わたしたちが、生涯を通じて自分が関心のあることをどのように実現してゆくか、社会に出て働くことにどのような意味があるのか、ということを学んでゆくのがキャリア教育の課題です。経営学部では以下の2つの科目でキャリアについて学ぶことができます。
1年次「キャリア形成と大学生活」(TGベーシックの課題探求)
3年次「キャリア形成論」(専門教育科目)
大学生には、自分自身のことについてゆっくりと考える多くの時間が与えられています。こうした時に目の前の生活や勉強のことだけでなく、将来のキャリアを考え、色々と試行錯誤しながら、新しいことに挑戦することはとても大切なことです。
このページでは、キャリアとは何であり、よいキャリアを築くためにどのような姿勢が必要なのかを説明していきます。
それでは「キャリア」とは何でしょうか?
もしかすると、キャリアとは就職活動や会社研究などのことだと考える人もいるかも知れません。そう考えることは間違いではありませんが、キャリアとは狭い意味での仕事を意味するだけではありません。各人がこれまでの人生を振り返り、その意味づけをしながら、自らの将来について考えることを含む、とても広くて深い意味を持つ言葉なのです。したがってキャリアについて学ぶということは、仕事に必要な知識や能力を身につけるとともに、自分の人生のあり方を考えながら、良い人生(well-being)を実現する道筋を学ぶことでもあります。
このような広い意味でのキャリアを学び、生涯を通して成長し続ける力を養うためには、大きく分けると次の3つの能力が必要となります。
どんな仕事にも必要とされる汎用的な能力
企業経営に関する基本的な知識や、仕事上の課題を発見し、それを解決する能力など、どのような仕事に就いても必要とされる能力のことです。経営学部では、演習科目や各種の専門科目を通して、こうした汎用的な能力を養うことができます。
生涯を通したキャリアを自分で構築する能力
良いキャリアとは何か、良いキャリアとはどのように形成されていくのかを理解しながら、自分なりのキャリアを作り上げていく能力のことです。経営学部では1年次の「キャリア形成と大学生活」と3年次の「キャリア形成論」という科目によってこうした能力を養うことができます。
特定の仕事に必要とされる専門的な能力
税理士、公認会計士、ファイナンシャルプランナーなどの特定の仕事に就きたい場合には、それぞれの仕事で必要とされる専門的な知識とスキルを学ぶ必要があります。経営学部では、各種の資格関係の科目でそうした知識を身に付けることができます。
近年まで日本の大企業は、終身雇用と年功序列という日本独自の雇用慣行を採用し、従業員のキャリアについては会社が面倒をみてきました。このため従業員は会社の方針にしたがっていれば、自らのキャリアについて心配する必要はなかったのです。
しかし現在では、この雇用慣行は大きく崩れつつあります。その背景には、グローバルな競争や業種を越えた競争が激しくなるなか、会社が長期に亘って従業員の面倒をみることが難しくなってきたという事情があります。このためこれから社会に旅立つみなさんは、今よりもさらに自らの力でキャリアを構築する能力を求められることになるでしょう。
今起こっているもう一つの変化として忘れてはならないのが、第四次産業革命と呼ばれる、IT化や人工知能(AI)の進展による産業構造の大変革です。幾つかの調査によると第四次産業革命によって、店舗の接客スタッフ、銀行の融資審査担当者、不動産仲介業者、経理担当者、税理士など、ITや人工知能(AI)で代替可能な多くの職種で仕事が激減するだろうと考えられています。
つまり大学を卒業して最初に就いた仕事や会社が、10年後、20年後もそのまま存在し続ける保証はないのです。こうした時代にあっては、誰もが1つの組織に留まることだけでなく、転職を考えたり、仕事の内容を変えたりする必要に迫られることになるでしょう。あるいは独立して組織に属さない働き方を考える人も出てくるかも知れません。
このようなIT化・AI化による変化に対応するためにも、今後は自らの力でキャリアを構築する能力を高めていくことが必要となるのです。
キャリアを構築すると言うと、それは「目標を定めて、その目標を実現するために努力すること」だと考える人が多いかも知れません。たしかに中学校や高校のキャリアの授業では、そのように教えられることが一般的です。このため大学に入学したての頃は「自分は将来の目標を決めることができていない」と考え、不安を感じる人が沢山いるのが現実です。
しかし30歳代~40歳代になって、自分が満足するキャリアを築くことができたと考えている社会人のうち、大学時代に目標をもって努力をしてきたという人は、非常に少数派であることが分かっています。では、そうした人たちはどのようにして満足するキャリアを築くことができたのでしょうか。その答えを知る上で重要なのが、クランボルツというキャリア理論の研究者が提唱した「計画された偶然性(planned happenstance)」という概念です。
クランボルツは、アメリカのビジネスマンを対象とした調査によって、次の3つのことを明らかにしました(※)。すなわち多くの人が①大学時代にキャリアに関する具体的な目標を持っていた訳ではないこと、②しかし自分が面白いと思うことに取り組んでいくうちに、新たな展開や、新しい人との出会いが生まれることで、③「自分が思ってもいなかった道が開かれ、今のキャリアが出来上がった」と考えていることです。
※ J.D.クランボルツ他(2005年)『その幸運は偶然ではないんです!』ダイヤモンド社ここから分かることは、多くの人のキャリアは「目標」や「計画」ではなく、幾つもの「偶然」によって形成されているということです。しかしそれは後から振り返ってみると、あたかも自分にとって最良のキャリアに導くような「良い偶然」だったと感じられていることから、クランボルツはそれを「計画された偶然性(planned happenstance)」と名付けました。
こうした「良い偶然」は前もって計画しても得られるものではありませんが、日々の出来事に対する積極的な態度が、こうした偶然を引き寄せるとクランボルツは述べています。特に重要な態度として、彼は次の5つを挙げています。
好奇心 :たえず新しい学習の機会を模索し続けること
持続性 :失敗を引きずらないで努力し続けること
楽観性 :新しい機会は必ず来るとポジティブに考えること
柔軟性:こだわりを捨て、状況に合わせて信念、態度、行動を適応させること
冒険心 :結果が確実でなくてもリスクを取って行動を起こすこと
このようにキャリアについて学ぶことができれば、大学生になったばかりの今「自分には将来の目標がなくて不安だ」と心配しすぎる必要がないことが分かります。たとえ具体的な目標がなくても、今現在目の前にあることに一生懸命取り組んでいけば、自分にとって最良のキャリアへの道が開かれるのだと信じ、そのように期待しながら大学生活を送っていけば良いからです。
経営学部の3年次に履修することができるキャリア形成論では、様々なキャリアを通ってきた社会人の話を聞くことで、こうした「良い偶然」がどのように生み出されるのかについて具体的に学んでいきます。そしてそれが誰にでもできることを理解していただくことで、皆さんが意味あるキャリアに向けて第一歩を踏み出すことができるよう、励ましと勇気づけを行っていきます。
キャリア形成について考える中で、資格を取得したいと考えることもあるでしょう。
経営学部では会計やファイナンスに関連する資格の取得を支援する科目が多く設置されています。
会計に関しては、日商簿記、税理士、および公認会計士に関連する科目や講座があります。
ファイナンスに関しては、フィナンシャルプランナー(FP)の科目があります。
資格学習については以下をご覧ください。