【卒業制作】

影と私のダイアローグ

諏訪 SUWA Nagisa

主査・東方悠平/副査・高橋史朗

影とは光に照らされたその反対側に必ず存在するもの、本物と類似しているが本物ではないもの、影は常にそのものと共にあり、時には大きく、時には小さくそのものに付き添っているものです。

児童文学の中にみる「影」という論文を書いた田中朋子さんは、影とは極めて日常的であり ながら、なおかつとらえどころのない謎めいた現象で、手で掴めそうで捕まえることが出来 ず、身近なようでよそよそしく、自分に似ているようで忌まわしく他人で、ここにいるようですぐ に消えてしまうのが影だと述べています。

なぜ私は影について興味を持ったかと言うと、影とはいつも一緒にいる存在です。言い方を変えると相棒のような存在です。何か嫌な事があってもいつも何か助言してくれる訳でもない のに一番近くで常に寄り添ってくれています。影には口がありません。意思疎通が難しい、 だけどいつも私達の一番傍で光がある限り目視する事ができます。 光があるからこそ影があります。

また、影とは心の闇でもあると私は考えていて、過去の汚点や、思い出したくない過去の出 放置せず見つめ直すことによってります。ですが、自分の考えや言動について省みる、嫌なことも放置せず見つめなおすことによって自由になれるというポジティブな側面もあります。 影とはそんな存在であると私は認識しています。

最初は影を避けている主人公が最後は影と握手して、影を受け入れる、共存していくしてい くというお話でこの研究を完成させます。

この物語の特徴は共存していく、つまり影と一緒に成長していくのが特徴です。影はいつも一緒です。自分の影を含めて全てを受け入れてこそ今の自分がある、影も愛せてやっと一人前なのです。

【卒業制作】

ロトスコープ技法を用いたアニメーション制作~日常的仕草を手がかりとした心理描写~

関川 郁美 SEKIKAWA Ikumi

主査・東方悠平/副査・宇野あずさ

アニメーションには多種多様な技法がある。その一つとして、実写映像をトレースしてアニメーションに落とし込むロトスコープ技法がある。

このロトスコープ技法が人間の心理描写を表現する際に有効であると考える。この考察をもとにオリジナルのロトスコープアニメを制作し、日常生活における他者の感情の機微を想察する点においてロトスコープ技法の有用性を研究する。

そのために一人称視点で見た動きと他者から見た自分を比較するロトアニメの映像を制作する。

【卒業制作】

駄洒落を利用したキャラクターデザイン手法研究〜オリジナルキャラクター「いかにもばなな」の制作実践を通じて〜

田村 萌々子 TAMURA Momoko

主査・東方悠平/副査・高橋史朗

本研究では駄洒落を用いたキャラクターの制作手法を提案し実践する。また、その有効性を証明することが目的である。

昨今、多種多様なマスコットキャラクターが誕生し溢れている。日常的に目にする マスコットキャラクターは大きく 3 種類に分けられる。①サンリオなどのキャラクタ ービジネスを行う会社によってつくられるキャラクター。②漫画やアニメ、ゲームな どに登場するキャラクター。③地方の観光や商品プロモーションなどを目的に作られ たご当地キャラクターなどである。

それらの中でも、より魅力的なマスコットキャラクターとはどのようなものか。仮説として、駄洒落が上手く機能した制作手法とビジュアル的にも洗練されたデザインという二つの要素が成立しているものが、完成された強度の高いキャラクターになり得ると見なす。その駄洒落とキャラクターデザインが組み合わされた手法について研究・実践する。

研究方法として、まずはさまざまなキャラクターの調査を行う。①②③から対象を絞り、キャラクターの構成要素やネーミングを調査し比較を行う。その調査を元に、 駄洒落を用いた制作手法の概要を明確にし、その手法を用いてオリジナルキャラクタ ー「いかにもばなな」を制作する。その後、キャラクターの着ぐるみやグッズなどを 制作し、二つの要素が成立した強度の高いキャラクターが完成したことを証明する。

【卒業制作】

現代絵巻物制作〜タイムベースドメディアとしての可能性〜

早坂 旺夏 HAYASAKA Oga

主査・東方悠平/副査・宇野あずさ

本研究では、物語の表現方法の可能性を広げるために現代風絵巻物を制作しました。 物語の表現方法としてアニメやゲームといった映像を用いるものから、漫画や小説のように一つ一つの場面を描いた冊子もあります。これらの⻑所は作品の登場人物になったかのような没入感を得られることです。つまり、物語の中の時間の流れをより体感できるということです。これに対して私が提唱する方法としては絵巻物の形をとることです。絵巻物では一枚の紙の中で連続的な時間の流れを再現ができるので、漫画のようでありつつもその世界を俯瞰して見ることができるようになります。この特徴を生かして制作する作品は、物語の形態をとってはいるが登場人物に感情移入すると いった鑑賞方法ではなくストーリーそのものを鑑賞し楽しむものになると考えました。実際の絵巻物の制作の中では、物語を読み進める際の方向や吹き出しやオノマト ペの実装といった仕様には漫画の要素がより多く組み込まれました。一方で、絵巻物はいわゆる神の視点から時間の流れを把握することができることを確認しました。