学校におけるICT環境整備に伴い、児童生徒が学校生活の中でICTを活用する機会が多くなることから、児童生徒がICTを活用する際の健康面への影響については十分な配慮が必要です。以下は、児童生徒が学校においてICTを利用する際の改善方策の例です。各学校や教室の環境に応じて改善に取り組むことが求められます。
デバイスの画面が見えにくいと、児童生徒の目の疲労が増し、円滑な授業の実施に支障をきたす恐れがあります。国のガイドラインに掲載された調査では、1クラスのうち半数弱の児童生徒がデバイスのモニター画面が反射していたと回答していました。このような状況を考慮すると、モニター画面の反射を極力抑えられるように、教員が日々の授業の中で配慮する必要があります。
児童生徒の姿勢が悪い場合は、1人1台端末の置き方を工夫しても、画面が見えにくいため、まずは児童生徒の姿勢がよくなるように指導します。
机と椅子が児童生徒の体格に合っていないと姿勢が悪くなるので、机と椅子の高さを児童生徒の成長も考慮して適切に調整します。
教科書、ノートに加えて1人1台端末を使って授業を行う場合、机の面積が狭いために児童生徒が無理な姿勢で作業を行うことがあります。授業の進行に応じて、利用しない教材・教具を随時片付けるように指導します。
児童生徒の姿勢がよい場合は、児童生徒の視線と1人1台端末の画面を直交する角度に近づけることで画面が見やすくなるため、そうなるようにモニターの角度を調節するよう指導します。
座席位置によって照明の具合が異なることから、画面に照明が反射しないように、児童生徒が自分で1人1台端末の画面の角度を調整するよう指導します。
1人1台端末の画面に反射防止用フィルターを取り付けることにより、画面の反射を軽減できるだけでなく、破損時の安全性の向上も図れます。
画面の明るさを設定して画面を見やすくするなど、児童生徒自身で操作性の向上を図れるように配慮します。
発表、グループ作業などにより児童生徒が同じ姿勢を長時間続けないようにする、長時間にわたりモニター画面を児童生徒が注視しないようにするなど、目や身体の疲労を軽減するように授業の実施方法を工夫することも考えられます。
暗いところ、あるいは極端に明るいところでICTのモニター画面などを見ると、児童生徒の目の疲労を早めて円滑な授業の実施に支障をきたす可能性があるため、教室内の明るさを均一にすることが必要です。しかし、教室の明るさは天候、時刻、季節などによって影響を受けた場合、適切な明るさの確保・維持が難しいことがあるのが現状です。現在の環境の中では、カーテンによる窓からの映り込みの防止や、照明環境の工夫により映り込みを防止することが考えられています。
モニターを授業で利用する場合は、明るさを調整できるように、通常のカーテンだけでなく、厚手のカーテンや遮光カーテンのように太陽光を通しづらいものを設置します。
教室によっては、廊下側からの光によってもモニター画面への映り込みが発生する場合があるため、廊下側にもカーテンを設置するなど、状況に応じて適切に対応します。
目の疲労の軽減の観点から、基本的には照明は点けて利用するのが望ましいですが、周辺の照明を調整することで、モニターへの光の反射が軽減することもあるため、状況に応じて適切に対応します。
モニターの映り込みを軽減するために、照明設備を改修する際には、天井の照明はむき出しにせず、間接照明などの反射防止対策を施すことも考えられます。
学校における1人1台端末の本格的な運用が始まり、また同時にデジタル教科書・教材の活用など学校や家庭におけるICTの使用機会が広がることを踏まえ、視力や姿勢、睡眠への影響などについ
て、児童生徒が健康に留意しながら活用するための指導や配慮をすることが大切です。感染症の影響による臨時休業等の非常時における児童生徒の学びの継続の観点からも、端末を持ち帰り、自宅等での学習においてもICTを活用することは有効です。また、平常時から、持ち帰ったデバイス等を活用した自宅等での学習を行うことは、家庭学習の質を充実させる観点や、臨時休業等の非常時における学びの継続を円滑に行う観点からも有効です。児童生徒に対し、安全・安心に利用するための使用 ルールなどを指導するだけでなく、令和4年3月3日付け文部科学省「GIGAスクール構想の下で整備された学校における1人1台端末等のICT環境の活用に関する方針について(通知)」における「学校設置者・学校・保護者等との間で確認・共有しておくことが望ましい主なポイント」等を参照の上、保護者や地域の方々など関係者にも理解と協力を得ながら、児童生徒が安心・安全に端末を利用できる環境を整えることが重要です。