・なぜ研究に使うか?
ゼブラフィッシュの稚魚は透明で体の構造を見るのに適しています。また多産で世代時間(約3ヶ月)が短いことから順遺伝学に適しており、たくさんの変異体がとられています。 加えてMorpholinoと呼ばれるオリゴやTALEN,ZFNといった遺伝子改変技術で遺伝子機能を抑制できます。さらに特定の細胞で任意の遺伝子を働かせるトランスジェニックラインの作製も比較的簡単に行えます。
以上のような特性に加えてゼブラフィッシュは脊椎動物であることからヒトと体の構造や発生において多くの共通点があり、脊椎動物の体がどのようにつくられるのかを研究するための良いモデル生物となっています。
・ゼブラフィッシュを使って生化学研究室で行っていること
1. 神経発生におけるNotchシグナルの働き
Notchシグナル は脊椎動物の胚発生の様々な局面で繰り返し働き、細胞の運命決定や増殖の制御に関わっています。しかしながらそのすべてがわかっているわけではなく、不明な点も多々あります。たとえばゼブラフィッシュでは複数のNotchレセプターとリガンドがありますが、これらがどのように使い分けられているかといった問題があります。生化学研究室では上述した変異体や遺伝子抑制技術、トランスジェニックフィッシュ、後述の行動解析などを用いて、特に神経細胞の運命決定に焦点を絞って研究を行っています。
2. 胚発生における細胞移動の制御
胚発生において固有の形を持った器官や組織が作られるためには細胞が移動することが必須です。しかしながら多数の細胞が規則正しく移動するメカニズムについてはわかっていないことが多々あります。そこで生化学研究室ではゼブラフィッシュの側線原基という細胞集団の移動をモデルとしてトランスジェニックラインを用いたライブイメージングなどの手法により、細胞移動の分子的なメカニズムについて解析を行っています。
3. 行動解析
生化学研究室ではハイスピードカメラやリアルタイムトラッキングシステムを用いてゼブラフィッシュの行動解析も行っています。これにより遺伝子変異や薬剤暴露がゼブラフィッシュの行動にどのような影響を与えるかを解析しています。
4. 薬理作用の解析
ゼブラフィッシュの飼育水中に薬を入れることにより、その薬の効果や副作用を容易に検討できます。生化学研究室では前述の行動解析などと組み合わせて薬理作用の解析を行っています。