優れたレポートは、入念な情報収集に支えられています。
しかし、情報収集と言っても非常に幅広く、どこから手をつけてよいか焦点を定めづらいかもしれません。
ここでは、「経営学部生」にとって重要性が高いと考えられる情報とは何かについて、大まかな指針を提供していきます。
経営学部で出されるレポート課題をこなすためには、経営学の「理論」や実際に存在する「実践」に関わる情報収集が必要となることが多いはずです。
経営学の「理論」とは企業を分析するためのフレームワーク(枠組み)です。理論は、実践に関連する情報を収集し、分析していく上で重要な指針となります。
経営学部生のみなさんは、これから様々なフレームワークを学んでいくことになりますが、ここでは最も単純で基本的なものとして(1) 経営環境、(2) 経営戦略、(3) 財務業績の関係について説明しておきます(図1)。この枠組みを活用すれば、効率よく実践の情報を集められるでしょう。
図1 経営環境、経営戦略、財務業績の関係
経営環境とは、企業が戦略を立案するときに検討するさまざまな要因のことで、外部環境と内部環境があります。
外部環境の例:政府の政策、経済動向、社会の価値観、技術の進歩など
内部環境の例:競合他社にない独自の経営資源や企業風土など
外部環境は企業にとって「機会」にもなれば、「脅威」にもなります。例えば、技術進歩は新興企業にとっては機会となるかもしれませんが、古い企業にとっては脅威となるかもしれません。
内部環境は、企業の「強み」と「弱み」に結びつきます。例えば、競合他社にない独自の経営資源として大規模な生産設備があったとします。このような設備は製品を他の企業よりも安く大量に作ることを可能とする強みと言えますが、顧客ニーズの変化に合わせてさまざまな製品を開発しなければならないときには弱みとなるかもしれません。
経営戦略は、様々な定義がなされますが、ここでは企業が優れた業績を上げるために採用する方針としておきます。基本的には、企業は経営環境を考慮しながら自社に最適な経営戦略を立案します。
経営戦略論における「基本戦略」の理論に基づけば、戦略は3つに分けられます。
製品差別化戦略(優れた製品を高く売る)
コストリーダーシップ戦略(標準的な製品を安く売る)
集中戦略(特殊な顧客ニーズに特化する)
多くの企業はこれらの基本戦略のいずれかを採用し、競合他社よりも優れた業績を上げようとしています。
経営戦略を実行した結果として財務業績が生まれます。
財務業績は、次の4つに分けて考えることが基本です。
収益性:利益率の高さ
効率性:投資額に対する売上高の大きさ
安全性:倒産のしにくさ(負債が少ない、現金に余裕があるなど)
成長性:前年対比で売上高などの企業規模が大きくなるスピード
言うまでもなく、財務業績は会計によって測定されます。
経営環境と経営戦略が企業の生の姿に関わっているのに対して、財務業績はそれを会計数値に変換した結果です。したがって、経営環境と経営戦略は経営の「実像」、財務業績は経営の「写像」と対比することができるでしょう(※)。
※ 実際には財務業績だけでなく、顧客満足、ブランド、市場シェア、品質、サイクルタイム、従業員のスキルや知識などの非財務業績もあります。財務業績と非財務業績をまとめて「経営業績」と呼ぶこともできるでしょう。ですが、それはやや高度な議論となるので、ここでは財務業績だけに絞って議論を進めます。上述のような理論に基づく分類は、現実に行われている経営の実践に関わる情報収集をする基本的な指針となります。
例えば、非常に利益率の高い、収益性に優れる企業があったとします。
その理由を知るためには、その会社の経営戦略に関連する情報収集をすることが近道です。もしかしたら、製品差別化戦略を採用しているために、非常に高い価格で製品を販売することができているのかもしれません。
あるいは、非常に大きな売上高を上げている、効率性の高い企業があったとします。
このような企業の成功の理由を調べるとき、その会社がコストリーダーシップ戦略をとって、安く大量の製品を販売していると想定することができるかもしれません。
いずれの戦略を採用しているにせよ、その成功要因を知りたければ、外部・内部の環境について調べていくことになります。
このように、実践を調べるときに理論的な思考をすることによって、情報収集の効率を大きく高めることができます。
「情報収集」と言われたとき、おそらく多くの人が「ネットで検索」をイメージすると思います。
確かに、ネットで検索した情報は手軽に最新の情報をかき集めることができるので、関心のあるテーマについて概要を把握できるというメリットがあります。
しかし、ネットの情報はすぐに消えてしまうし、そもそもその情報が正しいかわからない場合が多くあります。
さらには、ネット情報は簡単に「コピペ」できるので、ついネットの内容を自分のレポートにそのまま貼り付けたくなります。これは慎重に行わないと剽窃(ひょうせつ)という犯罪行為にあたる恐れがあります。
※ 剽窃を避けるためには「引用」をする必要があります。引用についてはココで説明します。説得力のある主張をするためには、客観性の高い資料、具体的には、書籍、論文、雑誌記事・新聞記事があります。これらはいずれも、図書館で収集できます。
図書館の活用法や、書籍、論文、雑誌記事・新聞記事の探し方については、以下のリンクを確認してください。 図書館で大学における情報収集のためには、何よりも図書館を活用することが第一です。それでは、図書館の使い方を見ていきましょう。