経営学科には、数多くの科目があるので、どの科目を選択すべきか迷ってしまう方がいるかも知れません。そこで経営学科では3つのコース(科目群)として(1)マネジメント、(2)マーケティング、(3)会計ファイナンスの3つを提示しています(図1)。学生の皆さんは、これらのコースを参考に自分の関心に沿って履修をしていただきたいと思います。
なお、3つのコースはあくまで学生の皆さんが履修計画を立てる際の指針として示しているものです。どれかのコースを選んだらそれ以外のコースの科目をとることが出来ないといったことはありません。皆さんの関心や目指す進路を考えながら柔軟に履修する科目を考えてください。ただし、大学が定める単位修得の要件ならびに卒業の要件などを満たす必要があります。卒業要件は学科課程表を確認してください。
また、3つのコースのほかに、経営学部教員が担当する少人数制科目(演習)もあります。この科目を履修することで、各教員の指導のもと専門分野を深く掘り下げた学びを行うことができます。各教員の演習については教員およびゼミ紹介を見てください。
それでは、それぞれのコースについて見ていきましょう。
図1 科目群(コース)の概要
マネジメントとは、他の人たちと一緒に働いて共通の目的を達成することです。将来会社を経営してみたい人、組織を動かせるようになりたい人、これから企業がどう変わるのか考えてみたい人に向いています。
まず、1年次では、経営学の基礎だけでなく、幅広い視点で企業経営を捉えられるようになるために、様々な教養・思考力を身に付ける必要があります。経営学の基礎については、必修科目の経営学入門を履修して、企業を分析する視点を養うと良いでしょう。その他、論理的な思考力を養うための基礎演習や総合演習といった科目を合わせて履修すると良いでしょう。
2・3年次では、経営学の諸分野をより専門的に深く学習していくために、経営戦略論、人的資源管理論、経営組織論などを履修していきます。それに加えて、国際的な企業経営に関心のある学生は、国際経営のあり様や多国籍企業が直面している経営課題とそれに対応した経営システムを学ぶために国際経営論やアジア経営論を履修すると良いでしょう。さらに、演習(3年)を履修することによって、自らが興味を持った専門分野を深めることができます。
そして、4年次にはこれまで学修した内容の総決算として、各自が関心のあるテーマについて演習(卒業研究)において追及することができます。この活動を通じて、論理的思考力に加えて、課題処理能力、構想力を身に着けることができるでしょう。
なお、マネジメントはヒト・モノ・カネの管理に関わりますが、それらを網羅的に学習したい場合は、ヒトの管理を中心に扱う経営心理学Ⅰ・Ⅱおよび人的資源管理論、人的資本経営論、モノの管理(生産管理など)を中心に扱う経営管理論、カネの管理を中心的に扱う「会計」関連科目、といった科目群をバランスよく履修する必要があります。
これらに加えて経営学科では、ケースメソッドと呼ばれる実践的な学習スタイルを採用したビジネス・ケース実習Ⅰ・Ⅱという科目があります。これは、実際の企業の経営を教材に、当事者の立場で問題発見や問題解決を疑似体験していく授業です。経営学を単なる知識にとどめず、使えるスキルにしたい学生はぜひチャレンジしてみてください。
マネジメントに求められる能力は大別すると次の3つです。第1は、業務を効率的にこなすための「課題処理能力」で、経営学の基本知識や分析ツールが役立ちます。第2は、人との協力関係を築いたり説得したりする「対人能力」です。これについてはリーダーシップやモチベーションの理論、コーチングの知識を学ぶことができます。第3は、新商品や新事業を企画したり戦略を立案したりするのに必要な「構想力」です。経営理論を深く学ぶと同時にケース分析などに取り組むことによって、構想力を養っていくことができます。
事実に基づいた問題の把握や解決案の立案は経営の基本です。そのためには、会計学の基礎知識は不可欠です。普通高校の出身者には、簿記や会計学はハードルが高く感じられるかも知れませんが、そんなことはありません。会計のスペシャリストになる必要はありませんが、会社の数字をどう読めばいいのか、その勘所はしっかり掴んでほしいものです。
また、カネの管理という点では、ファイナンス関連科目も重要です。やはりスペシャリストになる必要はありませんが、会社や事業の資金調達や資産運用の基礎的な知識があれば、鬼に金棒です。
顧客との接点を扱うマーケティングは、経営戦略論やイノベーション論などの科目と非常に関連が深い科目です。また、顧客の望む商品をタイムリーに低コストで生産・供給することも企業経営の大きな課題であり、経営管理論などのモノを扱う科目とも関連があります。マーケティングのモデル・コースと合わせて履修するのが良いでしょう。
中小企業診断士の資格取得を狙うことができます。ただし、その場合には、会計学や法律関係の科目について追加的に学習する必要があります。
商品・サービスの登場・変化に興味がある人、地域産業振興やNPOに関心がある人、人や世の中の動きに関心があり、統計的な分析から消費者の行動を理解することに興味がある人、小さくても自分で経営をしていきたいと考えている人、将来は人と 接する「現場」で働きたいと考えている人、企画や商品開発に興味がある人、アイディ アを形にしていく仕事がしたい人。
ビジネスは我々の生活や社会全般に非常に大きな役割を果たしています。ビジネスを正しく進めることは、それを行うものに利益をもたらすだけでなく、顧客を喜ばせ、社会を豊かで魅力あるものにし、様々な問題解決を促します。そうしたビジネスの可能性を理解し、それを実践していくために、このコースでは理論と実践の両面から学んでいきます。
マーケティングを中心にしたモデル・コースでは、次のことに重点を置いて学んでいくことを想定しています。①ビジネスとその対象である世の中(消費者や社会)との関係を理解する。②ビジネスと世の中を結びつけていく(単にものを売るだけではありません)ために必要な方法・ツールを習得する。③実際の商品・サービス、企業活動、市場現象にふれ、成功のポイント、問題点、課題などを捉えていくための理論を学ぶ。④ 自らのアイディアを形にしていくための取り組みを行う。 ⑤ 経験則ではなく、科学的・客観的な意思決定ができるようになるためのデータ分析や統計学の知識を磨く。
経営学部では以上の5つの観点に重点を置きながら学ぶことが可能なマーケティング関連科目を配置しています。まず、2年次には、マーケティングに関連する基礎的な理論や方法論を学ぶマーケティングI(A)、商品の流通や調達について学ぶ流通論やサプライチェーン・マネジメント、商いの歴史について学ぶ商業史I・IIを履修出来ます。加えて、マーケティング分野では昨今データに基づく意思決定を大変重視する考え方が浸透してきています。そのため、統計学概論I・IIといった科目も併せて履修して基礎的な統計的知識を醸成しておくことを推奨します。3年次には、消費者の購買・消費行動やマーケティング・リサーチなどといったことを学ぶことが想定されるマーケティングI(B)・II(A)・II(B)、それ以外にもサービス・マネジメントI・II、商業政策論、起業論、アントレプレナーシップといったより専門的なマーケティング関連科目を履修可能です。
このコースでは、よりよいものを企画・提案していく力、問題を解決していく力を養っていくことを最大の目標とします。消費者が求めるものを把握し、それを最適な形で実現していくことから、地域に求められるものを組み立てていくことなど、広い視野で問題を解決する能力や実践上の技術などを総合的に高めていくことを目指します。世の中にある複雑な問題(例えば商店街の再活性、環境保護と開 発の両立、少子高齢化時代のビジネス)に対して、適切に対処し、解決策を構想し、そ のための活動を組織化していくことができる「リーダー」や「スペシャリスト」を養成することを目指していきます。
このコースは、マネジメント・コースとあわせて履修するとその効果が高まると考えられます。世の中の問題を解決していく上で、ビジネスは大きな役割を果たします。その原理や構造、行動を理解していくことで、このコースの狙いはより確実に達成されるといえます。例えば商品開発・サービス開発というマーケティングの中心的な課題を理解していくためにはマネジメントの視点が不可欠です。
また会計ファイナンスコースも基礎的なことは理解しておくべきです。お金をどう調達するか、どう管理していくか、という視点なしに、どのような活動も継続していくことはできません。商品を作るにも、その原価の管理の考え方がわからなければなりません。どんなに良いものでも、つぶれてしまったのでは顧客への裏切りです。責任を果たすために、数字には強くなくてはならないのです。
このコースは非常に対象が広いので、他のコースと連携させ、自らのテーマを見つけて取り組んでいった方がより高い効果が得られます。企業人として活躍していくことを目指すのであればマネジメント・コースと連携していくのがよいでしょう。自らビジネスやNPOを興していくなら、全てのコースの基本を理解して行くことが大切でしょう。マーケティングの専門家やリサーチャーなどを目指すなら、会計や統計学の知識を磨いていくことが不可欠なのは言うまでもありません。事実に基づいた問題の把握や解決案の立案は経営の基本です。そのためには、会計学の基礎知識は不可欠です。普通高校の出身者には、簿記や会計学はハードルが高く感じられるかも知れませんが、そんなことはありません。会計のスペシャリストになる必要はありませんが、会社の数字をどう読めばいいのか、その勘所はしっかり掴んでほしいものです。同様に、日々企業には様々なデータが集まっています。こうしたデータの分析から消費者の行動、不満やニーズ、商品の問題点などを把握することが必要になるため、統計的知識の習得にはぜひ積極的になっていただきたいと思います。
販売士、中小企業診断士
会計とファイナンスは、どちらも主として企業活動から生じる財務情報(売上高、費用、利益、キャッシュフロー、資産、借入金、資本金など)に関連する知識やスキルの体系です。主役が財務情報であることがポイントです。
財務情報は、企業経営に関わる最も重要な情報です。そのため、財務情報に関わる知識・スキルは幅広く、多種多様なものがあります。次のような事項に関心がある人は、会計・ファイナンスを学ぶといいでしょう。
財務諸表を作成する方法や理論を知りたい(企業の経理部で働いてみたい)
企業の財務業績を分析する方法を身に付けたい
税金の仕組みについて幅広く学びたい
予算管理など、企業活動を計画・コントロールする方法を学びたい
企業が行う資金調達や投資の意思決定の方法を身に付けたい
企業外部の投資家や銀行が行う投資・融資の考え方を学んでみたい
また、会計・ファイナンスに関連する特定の知識・スキルを身につけると、資格を習得することもできます。そのため、会計・ファイナンスは次のような資格取得に関心のある人にも向いています。
日商簿記検定(日商)3級、2級、1級
ファイナンシャル・プランナー3級、2級
税理士、公認会計士
上で述べたように、会計・ファイナンスは幅広い分野から構成されています。東北学院大学 経営学部では、図2のように大きく5つの科目群に分けてカリキュラムを構成しています。
図2 会計ファイナンス・コースの科目群
簿記科目では、財務諸表を作成する方法について学ぶことができます。
簿記科目のうち以下に挙げるものは、1年次から履修することができます。
「商業簿記ⅠA・ⅠB」 :日商3級程度の商業簿記
「商業簿記ⅡA・ⅡB」 :日商2級程度の商業簿記
「工業簿記Ⅰ・Ⅱ」 :日商2級程度の工業簿記
「商業簿記ⅢA・ⅢB」 :日商1級程度の商業簿記・会計学
「特別講義Ⅰ・Ⅱ
(上級原価計算)」 :日商1級程度の工業簿記・原価計算
このように日商3級から1級までそろっているので、自分のレベルにあった科目 を受けるとよいでしょう。ただし、次の3点に注意してください。
初めて簿記を学ぶ人は必ず商業簿記ⅠA・ⅠBから受講してください。簿記は基礎の積み重ねができないと、効率的に学習できません。
大学の授業は学問の習得が狙いであるため、日商簿記検定の試験対策に直結するようなことが教えてもらえるとは限らないので注意してください。検定に合格するためには、自分で日頃から学習を進めていく必要があります。
上記のうち日商1級程度の科目は、1級の範囲の全てはカバーしていません。1級は2級に比べて非常に範囲が広く難易度が高いためです。そのため、日商1級程度の科目では「2級から1級へとスムーズに進みやすくする」ための学習をしてもらいます。
3年生になってから履修できるようになる簿記科目は以下の通りです。
「簿記論Ⅰ・Ⅱ」 :複式簿記の本質の追求
この科目は複式簿記の本質の追求を狙いとしており、日商簿記などの資格とは直接に関係していません。しかし、簿記の原理に立ち返ることで、日商簿記初級から1級にとどまらず、公認会計士や税理士まで通用する本質的な学習を行うことができます。
財務会計科目では、適切な財務諸表を作成するための理論を学ぶことができます。
財務諸表は企業外部に公開され誰でも見ることができます。そのため、投資家や銀行などがその企業に投資・融資をするかを決めたり、あるいは経営者が自社と他社の財務諸表の比較を通して強み・弱みの分析に用いたりします。
簿記が財務諸表の「作成」に焦点を当てるのに対し、財務会計は「作成の理論」(なぜそのような会計処理となるのか)を中心とする点に大きな違いがあります。
2年次には、まずは財務諸表の基本である「日本企業の財務諸表」の理論を学ぶために以下の科目が設置されています。
「財務会計論Ⅰ・Ⅱ」 :主に日本の個別企業の財務諸表作成の理論を学びます。
3~4年次以降は、より発展的な学習を行います。具体的には以下の通りです。
「財務会計論Ⅲ」 :主に日本の企業グループの財務諸表作成の理論を学びます。
「国際会計論」 :日本と海外の財務諸表の違いを学びます。
「監査論Ⅰ・Ⅱ」 :財務諸表が適切に作成されているかをチェックする「監査」について学びます。
「財務諸表分析」 :財務諸表を分析して、企業業績を評価する方法を学びます。
税務会計科目では、主として税金の計算方法や法律の適用関係について学びます。税金はあらゆる経済取引に密接に関連しており、ビジネスにおいても必須の知識です。例えば、黒字を達成した企業は法人税等を納めなければいけません。
税務会計科目は3年次に配当されています。これらの科目は会計処理の基準と共通する部分が多いので、1〜2年次に配当されている簿記科目や財務会計科目でしっかり基礎固めをしてから学習するのが効率的だからです。
税務会計科目は以下の通りです。
「税務会計論」 :法人税の基本的な知識を学習します
「現代企業課税論」 :法人税の基本的な知識を前提に現代の企業取引に関する応用的な論点を学習します
「税法Ⅰ・Ⅱ」(※) :法人税に限らず税金に関する法律全般の知識を学習します
管理会計科目は、企業活動の計画・コントロールをするための方法や理論について学びます。
計画・コントロールとは、例えば経営者が期首に1年間の利益目標を立てて(計画)、期末にその達成度を評価する(コントロール)などのやり方で行われます。予算管理は代表的な計画・コントロールの手法です。
管理会計科目は3年次に配当されています。計画・コントロールを行うためには、製品原価(製品1個あたりのコスト)を知ることが不可欠です。製品原価の計算方法は1年次から受講できる「工業簿記Ⅰ・Ⅱ」および「特別講義Ⅰ・Ⅱ(上級原価計算)」で詳しく学ぶことができます。これらの簿記科目をあらかじめ受講しておくと、管理会計科目の理解が深まります。
管理会計科目は具体的には以下の通りです。
「管理会計論」 :経営計画、予算管理、原価計算の基礎を学びます
「戦略管理会計論」 :経営戦略と関連の深いさまざまな管理会計の手法や理論を学びます
ファイナンス科目は、投資家・銀行および企業が行う投資の意思決定に関わる技法や理論を学びます。
投資家・銀行は、どのような企業に資金を拠出するか(株式を購入したり、資金を貸し付けたりするか)を判断します。投資家は、配当金や株価の値上がり益で儲けを得ます。銀行は、支払利息を上乗せして借入金を返済してもらうことで利益を得ます。資金調達をする側の企業にとっては、これらの投資家や銀行の儲けはコストです。そのため企業は、資金調達にかかるコストを上回るような事業に投資しなければいけません。
これらの投資意思決定は、上記のさまざまな簿記・会計科目と繋がっています。投資意思決定には財務情報が必要ですが、財務情報がどのように作成されているかは簿記・会計科目群で扱われるからです。
ファイナンス科目のうち、「ファイナンス」は2年次から受講できますが、それ以外の科目は3年次から履修可となります。
「ファイナンス」 :証券市場による資金配分の仕組みと株価の分析方法について学びます。
「金融論」 :金融市場と日銀の金融政策及び銀行経営について学びます。
「コーポレート
ファイナンスⅠ・Ⅱ」 :証券投資の理論と企業の財務的意思決定について学びます。
会計ファイナンス・コースの科目群を重点的に履修することで、以下のような学習成果が得られます。
財務諸表が理解できるようになる。
日商簿記検定向けの学習ができる。
会計士・税理士の受験に向けた基本知識を習得できる。
会社経営に役立つ計画・コントロールの知識を身に付けた人材になれる。
資金調達や投資の仕組みを理解できるようになる。
会計とファイナンスは、企業活動から生じる財務情報を中心に扱う学問領域です。企業活動の理解なくして、財務情報の適切な活用はできません。そのため、「マネジメント・コース」や「 マーケティング・コース」の科目も積極的に受講するといいでしょう。特に、企業活動の方向性は経営戦略やマーケティングによって大きく左右されることから、「経営戦略論」や「マーケティングⅠ」を受講することを推奨します。
日商簿記検定、公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナーなど。詳しくは「資格学習」のページをご覧ください。
大学での講義は幅広く、どのように自らの長い人生におけるキャリア形成に活かせばよいかを想像することは、多くの人にとって簡単ではないことでしょう。
大学での学びをどのようにキャリアに結びつけるかを学ぶために、キャリア教育のための科目も設置されています。以下のページから見ていきましょう。