教授挨拶

着任のご挨拶

千葉大学大学院薬学研究院 生化学 伊藤素行 

平成24年5月1日付けで千葉大学大学院薬学研究院 生化学教授を拝命いたしました。生化学研究室は、昭和26年、薬学部発足当初から存在する伝統ある研究室です。初代 湊顕教授、廣瀬聖雄教授、小林弘教授に引き続き、4代目として担当させていただくことになります。伝統研究室の名に恥じぬよう常に精進していきたいと思っております。

  私は、大阪大学大学院薬学修士課程(薬化学:今西武研究室、現:生物有機化学分野)を修了後、大日本製薬(現:大日本住友製薬)に入社しましたが、生命科学研究に取り組みたいという思いから、平野俊夫先生(医学部、現:大阪大学総長)の研究室の博士課程に進学しました。そこで、分子生物学、生化学、ノックアウトマウス作製など生命科学の研究手法を学び、免疫応答や個体発生に関わるシグナルタンパク質の研究を行いました。博士課程卒業後、大学院時代に携わったシグナル伝達や個体発生研究をさらに発展させたいと考え、当時、モデル動物としては新参であったゼブラフィッシュに着目しました。ゼブラフィッシュは、遺伝学手法を使いた新規遺伝子ハンティングや器官形成解析に優れたモデルです。博士研究員として米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)にて、ゼブラフィッシュをモデルとして、初期神経形成にかかわる、iroquois, Tcfなどの転写因子、Notchシグナルの新規制御因子であるMibユビキチン化酵素の研究を行いました。平成15年に帰国し、名古屋大学大学院理学研究科にて特任准教授、准教授として細胞シグナル伝達制御による個体の器官形成の分子基盤についての研究を進めてきました。千葉大学薬学研究院では、これまでの研究手法をさらに発展させ、個体内での細胞移動や細胞系譜のイメージング、哺乳類培養細胞を用いたNotchシグナルのハイスループット活性測定、高活性リガンドタンパク質の創出などを通じて、細胞間シグナルの“生理機能~分子メカニズム解析~人為的操作”の統合的研究を行いたいと考えています。

 これまで、私は薬学部卒業後、医学部、理学部と異動し、薬学部には卒業以来約20年ぶりに戻ってきたことになります。この20年の間に6年制の導入など薬学部にも大きな変革がありました。しかしながら、昨今のiPS細胞革命のように、生命科学分野での基礎研究の重要性はますます高まっています。生化学研究室の責務は、日本のみならず世界で活躍する生命科学・薬学研究者の育成であり、この目標に向けて研究・教育に邁進致したいと思います。

ゼブラフィッシュアダルト(約3cm)と受精後1日胚(約1mm) 


伊藤 素行 (いとう もとゆき)

略歴

2012年5月~ 現在  千葉大学大学院薬学研究院 教授

2011年4月~2012年5月 名古屋大学理学研究科生命理学専攻 准教授

2006年11月~2011年3月 名古屋大学高等研究院 特任准教授

2003年7月~2006年10月 名古屋大学大学院理学研究科COE特任助教授

1999年4月~2003年6月 米国NIH研究員

1996年4月~1999年3月 大阪大学大学院医学部 学術振興会研究員 DC2

1994年4月~1998年3月 大阪大学大学院医学部博士課程 医学博士

1993年11月~1994年3月 大阪大学大学院医学部研究生

1993年4月~1993年10月 大日本製薬研究員

1991年4月~1993年3月 大阪大学大学院薬学研究科修士課程

1987年4月~1991年3月 大阪大学薬学部学部生

1987年3月 奈良学園高校卒業

所属学会

日本分子生物学会

日本発生生物学会

日本薬学会

国際発生生物学会

アメリカ神経科学会