに無料配布した。6月、「新型コロナウイルス感染症対策とYMCAのプログラム」を岩室紳也氏(公衆衛生医師)を講師に迎えオンライン研修として実施。感染のメカニズムと対策、子どもに対する大人の心構えなどを学ぶ。この研修は、「災害支援活動とCOVID19」「野外活動・キャンプとCOVID19-子どもの体験を保証する」とシリーズ化してゆく。
飛沫、エアロゾル、接触による感染を徹底予防
地域社会に寄り添う「御用聞き」と積極的な他団体との連携が図られる。子どもと家族への手紙・リーダーからの電話かけ、高齢者の運動不足解消のための呼びかけを始め、地域諸団体と協力しての食糧配布、見回りなど各地で展開された。企業の協力を得て、米、エネルギー食品、菓子なども大量に配られ、配布活動は、心身の健康を互いに確認するつながりのとき、ニーズ調査のときとなった。
エネルギー飲料45万個を提供
全国一斉の学校休校では、医療従事者、生活を支えるエッセンシャルワーカーの家族を支えるため、アフタースクールの拡大受け入れ、スポーツクラスの地域無償開放など、地域でさまざまな工夫がなされた。
5月「子どもの日」には、サッカークラスの子どもたち60人が医療従事者へのメッセージとボールのパスをつなぐ動画を配信。同日、イタリア大使館にてチャリティーコンサートを収録し、日本とイタリアの医療従事者とその家族のために駐日イタリア大使と日本YMCA同盟総主事がメッセージを送った。
7月の全国的な集中豪雨では、84人が亡くなり、特に熊本県に甚大な被害をもたらした。熊本YMCAは球磨村地域の避難所運営を担い、各地のYMCAより28人の応援スタッフが駆け付け、10月末の閉所まで地域の被災者に伴走した。
コロナ禍での避難所運営は、3密回避、検温やマスク着用の徹底、静養室の確保、全国からの応援スタッフのPCR検査義務、メディア取材の制限など多くの注意を迫られた。一方で、オンラインによる音楽ライブ・交流、プログラミング体験など新しい試みも取り入れ、高く評価された。
長引く自粛・ステイホームにおいて、親からの虐待やパートナーから暴力を受けるDV被害が社会問題化した。一般社団法人Colabo(コラボ)と協働して、10代~20代のDV被害を受けている女性たちにYMCAの宿泊施設を無償提供。少女たちが公的支援を受けるには高いハードルがあり、安全な居場所・住まいの確保が急務となった。4月~7月までで300泊以上、年間を通して1,000泊近く提供した
また、「生理の貧困」と報道された生理用品が買えない女性たちに、全国のYMCAが地域と協働して生理用品を配布した。
生理用品6,000パックを地域に提供
Technology
Amazon、Life is Tech!、YMCAがパートナーとなり、未来を担う子どもたちに「誰もがテクノロジーで世界を変えられる」をテーマに、プログラミングの機会を全国25カ所のYMCA、NPO、災害被災地、約450人に展開した。
学びや体験のオンライン化によってデジタル格差が地域で課題となり、急遽パソコン・WiFi環境への支援も大きく整えた。このことにより、困窮家庭や外国にルーツのある子どもたち、会場も災害被災地など多様な環境で行うことが可能となった。
テクノロジーへの入り口がアフタースクールや放課後等デイサービスなど日常にあり、身近なフィールドや課題発見、キャンプやグループワークの手法とかけ合わせることでYMCAとテクノロジーの可能性が教育の場面で示された。
Nature Camp
Amazon、Life is Tech!、YMCAがパートナーとなり、未来を担う子どもたちに「誰もがテクノロジーで世界を変えられる」をテーマに、プログラミングの機会を全国25カ所のYMCA、NPO、災害被災地、約450人に展開した。
学びや体験のオンライン化によってデジタル格差が地域で課題となり、急遽パソコン・WiFi環境への支援も大きく整えた。このことにより、困窮家庭や外国にルーツのある子どもたち、会場も災害被災地など多様な環境で行うことが可能となった。
テクノロジーへの入り口がアフタースクールや放課後等デイサービスなど日常にあり、身近なフィールドや課題発見、キャンプやグループワークの手法とかけ合わせることでYMCAとテクノロジーの可能性が教育の場面で示された。
文部科学省より委託を受け、全国の21のYMCAにて、子どもたちを取り巻く環境に生じている閉塞感を打破し、感染症に万全の対策をした中での自然体験活動を88キャンプ、約2,000人に提供した。
クリスマスから新年のシーズンをいつもどおりの環境で送ることができない子どもと家族への支援として、アマゾンほしいものリストの社会貢献活用をYMCAがコーディネートした。各地のYMCA、地域の団体に、絵本、玩具、米、電化製品などが、熊本地震で避難所の役割を担った体育館には5年ぶりに大きなクリスマスツリーが届けられた。
国際青少年センター東山荘(御殿場市)に、神奈川県海老名市の小学校13校の子どもたちが訪れ、自然体験プログラムに参加。子どもたちの体験、経験が小さくなっており、「知恵を絞って子どもたちの教育を絶対守ろう。それが私たち大人の使命だ」(海老名市教育長伊藤文康氏)
広島YMCAが自校の学生に行った緊急アンケートより、留学生のうち87%がアルバイトの機会を失い、生活困窮の状況にあることがわかり、ワイズメンズクラブ、企業等と連携し、10トンの米、食材、総合栄養食品を配布した。アルバイト先の休業、家賃や学費の負担、家族の心配など、配布の機会を通して切実な悩みや心配を聞き取った。
「節約のためにスマホを使っていないので家族との連絡も最低限」「不安は多い。だから、みんなの助けがうれしい」「これからの進学や就職が心配」。
全国では約90,000人のユースが、学校や学習の場、ボランティアの場として活動している。大学・学校の休講・オンライン化、移動を伴う帰省困難、アルバイト収入減やアルバイトによる感染不安、大学からの学外活動の禁止や制限など生活は劇的に変化した。
9月、YMCAやボランティアの活動、学業、家族や友人、そして感染リスクや将来に関する意識調査を実施し、552 の回答が寄せられた。
約半数が自分や子どもへの感染、移動の不安を抱えている一方で、「子どもの活動も制限されて、体験の機会が減っている。こんな時こそ、子どもの成長に寄り添いたい」と意欲が高まっている傾向も明らかとなった。
同時期、世界のYMCAでもユースのメンタルヘルスが最重要課題としてフォーカスされるようになってゆく。
10月、世界YMCA同盟の「若者主導の課題解決サ ミット」の呼びかけに応じて、気候変動をテーマに日 本でもプロジェクトチームを組織し8人が参画。これ まで海外のプログラムやキャンプへの参加は限られた層だけであったのが、オンラインで世界につながることが日常となり、持続可能な社会に向けて若者の課題 解決能力の発揮の機会が急速に拡大していった。
若者に限らず、オンラインでのコミュニケーション が日常化していく一方、議論の深め方、体験による視野の拡大などはまだまだ模索段階であり、「オンライン疲れ」や、オンラインにアクセスできない層への支援の必要性も顕在化した。
感染症への不安や恐怖は、人びとの心や社会に、差別や偏見をもたらした。6月、日本赤十字社が進める「新型コロナウイルス3つの顔を知ろう!」というキャンペーンに賛同し、より広く全国各地のYMCAや学校などの教育機関等で活用されるようユースボランティアリーダーの協力を得て、子どもと保護者に向けたメッセージ動画を作成した。小冊子、ミニ絵本にして学校に配布する工夫もされた。
“恐怖”、“不安”、“相互不信”という負の連鎖を止めるために、立ち止まって考え、それぞれの場所でできることを考え続けることを呼びかけた。
アニメーション「ウイルスの次にやってくるもの」 制作著作:日本赤十字社
動画制作協力:盛岡YMCA
2021年2月、全国7拠点のYMCAアフタースクールをオンラインでつなぎ、「ひとりひとりをリスペクト!」をテーマに子どもかいぎを実施した。子どもたちが、それぞれのピンクシャツデーの取り組みを紹介し、メッセージを伝え合った。
「自分と違う人を素直に受け入れて差別をしない、違いを受け入れることが必要。“いじめやすい”環境を作らないこと」「たとえ、誰かがいじめていても、自分はその“いじめられている人”に優しく笑顔で接しようと思う」
報 告
個人、公的機関、企業等から変化がめまぐるしい社会において、地域に密着した支援ができる団体として期待と共に支援が寄せられた。
全国各地のYMCAに届けられた一般寄付金 4千万円
公的機関、企業等からの寄附金(プロジェクト型寄附等) 9千万円
企業等からの食品、物品提供等 7千万円
合計 2億円(2020年12月現在)
主な使途先
・困窮家庭、エッセンシャルワーカーの子育て支援
・留学生・困窮青少年生活・学習支援
・子どもたちへの自然体験機会提供
・暴力下にある女性のための一時避難提供
・テクノロジーを用いた学習機会提供
・感染症に関する教育
・啓発機会提供
・地域NPOと連携したひとり親
・困窮家庭支援
・シニアの見守り、健康作り機会提供
・ユースによる課題解決支援
・日本で暮らす外国人への情報提供支援
・スポーツを通した免疫力向上とリーダーシップ養成 等
5月、ジョージ・フロイド事件などを発端として、BLM運動は全米的なデモ・暴動へと発展した。これを受けて11月のアメリカ大統領選挙では人種差別が選挙の争点の一つとなった。北米YMCA同盟会長ケビン・ワシントンは、最初のアフリカ系アメリカ人の会長としてメッセージを配信した。
「悲しくて、やりきれなくて、怒りと恐怖を持ちながらも、私には希望がないわけではない。若者たちが、真の変化を起こすために辛抱強く、力を蓄え、貢献しようとしている。物理的につながることができなくても、コミュニティの格差を埋めようとポジティブな連帯が可能であることをYMCAは繰り返し見せていく」
8月、大爆発がベイルート中心部、港湾地区で起こり、207人が死亡、6,500人が負傷、30万人が家を失った。レバノンYMCAは窓が全部吹き飛ばされたが、スタッフ・関係者は無事、すぐに薬品や食料の配布を開始した。日本はいち早く緊急支援を送金、在日本レバノン大使より感謝状が贈られた。
2021年2月、アウンサン・スーチー国家顧問、ウィンミン大統領他が拘束され、国軍によるグーデーターによる国家非常事態宣言が発令された。世界につながるインターネット、SNS等が遮断される。軍事クーデターから3ヶ月、警察が逮捕状なしで市民を逮捕し、無抵抗の市民が銃殺されている。700人を超える市民が銃撃、殺害され、約3,000人が連行される。ミャンマーYMCAでもスタッフとボランティアが拘束された(うち1人は解放)。
アジア・世界で「ミャンマーのための祈り」や募金が開始され、日本でも多くの緊急支援募金が寄せられた。
友よ
ミャンマーで起こったクーデター以降、私たちは全員、牢獄にいます。
正しいことをしたことによって。
貧しい人のために、処分された人のために、抑圧された人のために立ち上がったことによって。
人種、宗教、民族のマイノリティの人たちの味方になったことによって。
誰も私たちを止めることができません。なぜなら私たちは神が創造されたものであるから。
私はロニーです
私たちはロニーです