パリ第一大学パンテオンソルボンヌ 経済学研究科
The Sorbonne School of Economics,
The University of Paris 1 Panthéon-Sorbonne
The Sorbonne School of Economics,
The University of Paris 1 Panthéon-Sorbonne
私は、サステナブルな日本社会の実現に資する取組みを加速させるための政策に携わっていくことを目指しています。その中で、欧州の環境政策(排出量取引制度)の先進事例やカーボンプライシングに関する経済学的分析を通じた実効性に係る先駆的な実証研究に取り組むため留学を希望しました。
パリ第一大学を志望する理由は、私の研究テーマに資する講義が充実していたからです。私はEU ETSを研究対象とすることから、ヨーロッパの環境政策の取り組みの実態や経済学と気候変動の関連性について知識を習得する必要があると考えていました。パリ第一大学での開講科目の中には、①「Resources and climate change」、②「Topics in environmental economics」といった環境経済に関わる科目が多種多様に存在しており、私は、気候変動の経済学的モデルやその政策立案について最先端のデータと研究者が集まる欧州における講義や学習環境に魅力を感じました。同時に、留学では一橋大学での授業とも併せて研究手法の多角的な理解も図りたいと考えていました。
パリ第一大学は、社会科学と人文科学分野で高い評価を受けるフランスの国立大学であり、法学、政治学、経済学、経営学、芸術等の学問に特化しています。また、毎年45,000人近い学生が在籍し、ヨーロッパ大陸で最大規模の同窓生ネットワークを保持している大学です。
留学先の講義“Topics in environmental economics”では、重要な環境トピックについて紹介され、国際経済との関連性や適切な政策を提案するために経済分析がどのようにそれらにアプローチしているか、現在の課題及び分析の理論的根拠を基に実践的に学習しました。社会的費用の経済学的モデルや環境税に関する手法だけではなく、グリーンテクノロジーやグリーンラベル製品、企業のCSR活動、サステナブルファイナンスといった最先端の知識についても触れたことで、有益な情報を入手し研究に応用することができたと考えます。
もちろん多くの学生は勉学に熱心であり、教育レベルの質も高く、初めは授業についていくのがやっとでした。また、フランス人にもよりますが、フランス語訛りの英語には多少の癖があり、講義時間で全ての内容を理解することができませんでした。そこで、毎講義を録音し、それを自宅で聞きながら復習する習慣を継続してきたところ、半年程経つと授業の内容を理解し、リラックスして講義に専念できるようになりました。
また、私はフランス語力も向上させたく、フランス語の講義を履修することに決めました。フランス語の授業では、講師がユーモアを交えて指導してくれたおかげで自分自身も楽しみながら授業に取り組むことができました。教室内だけではなく、パリ市内を散策してパリの建築物についての歴史を学んだ他、クラスメイトと美術館を訪問し絵画を通じてフランスの歴史について深堀する等の課外学習に参加しました。このような体験は、留学の醍醐味であると思います。
パリ第一大学のキャンパスはパリ市内に複数存在しており、私自身も各講義で異なるキャンパスへ通っていました。キャンパスは勿論、教室も歴史ある創りなので、そのような環境下で勉学に励むことができたのはモチベーションの維持にも繋がりましたし、素晴らしい経験となりました。
「花の都」と称されるパリですが、当初の生活は順風満帆にいかず、現地のライフスタイルや文化に苦労する時もありました。しかしながら、様々な紆余曲折を経て、これまでの人生で最も意義深く、濃密な留学であったと感じます。フランスでは、26歳以下の学生(若者)は身分証明書や学生証の提示で多くの美術館やモニュメントに無料でアクセスする機会があります。私は授業以外の空き時間を活用し、パリ市内の美術館をたくさん訪れました。特に、有名なルーブル美術館やオルセー美術館は広大で収蔵品も豊富にあり、1日では見回ることができないと思い、3回ほど訪問しました。他にも、エッフェル塔、凱旋門、オペラ・ガルニエやヴェルサイユ宮殿などパリには多くの歴史的建造物が数多く存在し、気軽にパリの伝統文化や芸術に触れることができました。今振り返ると、パリの名所を巡るひとときは、心身をリフレッシュする貴重な時間であったと感じます。フランスはバカンス大国でもあるので、セメスターの途中で一週間程の休暇期間があることも特徴です。
個人的に、1セメスターの留学の場合、生活や学習環境に慣れてきた頃に帰国するのではないかと思ったため、予め2セメスター留学したいと考えていました。まさにその通りで、2セメスター期間で留学を経験したことで、英語やフランス語力が向上し、充実した留学生活を送ることができました。
フランス留学を通じて、多様性を受容し主体的に行動することの重要性を深く学びました。異なる文化や価値観に触れる中で、当初は言語や生活習慣の違いに戸惑い、自分の考えを上手く伝えることができず、もどかしさを感じる場面もありました。それでも、異文化を理解しようとする姿勢を大切にしながら、語学の習得に努め、現地の方々との積極的な交流を重ねることで、未知の環境への適応力を獲得しました。この経験から、多様性を尊重し自ら一歩を踏み出して挑戦する姿勢こそが、課題解決や自身の成長に繋がるのだと実感しました。
世界中の優秀な学生と出会い交流する中で、生涯にわたり勉強することの重要性を改めて実感したと同時に、将来のビジョンや研究の視座が広がったと考えます。授業で知り合った友人たちとは帰国後も交流しています。
留学は勉学の向上に留まらず、自分自身と深く向き合い視野を広げる貴重な機会です。最初は困難に直面するかもしれませんが、完璧を求めすぎず自分なりに前向きに挑戦することも大切です。困った時には素直に助けを求めることで、段々と環境に慣れていきました。また、「分からないことがあるのは当たり前」と考え、柔軟に学び取る姿勢を持つことも貴重な学びへと変化します。限られた留学期間を最大限に活かすためにも、自分の殻を破って様々なことに挑戦してみてください。きっと、帰国後には大きく成長した自分に出会えるはずです。是非多くの学生に留学を経験していただきたいと思います。