各教科等の指導におけるICT活用の意義とその必要性については、現行学習指導要領では、次のように示されています。
1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
(3)第2の2の(1)に示す情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネット ワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また、各種の統計資料や新聞、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
小・中学校学習指導要領(平成29年告示)第1章 総則 第3 教育課程の実施と評価より
情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力であり、各教科等の特質を生かし教科等横断的な視点から育成するものです。これを確実に育んでいくためには、各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに、そうして育まれた情報活用能力を発揮させることにより、各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつなげていくことが一層求められます。加えて、児童生徒が、今後一層人々のあらゆる活動に浸透していく情報技術を、手段として学習や日常生活に活用できるようにするためにも、各教科等においてこれらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが大切です。
また、現行学習指導要領では、個に応じた指導の充実を図るに当たりICTを活用することとしています。児童生徒の基礎学力の育成について課題も指摘される中、ICTを活用して個に応じた指導の充実を図ることは、基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策の一つとして有効であると考えられ ます。
各教科等の指導でICTを活用する際の活用主体としては、1)指導者である教員が活用する、2)学習者である児童生徒が活用する、という2点が考えられます。
1)は、教員が学習指導の準備や評価のためにICTを活用したり授業においてICTを活用したりすることなどであり、2)は、児童生徒が授業等で自らの意思でICTを活用することです。各教科等においてICTを活用する際には、学習過程を意識することが重要です。学習過程を踏まえ、効果的にICTを活用した学習活動としては、例えば、一斉に学習する場面で、児童生徒に学習の課題を明確に意識させることで、個別学習な どのその後の学習活動における学習を深めることができたり、個別学習を行う際には、その個別学習を踏まえた協働学習を行うことを意識させておくことで、児童生徒は見通しをもって個別学習に取り組むことができたりすると考えられます。
単にICTを指導過程に取り入れるだけで、楽しく学ぶことができていても、情報活用能力が高まったり、教科等の内容理解が深まったりするわけではありません。各教科等において育成すべき資質・能力を見据えた上で、各教科等のねらいやICTの特長などを踏まえて、ICTを適切に活用する場面を考えた実践を行うことが重要です。ICTを活用する際は、一斉学習、個別学習、協働学習などを個別の学習場面として捉えるのではなく、教員はそれぞれの学習場面で児童生徒の学習状況を適切に把握し、児童生徒の学びを深め るためにICTを活用する、という視点が重要です。