マーストリヒト大学 人文社会科学院
Faculty of Arts and Social Sciences, Maastricht University
Faculty of Arts and Social Sciences, Maastricht University
私は、国際・公共政策大学院の交換留学制度を用いて、オランダにあるマーストリヒト大学(Maastricht University)に留学をしました。マーストリヒトは、欧州連合(EU)が設立された場所としての印象が強く、その欧州統合の歴史的偉業を学ぶことができるという憧れから、この大学への留学を希望しました。大学院入学当初は、民主主義やポピュリズムといった概念研究を行いたいと考えていましたが、欧州地域に興味を持ちさらに知りたいと考えたこと、そして専門職過程らしく実践さを意識する重要さを再認識し、今まさに欧州で何が起こっているかを肌身で感じたいと意気込み、留学生活をスタートさせました。
留学先では、主に欧州各国からの留学生が多くを占め、議論をするなかで様々な欧州観を持っていることに気付かされました。現在のEUを考える上で、20世紀半ばに起こった欧州統合の動向を観察するだけでは不十分であり、欧州地域を客観的に見ることや、他者意識(排他性)の中で形成されるヨーロッパ像を見る重要性を学びました。また、EUが規定する枠組みが構造的でありつつも、それゆえに実質的な多国間協議のなかで合意形成を図ることが難しいことも実感しました。
大学外の活動においては、実質的にボーダーがないことから、欧州各国を探訪することが出来ました。各地域がそれぞれの文化を持ち、包括的に捉えていた既存の欧州像とは異なることが理解出来ました。また多くの地域でEU旗を見られたことからも、EUが人々のなかで、大きい存在として意識されていることが分かりました。
ヨーロッパ、特にオランダは英語習熟度が高いため、日常的な場面で苦労することはありませんでした。一方講義では、聞き慣れない単語が飛び交うことも多く、困難もありましたが、少しずつ語彙を増やすことで対応することが出来ました。最も大変だったことは、留学期間中は就職活動とも一部被るため、その両立を図ることでした。私は、アメリカで開催されるボストン・キャリアフォーラムに参加することで、留学期間中に就職活動を終えることが出来たため、そうしたイベントを活用することも必要かと思われます。
今後、マーストリヒト大学への留学を考えている方は、渡航前に事前知識を入れておくことが重要かと思います。本プログラムは、「Idea of Europe」の講義などがあるように、古代から現代にかけて「欧州・ヨーロッパ」とは何かを考えることから始まります。その際、歴史・宗教的背景から現在の欧州諸機関の構造まで、幅広い分野を英語で理解できるように準備することをおすすめします。
留学後も欧州事情に興味を持ち続け、多様な大学生が集まるEUの勉強会や、駐日欧州連合代表部が企画した「模擬EU」のイベントに参加し、学びを深めることが出来ました。この留学をきっかけに、修士2年間の学びが、より解像度の高いものとなりました。たしかに留学経験は、異国の地で体験する驚きと感動、そして困難に立ち向かうことで、視野を広くそして忍耐力のあるマインドを育みます。しかし、留学を単に価値観が変わったという漠然とした体験としてで終わるのではなく、さらにそこから得た考察や次の行動に移すことを意識する経験まで繋げることが、留学をさらに意義あるものにすると考えます。
最後になりますが、一連の留学に際し、様々な方からご助言を頂けたこと、支えてくれた家族に感謝を表するとともに、これを読まれた後輩の方々が留学に興味を持ち、実践され、素晴らしい経験が出来ることを期待しております。