執筆者:上山卓真(CTO兼CAIO)
KDDI×アクセンチュアのDX専門ベンチャー「株式会社ARISE analytics」に約7年間在籍。データサイエンティストとして、約200名の副事業部門長を担い、データ・AIの専門家として活躍
bloom株式会社にてCTO兼CAIOとして、データ・AIを含むテクノロジー全般の活用を推進
1. 本記事のサマリ
AIX事業部では複数の社内システム開発プロジェクトが同時進行する中、開発リソースの確保とケイパビリティの向上が課題となっていました。この課題に対し、AnthropicのClaude CodeとOpenAIのCodex CLI(コーディングエージェント)を組み合わせた「AI駆動開発」を導入しました。Claude Codeの高速なコーディング能力とCodex CLIの高品質なレビュー機能を役割分担させることで、スピードと品質を両立。Teamプランの活用によりセキュリティも担保しながら、非エンジニアでも一定のアプリケーション開発が可能になりました。
従来であればエンジニアの手が空くのを待つしかなかったプロジェクトも、AIの支援を受けることで着手できるようになり、組織全体の開発アジリティが向上しています。
課題: 開発リソースとエンジニアのケイパビリティが不足しており、社内システム開発のスピードが上がらない。外注に頼ると費用とコミュニケーションコストがかさみ、スピード感のある開発が難しい。
解決策: Claude CodeとCodex CLIを組み合わせたAI駆動開発を導入し、コーディングとレビューを役割分担させて効率化。設計段階からAIを活用し、開発ライフサイクル全体を効率化。
成果: 非エンジニアでもシステム開発が可能になり、開発工数を50〜70%削減。セキュリティを担保しながら内製化を実現。浮いた時間を要件精査やユーザーテストに充てることで、開発全体の質も向上。
2. こんな課題はありませんか?
・開発したいシステムはあるが、エンジニアが足りない。 ・社内にプログラミングの知見がなく、外注に頼らざるを得ない。 ・AIコーディングツールを使いたいが、セキュリティ面が心配。 ・AIに任せきりにするのは不安で、品質をどう担保すべきかわからない。 ・エンジニアの採用が難しく、開発体制の強化が進まない。
これらの課題は、多くの企業が直面している共通の悩みです。特に、事業の成長スピードに開発リソースが追いつかず、やりたいことがあっても実現できないというジレンマを抱えている組織は少なくありません。
本事例では、これらの課題をAI駆動開発で解決した方法を、導入から成果まで詳しくご紹介します。AIコーディングエージェントをどのように組み合わせ、どのような運用ルールで品質とセキュリティを担保しているのか、実践的なノウハウをお伝えします。
3. 導入の背景・課題
bloom株式会社 AIX事業部では、面談フィードバックシステムや求人レコメンドシステムなど、複数の社内システム開発プロジェクトが同時に走っています。事業の拡大に伴い、業務効率化のためのツール開発や、顧客向けサービスの機能拡張など、開発ニーズは日々増加しています。しかし、開発を推進するうえで以下のような課題を抱えていました。
・開発リソースが限られており、着手できないプロジェクトが複数存在していた。 ・エンジニアのスキルにばらつきがあり、コードレビューの負荷が高かった。 ・外注に頼るとコストがかさみ、社内にノウハウが蓄積されにくかった。
こうした状況を打開するため、AIコーディングエージェントを活用した「AI駆動開発」というアプローチを検討しました。単にAIにコードを書かせるだけでなく、複数のAIツールを組み合わせて品質を担保しながら開発スピードを上げる手法です。ChatGPTやClaudeといった汎用的なAIチャットではなく、開発環境と直接連携できる専用のコーディングエージェントを選定することで、より実践的な開発支援を実現しました。
AI駆動開発のコンセプトは、AIを「もう一人のエンジニア」として活用することです。人間のエンジニアがAIに指示を出し、AIが高速にコードを生成し、別のAIがそれをレビューする。この協調体制により、人間の判断力とAIの処理能力を組み合わせた効率的な開発が可能になります。
4. 導入したAIソリューション
今回のAI駆動開発では、AnthropicのClaude CodeとOpenAIのCodex CLIという2つのAIコーディングエージェントを組み合わせて活用しています。どちらも単体で強力なツールですが、それぞれの特性を活かして役割分担させることで、スピードと品質の両立を実現しました。
4-1. なぜこれらのツールを選んだのか
≪Claude Codeを選んだ理由≫
Claude Codeはターミナル上で動作するAIコーディングエージェントです。VSCodeやCursorなどのエディタ拡張ではなく、コマンドラインから直接操作できるため、既存の開発ワークフローに自然に組み込めます。選定の決め手となったのは以下の点です。
・コーディングのスピードが非常に速く、反復的な修正作業もストレスなく進められる。体感として、人間が書くよりも数倍速いペースでコードが生成される。
・ターミナルと直接連携し、ファイル操作やGCPコマンドの実行など開発環境と密接に統合できる。gitの操作やビルドコマンドの実行もAIに任せられる。
・TeamプランではSOC 2認証を取得しており、入力データがモデル学習に使用されない。業務で安心して利用できる。
≪Codex CLIを選んだ理由≫
OpenAIのCodex CLIは、高度なコーディング能力と出力品質の高さが特徴です。特にコードの論理的な整合性を検証する能力に優れており、レビュー用途に適しています。選定の決め手となったのは以下の点です。
・複雑なロジックの実装や既存コードとの整合性チェックに優れている。変数のスコープや型の不整合など、細かい問題も検出してくれる。
・コードレビューの観点で、見落としやすいエッジケースを指摘してくれる。境界値の処理やエラーハンドリングの漏れなど、人間が見落としがちな部分を補完できる。
・TeamプランでSOC 2認証を取得しており、セキュリティ面で安心。Claude Codeと同様に、業務利用に耐えうるセキュリティ基準を満たしている。
4-2. 使用技術の全体像
・Claude Code(メインのコーディング担当)
・OpenAI Codex CLI(コードレビュー担当) *Teamプラン(両ツールとも、セキュリティ担保のため)
この組み合わせにより、高速な開発と品質チェックを両立させています。
4-3. 導入の流れ
両ツールのTeamプランを契約し、セキュリティポリシーを確認。情報システム部門と連携して、社内基準に適合することを検証した。
社内ポリシーに基づいた利用ガイドラインを策定。どのようなデータを入力してよいか、どの工程で人間の確認が必要かを明文化した。
小規模なプロジェクトで試験導入し、役割分担を検証。実際に使いながら、最適な使い方を模索した。
本格運用を開始し、複数プロジェクトに展開。成功事例を社内で共有し、活用範囲を広げている。
5. 具体的な取り組み内容
5-1. Claude CodeとCodex CLIの役割分担
2つのツールにはそれぞれ異なる強みがあり、その特性を活かした役割分担を行っています。
≪Claude Codeの役割(メインコーディング)≫
Claude Codeは高速なコード生成が強みです。新機能の実装やバグ修正など、日常的なコーディング作業の大部分を担当しています。指示を出してから生成されるまでの時間が短く、何度も修正を重ねるような作業でもストレスなく進められます。
≪Codex CLIの役割(コードレビュー)≫
Codex CLIは品質の高さが強みですが、処理速度はClaude Codeより遅めです。この特性を踏まえ、コードレビューの役割で活用しています。Claude Codeが生成したコードをCodex CLIに渡し、ロジックの妥当性やエッジケースの考慮漏れがないかを確認します。
5-2. 設計・開発フローの確立
AI駆動開発は、コーディングだけでなく設計段階から活用しています。
≪設計フェーズ≫
要件や課題をClaude Codeに伝えて、システム設計やアーキテクチャを検討
設計案をCodex CLIでレビューし、考慮漏れや改善点を洗い出す
人間が設計内容を最終判断し、開発フェーズへ移行
≪開発フェーズ≫
確定した設計をもとに、Claude Codeでコードを生成
生成されたコードをCodex CLIでレビュー
指摘事項があればClaude Codeで修正
人間が最終確認してマージ
このサイクルを設計・開発の両フェーズで繰り返すことで、AIの力を最大限に活かしながら品質を担保しています。
5-3. セキュリティと情報管理の徹底
AIコーディングエージェントを業務で活用する際、セキュリティと情報管理は避けて通れません。弊社では以下の対策を実施しています。
・Claude Code、Codex CLIともにTeamプランを活用。入力データがAIモデルの学習に使用されない仕組みを利用。
・両サービスともSOC 2認証を取得しており、セキュリティ管理体制が第三者機関によって検証済み。
5-4. 人による最終判断の徹底
AI駆動開発において最も重要なのは、「最終的な判断は人間が行う」という原則です。弊社では、すべての工程で人間が関与しています。
・設計・要件定義の段階で人間が主導権を持ち、AIに何を作らせるかを決定。
・コードレビューではCodex CLIのレビューに加えて、人間の目による確認を必ず実施。
・本番環境へのデプロイ前には、最終的な動作確認と承認を人間が実施。
AIが生成したコードであっても、本番環境に反映する責任は人間にあります。この責任の所在を明確にすることで、AIを安心して活用できる体制を構築しています。
5-5. 工夫・苦労した点
なお、現時点でAI駆動開発を適用しているのは、個人情報などの重要な機密データを扱わないシステムに限定しています。社内の業務効率化ツールやプロトタイプ開発など、リスクを抑えた領域から段階的に導入を進めています。
Claude Codeは権限が強く、ファイルの作成・編集・削除やシェルコマンドの実行など、開発環境に対して広範な操作が可能です。この「権限の強さ」は便利な反面、意図しない操作が実行されるリスクもあります。そのため、実行前の確認を徹底する運用ルールを設けました。加えて、GCP(Google Cloud Platform)の組織ポリシーを厳格に設定し、AIが実行できる操作範囲を制限しています。また、本番環境への反映前にはセキュリティレビューを義務付けており、AIが生成したコードに脆弱性がないかを必ず確認する体制を整えています。
また、2つのツールの使い分けについても試行錯誤がありました。当初はどちらのツールにどのタスクを任せるか明確でなく、効率が上がらない時期もありました。それぞれの特性を理解し、役割分担を明確にしたことで、開発効率が大幅に向上しました。
特色の異なるAIツールを適材適所で組み合わせることは、品質向上において重要なポイントでした。Claude Codeは高速な生成能力を活かしてコーディングの主力を担い、Codex CLIは慎重かつ論理的な検証能力を活かしてレビューを担当する。この役割分担により、単一のツールでは実現しにくい「スピードと品質の両立」が可能になりました。
具体的には、Claude Codeが生成したコードに対してCodex CLIが異なる視点からチェックを行うことで、見落としやすいエッジケースや潜在的なバグを早期に発見できるようになりました。異なるモデルが持つ得意領域を掛け合わせることで、人間のレビュアーだけでは気づきにくい問題も検出でき、コード全体の堅牢性が向上しています。また、AIツール同士の相互チェック体制を構築したことで、人間のレビュー負荷も軽減され、より本質的な設計判断に集中できるようになりました。
6. 成果・効果
AI駆動開発の導入により、弊社では顕著な効果が得られました。
導入前は、開発工数は従来水準のままで、開発に関われるのは基本的にエンジニアに限られ、コード品質も個人の力量に左右されがちでした。一方、導入後は開発工数を50〜70%削減でき、非エンジニアも開発に参加できる体制へと広がりました。あわせて、AIレビューによって品質のばらつきが抑えられ、コード品質も安定して向上しています。
6-1. 定性的な効果
・非エンジニアでも一定のアプリケーション開発が可能になった。プロトタイプの作成や簡易なツール開発であれば、AIの支援を受けながら自力で進められるようになっている。
・従来は一行ずつコードを書いていた部分がAIによる一括生成に置き換わり、実装フェーズの時間が大幅に短縮された。
・削減できた時間を、要件の精査やユーザーテストなど、より付加価値の高い工程に充てられるようになった。
・AIが生成するコードや設計案を日常的に目にすることで、開発者自身の技術知識が格段に向上した。ベストプラクティスや効率的な実装パターンを自然と学べる環境が生まれている。
7. まとめ:こんな企業・チームにおすすめ
Claude CodeとCodex CLIを組み合わせたAI駆動開発により、開発リソース不足の課題を解決し、非エンジニアでもシステム開発に参加できる体制を構築できました。
本事例は、以下のような課題を抱える企業・チームにおすすめです。
・開発リソースが不足しており、プロジェクトが滞っている。
・エンジニア以外のメンバーも開発に参加できる体制を作りたい。
・AIコーディングツールを使いたいが、セキュリティ面が心配。
・AIに任せきりにするのではなく、品質を担保しながら活用したい。
7-1. 成功のポイント
・Claude Codeの高速性とCodex CLIの品質を、役割分担で両立させたこと。
・TeamプランとSOC 2認証取得サービスの利用でセキュリティを担保したこと。
・すべての工程で人間が最終判断を行う体制を徹底したこと。
7-2. 今後の展開
・AI駆動開発の社内ノウハウをさらに蓄積し、他プロジェクトへ展開。
・新しいAIコーディングツールの動向をウォッチし、より効率的な組み合わせを検証。
・非エンジニアの開発参加をさらに促進し、内製化の範囲を拡大。