出力抑制激増、再エネ大崩壊(後編)

    その原理を現状の出力抑制から学び、

抑制実績を踏まえて、対策を提言❣❣

後編;抑制完全解消、世界に展開   

後  編  目  次

Ⅲ.1 何故、日本にだけ出力抑制が発生か?

Ⅲ.2 太陽光発電特性知らずして、抑制解消不可能

  Ⅲ.3 出力抑制未解決の儘で、主力電源化不可能

💀  💀  再エネが崩壊するだけ  💀  💀

Ⅲ.4 ❤ 出力抑制完全解決は、これしかない ❤ 

Ⅲ.5 HBBS採用は、電力トップの決断次第

Ⅲ.6 HBBS導入後、洋上風力も崩壊

Ⅲ.7 最大効率の脱炭素化に必要なこと 

.8  再エネ崩壊に繋がる誤解と陰謀  

Ⅲ.9  日本の再エネ・システムを世界に展開


 (注)①経産省は「出力抑制」を「出力制御」と表現、我々は「出力抑制」と表現する

②「太陽光発電」、「風力発電」を単に「太陽光」、「風力」と呼ぶことにします。

Ⅲ.1 何故、日本にだけ出力抑制が発生か?

(1)ドイツやフランスには隣接国有り、日本は離れ島

ドイツは、9か国の陸続き隣国が有り、フランスは、6か国と隣接している。

その隣接国と連携線経由で多い日では一日当たり0.3TWhの電気をやり取りしている。この量は日本の夏最大ピーク日の最大需要量の全日本合計値の2倍に相当する。この事は前編(Ⅰ.3)の「(1)日本は地政学的にも出力抑制多発地」に記述済みであるが、この隣接国とのやり取りに自国の供給過剰分も、不足分も含まれているため、出力抑制が発生することは無かった。

日本には陸続きの隣接国が無いため供給過剰処理は自国内だけでやらなければならないことが、出力抑制が多発する第一の理由であった。

出力抑制多発の第2の理由は、日本を10地域に分割して少ない需要の範囲内で、供給過剰の対応をしている事である。その結果、昨年23年度1年間に、多い所では136回、全国計で312回抑制された。もし、昨年、全国の需要を1本化して供給過剰の判定をして系統制御していれば、抑制はごく僅かしか発生しなかったと推定できる。何故なら総需要の方が総供給量より多かったから。

現在は太陽光中心の再エネ導入が進み、既に74GWが稼働している。さらに未稼働だが受付ている太陽光が50GW在る。30年頃までは太陽光が原因の出力抑制が多発する。

35年過ぎると洋上風力が本格稼働する。風力は夜も発電するので、35年過ぎには、夜も出力抑制となるだろう。その条件で将来の供給過剰の量を計算した。結果(下表)を見ると35年過ぎは、日本全国で供給過剰になるのが読み取れる。

日本の再エネは太陽光に始まり、太陽光で滅亡、さすが"日の本"らしい生涯だった!!

(2)独逸や仏国は風力が主力、太陽光は脇役

   理由1.風力発電に適した風の「偏西風」が豊富に得られる。

偏西風とは北緯または南緯30度から60度付近にかけて中緯度上空にみられる定常的な西寄りの風で、熱帯地域の熱と極地域の冷却の間の層厚の違いにより発生する。偏西風は高度とともに強くなり対流圏界面付近で風速が最大となり特に、冬季には対流圏界面付近で毎秒100mに達し、ジェット気流とよばれる。また、天候を西から東に変える原動力でもある。赤道と北極の温度差が大きくなると偏西風は南北に蛇行するようになる。

偏西風のおかげで北欧の風力発電の設備利用率は60パーセント程度を達成しており、日本の風力発電の設備利用率30パーセント程度を遥かに凌駕している。


理由2.遮る山岳無し・・・どこでも風力発電最適地


ヨーロッパの地形は山岳が少ない。特に西から東に吹く偏西風を遮ることになる西側の山岳は皆無である。中でも、ベルギー、オランダ、ドイツ、デンマーク、ポーランドにまたがる北ヨーロッパ平野には標高が海抜0mから200mで、それ以上に高い山岳など存在しない。(下図)

ドイツ首都ベルリンの名称の由来は、スラブ語の「湿地帯」と言われていることを見てもよくわかる。ドイツの面積は日本とほぼ同程度であるが、山岳がほとんどないため全てが可住地となる。日本の可住地面積は実際の面積の3分の一程度だから、可住地レベルで日本とドイツを比較すると、日本はドイツの3分の一ということになる。だからドイツの風力発電最適地は日本の3倍になる。

 (参考)日本の場合、風力発電に向いている場所は、東北の一部と北海道の一部で、落雷の被害の少ない場所とされている。最近は、適地が少ないため、洋上風力 へ進出し始めている。洋上は陸上に比べると発電量は2倍多いそうだが、導入コストは8倍かかると言われている。

    理由3.ドイツでは台風は皆無、落雷も微小


台風に相当する暴風はヨーロッパには存在しない。

世界中を見ると、フィリッピンから台湾と日本を襲う台風があり、カリブ海とメキシコ湾から米国を襲うハリケーンがあり、インド洋からインドを襲うサイクロンがある、ヨーロッパにはそのような言葉すら存在しない。

落雷も日本には多いが、ヨーロッパは日本ほど多くは無い。

日本では、台風と落雷で毎年多くの風力発電が被害を受けている。洋上風力発電を新設する時には当然台風や落雷のことを考慮に入れて、ヨーロッパのものより頑丈な ものを作らなければならない、逆に、ヨーロッパでは台風などを考慮に入れた対策が不要なため、安いコストで導入可能である。

理由4.風力の発電量は冬が多く、電力需要に一致


下図を見て分かることは、フランスでも電力需要は冬が多く、夏は少ない。

従ってその需要を満たすのは、冬に多く発電する風力発電が最適である。風力発電の発電量は、風まかせでその日によって大きく異なってくる。下図はドイツに似たフランスの発電実績だが、風力発電はその日その日で大きく異なっていることが分かる。月別平均値で見ると冬が多く、夏は少ないことも分かる。逆に、太陽光発電は夏が多く、冬は少ないことも分かる。風力と太陽光はお互いを補う、絶妙な組み合わせとも見える。

出典:http://clients.rte-france.com/lang/an/visiteurs/vie/prod/realisation_production.jsp

(フランスのグラフの横軸は、'日'だけで時間は含まない。ドイツのグラフは'日・時間')

理由5.欧州の太陽光発電は発電効率が悪い


夏至の日にはベルリンは一日の昼時間が16時間50分で、リスボンより2時間ほど長く、この2時間は月換算で60時間に相当するが、7月の日照時間はリスボンより月間で130時間も少ない(図1.9)。

これは何を意味するか?

鹿児島はどうであろうか?鹿児島は6月に日照時間が急落しているのは、6月の梅雨の時期で雨のためである。鹿児島は日本でも最も雨の多い地区である。5月から8月までは日照時間は南欧に比べると少ないが、それ以外の月は南欧にほぼ同じ日照時間である。

 主要都市の夏至の日(図1.11)と冬至の日(図1.10)の南中時の太陽高度を計算した。

結果は上図の通りである。

ベルリンの冬至の日の高度14.1度は、日本の東京で、冬至の日の午前8時30分時の高さである。 この時間は東京では、まだまだ寒い時間帯である。 この時間は東京では、まだまだ寒い時間帯である。

発電効率理由; 冬至の時の太陽高度が低い(日射強度弱)ため、一日の発電量が少ない。

Ⅲ.2 太陽光発電特性知らず、抑制解消不可能

特性 Ⅰ;上へ上へと伸びる「タケノコシンドローム」


太陽光発電の導入容量が増えると、発電量は南中時を目指して、上へ上へと伸びて行く。決して横には広がらない。タケノコは一日に30センチ伸びる。猛烈な勢いである。

伸びきった「タケノコ」は、「天井」(平均日需要)を突き抜け、更に伸びると、屋根(ピーク日需要) も突き抜ける。

突き抜けた「タケノコ」は切らざるを得ない。

出力抑制の原因の全てが、このタケノコシンドロームである。出力抑制解消は、このタケノコ狩りが必須である。

特性Ⅱ;電力需要を太陽光だけで供給するには、

南中時の需要の3倍以上が必要。

一日24時間の電力需要(需要曲線で囲まれた面積部分)を、太陽光発電(双曲線面積)だけで供給する場合、南中時の太陽光発電量は、同時刻の電力需要の3倍が必要となる。

例えば、閑散日の南中時需要は2,485万kWであるが、閑散日一日の需要と同じ量を発電出来る太陽光発電はステップ2の曲線となる。その曲線の最大発電量は7,922万kWであり南中時需要の3倍以上となる。

同様に、ピーク日の南中時需要4,947万kWの3倍近い12,675万kWの太陽光発電となる。注意すべきは、3倍は晴天日の場合で、実際の雨や曇りを含めると、晴天日の4〜5倍が必要となる。

問題は、需要を超えると出力抑制として、発電させてもらえないことだ。脱炭素化を実現するためには、火力発電を中止し、全てを再エネで供給し、需要ラインの3倍を供給しなければならない。需要を超えたからと言って、抑制してしまうのは矛盾した行為である。

特性 Ⅲ;24時間放電時の時間当たり放電量は、

南中時最大発電の3分の1~4分の1の出力になる。

太陽光発電が晴天日に発電した一日分を一旦蓄電し、発電終了後に24時間かけて均等放電すると、1時間当たりの放電量は、南中時の最大発電量の3分の1~4分の1になるという、特性がある。日照時間が多い夏至の頃は3部の1で、冬至の頃は4分の1になる。

例えば、下図のStep1の曲線(白線)は最大値が2400万kWで24時間放電では847万kW、Step2(赤線)では最大が7,922万kWで、24時間放電では2,683万kWとなる。Step3の発電量を24時間かけて放電すると、1時間当たりの放電量は4,294万kWとなる。この放電量では、南中時の需要を超えることは無いが、早朝の低需要時間帯には、需要を超えることがあるので対策が必要となる。

昨年(23年)4月に、20回の出力抑制を実施した九州の全太陽光に24時間放電を採用していれば、抑制は全く発生してなかった。(下図)

九州はこの時、20回の出力抑制実施、太陽光発電の抑制は26.2%、風力は10.6%も抑制され、発電収入が減少していた。

この抑制解消で発電業者は売電収入を確保できるというメリットがあるが、実は一番利益を得るのは火力発電を稼働させている電力会社である。再エネの発電が増えたことで火力の稼働が少くなる。九州の4月の例では、1,465GWh減少する。この減少分を金額に換算すると4月1ヶ月間だけで307~630億円になる。

これだけコスト削減が出来るなら、電力会社が蓄電池コストを支払ってでも蓄電池導入を進めるだろう。(?)

系統制御を行う電力会社にとっては、火力の燃料コストの削減のメリット以外に多くのメリットがある。例えば、接続電圧が3分の一になるので、系統へ接続可能な容量が3倍になったと同じ事になり、系統容量拡大コストが大幅に削減できるメリットがある。また、太陽光は前日発電した電気を放電するので、当日の天気急変で発電量が急変する危険性は無くなり、安定した系統制御ができる。

また、出力抑制が無くなるので、抑制処理関連の運用コストが大幅解消となる。

電力会社にとって最大のメリットは、原発稼働させても太陽光に抑制激増の迷惑を掛けなくなることだ。原発稼働と太陽光稼働で70~80パーセントまで高めれば、主力電源化も脱炭素化も手の届く所まで来る。原発稼働電力会社に、24時間均等放電の採用を義務付けるべきである。

否、義務付けなくても賢明な電力経営者なら、自ら積極的に採用を進めるだろう。

太陽光発電業者にとっては、抑制がなくなる事以外のメリットが多くある。例えば、パネルで発電した電気は直流のまゝ蓄電するのでパワコンは不要となる。また系統接続電圧が、3分の一になる事で接続変電所がワンランク下がる事が有り、系統接続工事負担金が大幅に縮小するメリットもある。(新設の場合)

風力発電には24時間均等放電の蓄電池は接続しないが、太陽光の抑制が解消されることに釣られて、大幅に抑制が減少するというメリットに有り着く。

この24時間均等放電方式を採用無しでは、再エネの主力電源化も、脱炭素化も儚い夢に終わってしまう事は断言できる。

Ⅲ.3 抑制未解決のまゝ、主力電源化は不可能

💀  💀  再エネが崩壊するだけ  💀  💀

①これ以上太陽光を増やしても抑制されるだけ

昨年(23年)1年間の九州の出力抑制回数は136回もあったが、再エネの導入済容量増加に合わせて、毎年増加し続ける。増加続けた結果、30年頃には、需要の多い夏や冬のピーク日でも供給過剰になる。30年過ぎて35年までは洋上風力中心に増加続ける。35年頃に、最大倍率の東北では4.5~11.2倍になり、手の施しようもない悲惨な結果になると予想出来る。最大需要の東京ですら年間通して供給過剰になり、出力抑制が頻発する。その結果連携線は機能しなくなる。

②中央3社(東京、関西、中部)に出力抑制発生後

連携線機能せず、過剰分は抑制されるだけ

中央3社の、連携線経由で地方電力の供給過剰分受取量が23年の1年間で63,324GWhあったが、その内、東京が61%の38,470GWh、中部が23%の14,837GWh、関西が11%の6,859GWhであった。

3社の合計値63,324GWhは今後新たに稼働する原発で帳消しになる。

しかし、30年頃に3社も供給過剰になり、他所の地域の供給過剰分の受け取りが出来なくなる。3社も供給過剰で出力抑制を実施することになる。特に東京は年間228回と3社中一番多い回数になる。

③洋上風力大量稼働も、殆ど抑制に回されるだけ

現在日本全体の風力は578万kWしかない。全再エネの5%にも満たない。しかし、受付中が12,500万kWも有り、全てが稼働しても、殆ど出力抑制の対象となる。やるだけ無駄な導入となる。

④再エネの主力電源化も脱炭素化は不可能

ソーラーパネルのローン返済期間は15年が一般的だが、その期間に利益10パーセント出すのが精一杯で、抑制が入ると利益が出なくなる。15年過ぎて20年までは返済が無いので、本来は最大の利益捻出期間であったが、その期間を30年~35年になるので、その期間は増々抑制率が高くなる。その期間の抑制率は80~90パーセントになり、期待通りの利益は望み薄である。

悲しい事にパワコンの寿命は10年とか15年といわれており、30年から35年にパワコンの買換え時期になる。その時利益が出ていなければ、買換費用を確保するのは困難となり、更新即ち事業継続を諦めるという事になる。

せめてパネル廃棄費用だけは残しておく必要があるが、手っ取り早く夜逃げを選択する業者も増えるだろう。

Ⅲ.4 ❤  出力抑制完全解決は、これしかない ❤ 

★★★  タケノコシンドローム対策  ★★★★

(1) タケノコ対策の概要

各太陽光毎に一日の発電容量の蓄電池を接続させ、発電した電気は一旦それぞれの蓄電池に蓄電し、発電終了後のゼロ時から24時間均等放電する。タケノコの高さが3分の一程度の高さになる(下図)

 発電した日に、センターで翌日稼働計画作成締め切り時間直前に、各発電所から蓄電した量を知らせて来るので、火力発電の稼働計画作成に反映できるため、火力の最低出力を思い切り下げる事が出来る。

均等放電で供給過剰になる事が事前に分かった場合は、水力やバイオや風力の出力調整で解消できる。

それでも解消できない場合は、全国一斉南中時過剰は解消されているので、他所に、昼でも支援願いも可能となる。

(2) 系統用蓄電池で 『夜の内に放電』 は不可能!


昼の発電分を夜の需要で消費するため、一旦蓄電池に保存し、夜間時間に限定して放電すれば、供給過剰は解消出来るとの安易な考えが流行している。どこかの電力会社が、特定の発電業者と個別の契約で実施しているもので、全太陽光に適応されているものではない。

問題は全太陽光にこのやり方を適応すると、夜間の需要で消費する方法は、夜間需要が少なすぎて適応出来なくなることを説明する。

下のグラフは、昨年の4月8日に九州で発生した供給過剰のグラフである。その日の抑制対象量(白地)は35,527MWhて、発電終了から翌日り太陽光の発電開始前までの火力の発電量は43,979MWhであったので火力の一部を太陽光が発電した電気を当てる事は可能である。

しかし、30年頃になると太陽光の導入量が1.7倍と増えるので抑制対象量も激増し115,852MWhとなり、火力の発電量を遥かに超える事になる。夜間の需要で消化する考えは儚い悪夢となって仕舞う。

(3)何故、24時間放電か?


蓄電池は、蓄電と放電を同時処理する事は出来ない。

従って、放電は非発電時間帯に行う必要がある。夜のうちに蓄電池の電気を放電し、翌日の発電時間前に終了させておく必要がある。

太陽光発電は、日の出から日没までの間だけしか発電できない。その時間は季節によって大きく異なる。

一番長い時間は、夏至の頃、6月21日近辺。午前5時から夕方の19時頃までの14時間が発電時間となる。逆に一番短い時間は、冬至の頃、12月21日近辺で、御前7時から17時までの10時間しかない。

夏至の頃と冬至の頃には太陽光が発電できる時間に4時間の差がある。蓄電と放電を同時処理可能な蓄電池システムを開発できれば、1日24時間かけて蓄電池から放電することが可能と成る。24時間かけて放電すれば、24時間均等放電の時間当たり放電量が、一日の最大発電量の3分の一から4分の一になるという特性を利用できる。最大値が少なくなれば供給過剰が大幅に解決できる。

太陽光の比率が高く、陸続きの隣接国の無い我が国の供給過剰対策は、この方法に頼るしかない。

その方法やメリット等について詳しく引き続き説明していく。

(4)何故、パネルに蓄電池を接続させるのか?

①経産省指導の失敗事例

需要ラインを超過した分を一旦、1か所の蓄電池に集中保存してから、夜間にその電気を使用することを狙って、九州と東北に、2016年に変電所に大型蓄電池を設置した。容量は東北が4万kW、九州が30万kWh。敷地面積が東北は8,500平方メートルでサッカーフィールドとほぼ同じ、九州は東北の2倍近い。

折角作られた蓄電池が実際の運転で使用されなかった(と思われる)理由は、用意された蓄電池容量があまりにも少なすぎたから。

実際に、23年4月8日の抑制量は3,553万kWhで、用意された蓄電池容量の118倍も有った。これだけの容量を準備するとしたら敷地面積はサッカー場240個分の広さが必要になる。

電力会社単位に集中して蓄電池を設置すると、非現実的な面積が必要になる事の実証である。だから、解決策としてパネルと接続させて設置することにした。

②個別発電所毎に蓄電、パネル下設置で占有敷地不要

一か所に集中せず、ソーラーパネルの敷地を利用すれば新たな蓄電池専用の土地は不要である。パネル用の敷地は既に確保しており、その敷地の3分の一か、4分の一の面積があれば蓄電池は設置可能である。蓄電池専用敷地は不要。勿論蓄電池はパネルの下に設置する。

パネル下に畑が作られていたり、池の上にパネルが載せられている場合は特別工夫が必要になる。

③直流のまゝ蓄電するためパワコン不要

パネルで発電した電気は直流で出力される。蓄電池へ蓄電するときは直流のまゝで蓄電する。直流から交流への変換はパワーコンで行われているのでパワコンは不要となる。パワコン価格はパネルの2~3割も占めている。またパワコンの寿命も10年~15年のため、パネルを20年働かせようとすると途中でパワコンを新規に購入しなければならない、

④系統接続先変更で工事負担金大幅削減


ⓐ系統接続ルール


太陽光の容量(最大出力)に従って、電力会社の系統の接続場所(変電所)が決まっている。接続ルールを図にすると下図となる。

接続ルールを表にまとめたのが下表となる。

問題は変電所の規模が大きくなるとその数は少なくなる。

数が少なくなると、理論的には変電所までの距離が遠くなるといえる。

一番多い柱上変圧器は1052万個あるので、県当たり20万個以上あるので、発電所から100~200メートル位で接続できる。

一番少ない超高圧変電所は249ヶ所であるので、県平均5か所位となる、距離も遠くなる。距離が遠くなると工事負担金も高くなる。

ⓑ 系統接続工事負担金のサンプル設定


発電所候補地と、各種変電所までの距離が分かっているものとする。(下図)超高圧変電所までは20Km、1次変電所までは10Km、中間変電所までは5Km、配電変電所までは1Kmとする。

☆ 上記で想定した距離と電力広域的運営推進機関が公表している「送変電設備の標準的な単価」を適用して変電所までの負担金を計算すると下表になる。

この表の見方を説明する。

この表は「タケノコ対策を取らなかった場合」を「通常接続」とし、とった場合を「HBBS経由」と呼ぶ。

●太陽光発電所の規模が150MW以上の時(超高圧変電所接続の欄)

150MW以上の場合は、HBBSを使用しても使用しなくても接続変電所は超高圧変電所だが、接続電圧が下がるので使用機器コストが安くなる。HBBSを使用しないときの負担金は83.3億円、使用する時は26.3億円になる。従って、HBBSを使用すると、同じ超高圧変電所でも負担金が57.0億円安くなると言える。この差額金で高額の蓄電池を導入できることになる。

●規模が50MW~150MW未満の時(超高圧~1次変電所接続の欄)

HBBSを使用しないときは超高圧変電所接続であるため負担金は83.3億円、使用する時は1次変電所接続となるため負担金は13.2億円となる。従って、HBBSを使用すると負担金が70.1億円安くなると言える。この差額金で高額の蓄電池を導入できることになる。

●2MW~6MW未満の場合(中間~配電変電所の欄)

HBBSを使用しないときは中間変電所接続であるため負担金は7.8億円、使用する時は配電変電所接続となるため負担金は0.5億円となる。従って、HBBSを使用すると負担金が7.3億円安くなると言える。この差額金で高額の蓄電池を導入できることになる。

c.導入費用詳細


電力広域的運営推進機関は「送変電設備の標準的な単価の公表について」で工事費負担金に含まれる送変電設備の標準的な単価も含まれている。 

送変電設備の内、特別高圧設備については架空線・変電設備の引出設備と変圧器・通信設備、高低圧設備については架空線・地中線について公表している。その他の設備については、標準的単価としての公表はされていない。その単価表を使用して工事負担金の詳細を計算する。(電力会社も同じ表を使用している)

7000kWの太陽光は中間変電所に接続しなければならない。47000kWhを24時間均等送電を行うと時間当たり送電量が2000kW以下の1,958kWになるので配電変電所接続となる。

中間変電所は4,376ヶ所と少ないため遠距離になる確率が高くなる。また配電変電所は6,700ヶ所と数が多いので距離が短くなる確率が高い。中間変電所までの距離を5kmとし、配電変電所までを1kmとした。


計算結果(HBBS使用前と後の工事負担金の比較)


中間変電所接続の場合の工事負担金は6~10億円と幅があるので中間値として8億円とする。HBBSを使用すると配電変電所接続となるので工事負担金が409万円~4,156万円に大幅減額となる。

(5) 蓄電池容量はどの程度必要か?


①蓄電池の設置方法に2種類あり(特許取得済み)

★蓄電と放電を同時処理可能な仕組みの下に     1日分の発電量の蓄電池を2組持ち、

複数個の蓄電池を組み合わせる         日替で蓄電用と放電用と交互に使用

★パネルで発電した電気を直流のまゝ蓄電     ★自己消費できなかった電気を蓄電    

②自己消費が無い場合(HBBS)の蓄電池容量

(ハイブリッド・バッテリー・システム;HBBS)


一日の発電量は同じ発電機でも日によって異なる。1年中における一日の発電量を多い順に並べると緩やかなS字カーブが得られる。下図は神奈川県に設置された13MWの発電装置から実際に発電した日別発電量を多い順に並べたものである。一日当たりの最大発電量は90,860kWhで、平均は44,637kWhとなっている。 一日当たりの発電量をどこに決めるかは蓄電池の投資効率に大きく影響する。弊社の計算では最大値の90,860kWhではなく、65,000kWhの容量(パネル容量の5倍) が利益率では最適であると結論を出した。


(図6.4)

HBBSでは、蓄電と放電の同時処理が可能な蓄電池容量が必要


(図1)前日の発電量を24分の1の量でコンスタントに放電する。発電は日の出から日没まで行う。 

(図2)前日蓄電した量は24時間かけて均等量づつ減少し、24時間後にゼロになる。当日の蓄電量は 日の出とともに少しづつ増加し、日没時に最大値に達する。

 (図3)前日分と当日分の合計量の変化 をみると、16時頃に最大値の1.33になる。 1日分の最適値と合わせると

(パネル容量の5倍)× 1.33 = 6.65倍

が必要なHBBS容量となる。

(6) HBBSの機能概要(特許取得済み)


1つの発電装置に1組の蓄電池を接続させる。1 組とは任意の数の蓄電池で構成され、接続された発電装置の一日当たりの発電量を収容出来、かつ放電と蓄電の同時並行処理が可能な装置である。

蓄電は発電装置で発電したものを、直接電力系統に送電せずに、一旦、直流のまゝ蓄電する。放電は、前日に発電した量を24分の一づつ均等に24時間かけて放電する。放電開始時刻は、翌日の系統制御開始時刻(午前ゼロ)で、終了時刻はその24時間後になる。

毎日、決められた時刻に、その時刻から24時間さかのぼる時間帯に発電した量を、センターに通信機能使用して知らせる。 

(7)蓄電池コスト試算

❤❤❤❤ 1年間の発電実績から容量とコストを推定する  ❤❤❤❤

①13000kWの実績(図6.4)から売電収入を推測する

1年間の発電量             16,425MWh

1年間の売電収入(12円/kWh) 19,710万円

20年間の売電収入 394,200万円

1万kWパネルの20年間の売電収入     30.3億円/万kW

②蓄電池コスト

使用する蓄電池はNAS蓄電池として2.4万円/kWhで計算した。

1.3万kW時の蓄電池容量(6万kWh×1.33) 79.8MWh

1.3万kW時の蓄電池コスト(2.4万円/kW) 19.2億円

1万kWのパネルの蓄電池容量 61.4MWh

1万kWのパネルの蓄電池コスト       14.7億円/万kW

蓄電池コストは、20年間の売電収入の約半分に相当する。

これでは投資効果は極めて困難?


③ 電力会社別2030年頃の全太陽光に必要な蓄電池費用

電力会社別に必要な蓄電池の容量とそのコストを計算した。  

合計20兆円規模の事業となる。

Ⅲ.5 HBBS採用は、電力トップの決断次第

(1)「タケノコ狩り」無い時の年間抑制回数

予定通り再エネ導入が進むと30年過ぎには、10地域中8地域が年間200回以上の抑制回数となる。(下図)昼の抑制は太陽光と風力が対象だだが、夜は風力だけの抑制である。風力は昼と夜の2回停止させられる可能性が有る。1回の停止で全発電所が停止させられる訳ではない。しかし、1年間を通すと全ての発電所は同じ回数だけ停止させられる事になる。抑制の実施は天気のいい日に限って実施されるので発電業者にとっては売電収入の影響は大きい。

(2)「タケノコ狩り」効果の金額換算と蓄電池コストの比較

♦♦♦  「タケノコ狩り」効果を東北と東京で比較 ♦♦♦

蓄電池使用で増加または減少した発電量を、IT買取単価もまたは公表されている火力の単価で計算とした結果、なんと火力発電が最大効果を生み出している。東京電力では太陽光の効果が、風力より少ない最低の額であった。

20年間の額は東京も東北も、系統下の全蓄電池のコストより大きな額である。

蓄電池コストを太陽光発電業種だけに負担させることは、極めて大きな不公平を生み出すことになる。

東京電力は自社の系統に接続された全太陽光の蓄電池コスト6兆3866億円を負担すると、火力発電の燃料費が20年間で13兆1397億円節約できる。  東北電力は3兆3398億円の投資で20年間で5兆4638億円の燃料費の節約となる。太陽光だけに蓄電池を適応したにも拘らず、風力と火力発電にも効果が出ている。しかも、最大効果は火力発電で、太陽光は最小の効果でしかない。全太陽光に必要な蓄電池コストを、火力の効果だけで十分に補えるほどである。

(3) 電力会社にとってのHBBS効果 

①系統制御の効果

★系統接続最大発電量が、HBBS使用で3分の一以下になるので、系統容量3倍拡大と同じになる。 

★毎日HBBSから発電実績値が送られて来て、その値で翌日の系統制御計画を作成するので、太陽光に関する発電予測は不要となる。

★HBBS接続の太陽光には出力抑制が発生しなくなるので、抑制処理関連の作業が大幅に減少する。

★火力発電が天気の急変に左右されない安定運転と成り、かつ最低出力を思い切り下げ事が出来る。

★HBBSを太陽光に採用していれば、原発稼働しても抑制激増が避けられるので、再稼働がやり易い。

②間接効果 

★HBBS導入に積極的に電力会社が取り組めば、再エネ導入に積極的だと評価され、原発再稼働にも国民からの協力が得られやすくなると思われる。

★HBBS導入に積極的に推進すれば、コスト削減等で得られる利益率の大幅向上で、電気事業経営が大幅にやり易くなる。

③蓄電池コスト負担で可能となる電力会社の新たな挑戦 

★料金値上げせずに、経常利益を高める事が出来る。 自社株価も高くなり、経営に好影響。

★利益が大きくなれば、その利益で電気料金を下げて、他社との価格競争を有利に展開出来る。

★蓄電池コストを負担すれば、更に再エネ接続が増え、利益も益々増加する。

★出力抑制を解消せず再エネ拡大しても、増えるのは業者犠牲ばかり、再エネ化率も増えず。

★原発を再稼働させる場合、積極的に抑制解消のためにHBBSコスト負担を行えば、原発再稼働に対して一般市民から協力が得られ、原発再稼働がやり易くなるだろう。

(4)経産省や電力会社はHBBS採用に積極的か?

経産省も電力も、再エネが崩壊すれば、脱炭素化は、原発でやり易くなるなる。経産省の改善策を見ると、HBBS採用などの案は全く存在しない。エリート大学を首席で卒業した秀才が、HBBSの必要性に気付かない筈が無い。気付かない振りをしてるだけ。気付いたとしても、屁理屈を付けて猛烈に妨害する。電力会社も、もともと再エネ嫌い。ベテランの電力系統制御担当者に言われた、「買取った電気は即、捨ててしまうのが、電力にとってはベストだ」とか「太陽光が発電した電気は極めて不安定で、使い物にならない」のを見て貰う為に、HPにリアルタイムで掲載している」と発言している。兎に角、経産省も電力会社も、再エネは上手く行って欲しくないのだ。少々のメリットが有ると分かったとしても。HBBS採用はしないであろう。

(5)HBBS導入後の再エネ化率と抑制率

太陽光で再エネ導入ファースト・フェーズは完成

★ ★ ★ ★  ①東北の事例  ★ ★ ★ ★  

38.9%  ⇒  76.9 % + 7.1 %


年間抑制回数が359回の東北の全ての太陽光にHBBSを導入すると、太陽光に対する抑制は完全解消し、再エネ化率が一気に76.9パ―セントに達する。

原発が7.1パーセントあるので、再エネ+原発84パーセントになり、ほぼ限界に達したと判断できる。

HBBSを使用しない風力までも、お零れ効果で74.6パーセントの抑制率が、44.4パーセントまで減少出来た。



太陽光有効発電増加 ⇒6.613GWh⇒+26,313GWh×29円/kWh=5,713億円

20年間の売電収入増 = 5713億円×20年=11兆4260億円

風力有効発電量増加量⇒5984GWh⇒+11,503GWh×22円/kWh=2,531億円

20年間の売電収入増 = 2531億円×20年=5兆613億円

♦ ♦ ♦ ♦ HBBS導入後の東北の稼働図  ♦ ♦ ♦ ♦


30年頃の下の稼働グラフ(上)を見ると、4月1ヶ月の全日が供給過剰になり、需要と供給の倍率が最大3.5倍、平均が2.0倍くらいになっている。

HBBS導入後のグラフ(下)見ると、均等放電の結果、需要ラインぎりぎりの所まで放電している。放電が多少オーバーした場合は、火力を最低出力にした後、揚水発電を最大出力まで働かせている。

南中時に供給過剰になる現象は完全に解決されたが、需要の少ない深夜に供給過剰なる事が多かった。その時の対応は、揚水発電や連携線を使用することも出来るが、自社のバイオや水力の出力を下げる事も出来る。

HBBS使用のメリットとして、毎日夕方にHBBS使用の発電所からその日の発電量を知らせて来るので、翌日の稼働計画作成時に、事前に抑制対策を組み込んでおける。

30年以降太陽光の導入が増えると抑制処理せざるを得ないので、この辺の容量が限度と思われる。

★ ★ ★ ★  ②九州電力の事例  ★ ★ ★ ★  

29.1 %  ⇒  49.9 % +37.4 %


年間抑制回数が335回の九州の全ての太陽光にHBBSを導入すると、太陽光に対する抑制は完全解消し、再エネ化率が一気に49.9パ―セントに達する。

原発が37.4パーセントあるので、再エネ+原発で87パーセントになり、ほぼ限界に達したと判断できる。

HBBSを使用しない風力までも、お零れ効果で62.5パーセントの抑制が、34.5パーセントまで向上出来た。HBBS使用後の九州の再エネ化率は49.5と高まり、火力や原子力と比較しても、主力電源と言える。

太陽光有効発電増加⇒9,335GWh⇒ 25,110GWh×29円/kWh=4,575億円

20年間の売電収入増 = 4,575億円×20年=9兆1,495億円

風力有効発電増加 ⇒1507GWh×22円/kWh=331億円

  20年間の売電収入増 = 331億円×20年=6630億円

火力発電量削減  ⇒ 29,048GWh⇒17,888GWh×35円/kW=3906億円

20年間の売電収入増 = 3,906億円×20年=7兆8120億円

Ⅲ.6 HBBS導入後、洋上風力激増で崩壊

   ❤ ❤ ❤ 太陽光完璧で安心することなかれ ❤ ❤ ❤ 

(1) 大量洋上風力稼働後の姿


30年過ぎに洋上風力が、圧倒的に大量に、稼働開始する。現在(24/3)受付ている風力の容量は、稼働中風力の数十倍の容量である。

一番多いのは東北の36倍で7,484万kW、中国が34倍、九州が14倍。東京11倍である。

風力は夜も昼も発電し、強い風が数日間続くことも有るので、出力抑制対策は、太陽光の対策とは全く異次元の、風力専用の新たな対策が必須となる。

下図は過去の陸上風力発電実績に対して、30年過ぎの新風力の倍率を乗じて作成したものである。

 (2)30年過ぎに本格稼働の洋上風力対策


 ★ ★ 30年過ぎの稼働グラフ(前図)の説明  ★ ★ 


①縦軸目盛スケール違いご注意。東京100GWh、東北33GWh、北海道16GWh

②目盛の違いより重要な点は、風力の最大出力と需要の倍率がどの程度か?。

③3社とも、需要と最大出力の倍数が4~5倍ある。

④洋上は陸上の2倍の稼働率であるので、洋上の実績でグラフを書き直すと、最大出力は同じで、それ以下の出力が減少し、最大に近づく図に代わると予想できる。



★ ★ 洋上風力本格稼働時に予想される悲劇 ★ ★



①太陽光の抑制未解決時は、昼間は太陽光に合わせて、抑制され、 夜間は、需要が少ない中で原発と火力が優先されるため、風力も殆どが抑制される。


②洋上風力の稼働率は陸上の2倍と言われているが、抑制率も2倍以上になる。

③洋上が本格稼働の30年から35年は、太陽光も年300回以上の抑制回数、 風力もそれに合わせて、年300回以上の抑制回数、即、倒産と推定出来る。

④風力は発電し始めたら最大出力が3日も4日も続き、稼働率を高めるという特性があるが、その特性も生かされることなく、全面的に発電禁止になる。


★ ★ ★ ★ 洋上風力向け抑制解消策  ★ ★ ★ ★


①洋上風力にはHBBS適応は困難な理由 ⇒ 近辺の数十基の風車用の発電に対して設置するので、膨大な容量が必要になる。

②膨大な蓄電池を設置しても、殆どが出力抑制になり、十分な収入が得られない

③洋上風力が発電した電気は、その場で液体水素を製造し、連携線に乗せずに、 船便ゃトラック便で客先に販売する。

(3) 洋上風力の抑制解消対策

①洋上風力発電グループ

洋上風力は数十基単位で会場に設置される。

②グループ毎に最寄り地上基地と連結

その地上基地から電力系統に乗せられる。

③地上基地で即、液化水素製造

地上基地から直接連携線に乗せても、80~90パーセントが出力抑制で、発電禁止となる。そこで、弊社の提案は、連携線に乗せずに、即、液体水素に変えてしまうことを提案しています。

④液化水素で貯蔵、輸送は船便かトラック輸送

液体水素はトラック便または船便で目的地まで輸送する。

Ⅲ.7 最大効率の脱炭素化に必要なこと

完全再エネ化には、変動する需要と、変動する再エネの出力を、年間通して供給出来なければならない。そのためには大容量の貯蔵機能と調整能力が必須である。

(1)太陽光と風力だけで、1年間の需要を満たすには ★★

説明を分かりやすくするために、太陽光と風力だけに限定して、他の者は一切省いた東京のデーターを使用する。東京電力の電力需要は夏と冬にピークが来て、春と秋は需要は少なくなり、特に5月のゴールデンウィーク 期間は最低需要になるのは、毎年ほぼ同じパターンである。 一方、太陽光発電は6月の夏至の頃を最大となり、12月の冬至の頃が最小となる。地球は太陽の周りを一定軌道で公転しているため、太陽からのエネルギーは毎 年ほぼ一定である。途中梅雨の季節や台風の季節には、 その年によって多少の変化はあるが、一年を通すとほぼ一定の量である。 一方、風力発電は春や冬は風は多いが、夏は少なくなるパターンで吹いている。ただし、太陽光に較べると、年によって発電量が大きく変化する点では異なる。 以上の条件で、東京の1年間の電力需要を太陽光と風力だけで、供給した、すなわち、年間電力需要=年間太陽光+年間風力発電になるように、現在受け付けている承認済と検討待ちの半分が稼働したとして作成したグラフが(図Ⅴ.4)である。  

ただし、風力は陸上風力の 発電効率を適応している。このグラフから分かる事は、年間では需要と供給は一致しているが、夏と冬の ピークには供給不足となり、1月~6月までは供給過剰となる。 供給過剰の時は出力抑制として捨て去り、不足のところは何処かから供給して貰うか、火力発電を稼働さ せなければならない。その結果、再エネ化率は90パーセントにしかならない。 そこで再エネ化率100パーセントを目指して、8月の不足のところを再エネで供給させるために、 8月の需要 = 太陽光+風力になるまで全体を底上げしたグラフが、真ん中の(図Ⅴ.5)である。全体が底上げ されたため、供給過剰分が極端に増える。風力の捨てられた量は、227TWhもあり、年間需要279TWhの81% に相当し、 風力発電の68パーセントが無駄に捨てられることになる。捨てられる分を15円/kWhで計算すると、毎年3.4兆円になる。年間売り上げ6兆円弱、経常2000億円前後の東京電力がこんなに沢山、出力抑制として捨ててしまうのを黙って見ているだろうか?もし黙って見ている様な経営者だったら、経営者失格と言わざるを得ない。経産省の制御方式では、毎年3.4兆円、しかも、風力発電の68パーセントも捨てることになる。こんなに捨てて、経営の無駄をまき散らして、最適な制御方法だと言えるのか??言ってるのは経産省だけだろ。  


(2)★ これがグリッド・ストレージだ  ★

 マイクログリッドはエネルギー産業の革命 

今後の再エネシステムの最終研究テーマとして提言する

♦♦♦♦ 蓄電は複数個所に分けて蓄電する ♦♦♦♦ 

★  ★ ★  電気スタンド  ★ ★  ★ ★  

 EV時代にはEV車向けの電気(ガソリン)スタンドが必要。現在ガソリンスタンドは東電管内だけで7千ヶ所 有るそうだ。1スタンドで毎日300車に500km走行分の電気を提供すると、1スタンド当り50MWh程度の 蓄電池が必要となる。東電管内だけで一日当たり350GWhの蓄電量となる。 電気の充電時間は通常は8時間くらいかかるが、高速充電であれば 30分程度で出来るそうだ。1台当たり30分掛けて、営業時間12時間に300台に充電するためには、 25台が一斉に駐車できるスペースが必要となり、電気スタンドと言うより駐車場と言う感じになる。土地代の 高い都会地でこれだけのスペースを確保するのは困難であり、且つ採算を取るのも困難であろう。 それに代わる対策として、蓄電池の標準化を進め、蓄電池の種類を大型、中型、小型の3種類位に限定 してどのメーカーの車でも共通して使用できるようにする。電気スタンドでは充電サービスを受けるのでなく、既 に蓄電しているバッテリーと数分間で交換するサービスを提供する。既にこのタイプのサービスは、2輪車では 一部メーカーが実施している。


★ ★  ★ ★  フロントステーション  ★ ★  ★ ★

現在の配電変電所に相当する。東電の配電変電所は1000ヶ所は有る。配電変電所の役割は二つある。 一つは需要家に電気を供すること、二つ目は発電所からの電気を受け止める事である。 


★ ★  ★ ★  ミドルステーション ★ ★  ★ ★

配電変電所より上位の変電所、中間変電所、1次変電所、超高圧変電所等を総称してミドルステーション と呼ぶことにする。東電管内だけで1000ヶ所有るそうだ。このステーションの役割は二つある。一つは電気を 液体水素に変換して、変換された水素を貯蔵タンクに保存することと、2つ目は、適切なタイミングで貯まった 水素を電気に変換して電力系統へ送り込むこと、の役割がある。 

★ ★  ★ ★  バックヤードステーション  ★ ★  ★ ★

旧火力発電所跡地15ヶ所を液体水素専用貯蔵タンクの保存場所とする。他所の地区との輸出入はこの ステーションからトラック便または船便で行う。 

上から下に流れていた電気の流れが、大きく変わっていく。

その流れの制御手法が全く議論されていない。

その技術が完成しない限り、脱炭素は不可能である。

(3)脱炭素化を実現させる新系統制御室   

~ ~ ~ マイクログリッドの電気の流れを制御 ~ ~ ~


現在、日本の電力会社は、自社の電力系統の運用で、同時同量を中央給電指令室で、毎日24時間監視制御している。

現在の制御は上流(原発や火力の大型発電所)から下流(一般需要家)に流れる電気を供給と需要が等しくなるように、監視と制御が主な仕事である。その制御に貢献しているのが火力発電の調整能力である。その機能を別名「上げ代下げ代」と読んでいる。

脱炭素化とは、別名火力発電の廃止を意味する。

火力発電の稼働が無く成ったら、調整機能は誰が行うのか?

調整能力以外の問題は、火力廃止で、上から下に流れた電気の流れが変わる。将来は大型発電は原発だけになるので、原発の近くの需要家は何時でも電気が流れて来るが、原発から離れた所には電気が流れて来ない。

また、需要は夏や冬は多く、夜より昼が多く、平日は休日より多いなど、激しく変動する。それに対して、再エネは太陽光も風力も季節によって変動する。

しかし、電気は如何なる時でも需要と供給は一致、即ち同時同量でなくてはならない。

また、現時点では「電気は貯められない」を原則として電力系統を運用している。


「脱炭素化後の新電力系統制御」

脱炭素化が実現すると、火力発電の調整力が無くなり、上から下への規則的流れも無くなり、「貯めて作った液化水素」タンクから補給しながら、変動する需要に同時同量で一致させなければならない。将来の系統制御は大きく変わる。

日本に最初の電灯がともり始めてから、既に140年が経過した。その間に休むことなく次々と電力設備は導入され、現在に至っている。

脱炭素化を進めるには140年かけて構築したすべての電源設備を、一日も休むことなく電気を供給しながら推進しなければならない。

Ⅲ.8 再エネ崩壊に繋がる誤解と陰謀  

 (1)再エネ崩壊に陥り易い誤解     

♦ ♦ ♦ 出力抑制発生の最大原因 ♦ ♦ ♦

①連携線容量を増やせば出力抑制は発生しない

九州と中国間の連携線の容量を数回にわたって増量してきたが、23年度は年間抑制回数136回と、最大の被害が出た。

②出力抑制の制御をオンライン化すれば抑制量減少

オンライン化しても全体の供給過剰量は減らない。減るのは発電を止めたり、再会したりの手作業が楽になるだけ。停止を命じられた発電所は供給過剰になるまでの時間帯の発電は許されているが、抑制率が増えるにつれてオンライン化していても発電出来る時間は殆ど無くなる。

③火力発電の最低出力を更に下げる

現在、火力の最低出力はピーク発電量の50パーセント程度までしか下げられないが、経産省は20%まで下げると活き込んでいる。30年頃には再エネの供給量が需要の4~5倍まで高まる中で、火力の出力をたとえ20%に下げたとしても、効果は微々たるものにしか過ぎない。

50パーセントにまでしか下げられない理由は、太陽光の発終了のすぐ後に、夕方のピークが来る。20パ―セントまで下げてしまうと、ピークに供給できなくなり、大事故を招く危険性が有るのである。

④昼のピーク時間帯需要を創出して供給過剰減少

再エネの出力が需要を超過すると出力抑制になって仕舞うので、昼の需要が高まるような政策を盛り込むと言っている。

⑤日本の地域間連系線を海底ケーブル等で増強(下図)

下図は電力広域運営推進機構の方たちが、再エネ大量導入とレジリエンスの為に計画した計画書です。

再エネ大量導入のためと言うのは理解できるが、レジリエンスのためと言うのは理解に苦しむ。レジリエンスとは、「逆境や困難に直面した時に、それを乗り越えて適応していく力のこと」だそうだ。広域運営推進機構の方たちは再エネ大量導入が上手く行かないことに苛立っていることは理解できる。だからと言って、北海道から海底ケーブルで直接東京電力ら連結しても、何ら効果が無い事は理解すべきである。

連携線で連携して効果が出るのは、受取側に受取る余力が有る時であるが、30年頃は東京も、昼間は太陽光で供給過剰になっている。海底ケーブルで直接北海道と東京を結んでも何の意味も無い。

広域運営推進機構とは、電力会社の一部のような組織であり、毎日力取引の調整役として従事されている。そんな専門知識豊富な人たちが、こんな効き目の無い連携線を考えだすことに、非常に疑問を感じる。

連携線を増強しても、将来は効果が無い事は説明済だが、なぜこんな計画を作成したのか?

再エネ大量導入のためと言えば、予算が通り易い。しかも、大型の予算である。予算を取って仕舞えば、後は何に使おうが、簡単にはバレないだろう。

そんな陰謀を許していいのだろうか??

(2)何故、経産省は主要対策を避けるのか?

①供給過剰の最大原因「太陽光のタケノコ対策」無視

②原発再稼働に対する対策なし、増々再エネ崩壊促進

30年過ぎに本格稼働の洋上風力は、抑制だらけの後の      ため、ほぼ全滅

④脱炭素化で火力発電終了すると調整力も消滅、それに        対する議論も提案も無し

(3)経産省と電力業界の本当の狙い

某電力の系統制御部門の幹部が「買い取った電気はすぐ捨ててしまうのが、電力にとっては最も経済的」と発言した。また、某大手の幹部は「再エネは不安定で使い物にならない。如何に不安定かを見て貰う為に、自社のホームページにリアルタイムで発電状況を表示している」と発言していた。

そんな電力が、自社にも利益が出ると言われただけで、HBBSのコストを自分が負担するような決断をするだろうか?

電力が一番希望していることは原発の再稼働である。このまま原発を停止したままでは、色々と問題が出て来てしまい、経営の継続が難しくなる。一日も早い再稼働を希望しているのである。しかし、再稼働までには膨大な課題を乗り越えなければならない。乗り越えている間に、潰れてしまう。

経産省も、問題の多い再エネは反対である。しかし、反対だとはっきり公言出来ない。経産省担当者たちは、エリート大学を首席で卒業したようなスーパーエリートの集団であるのに、これまでにやってきた対策が少し的を外している。例えば抑制解消策が効果の少ない物ばかりで、本当にやらなければならないことを避けて通っている。仕事をやってる振りをしているだけだ。

経産省も電力も、早期の原発再稼働をしたい、そのためには再エネを崩壊させてしまえばいい。

再エネが崩壊すれば脱炭素は原発しか無いと、スーパーエリート達なら当然考えつくようなことだ。

この陰謀にハマり、日本の再エネは近い内に崩壊する。彼らは崩壊した時、「やっぱり原発しか無いよね」と言って、にこにこしながら原発を再稼働させるだろう


Ⅲ.9 日本の再エネ・システムを世界に展開

★★★ エネルギーの自給率を高める ★★★ 


日本全体の太陽光にHBBSを導入出来ると再エネ化率は70パーセントまで高まり、原発含めると80パーセントになる。自立化も高まったといえる。

洋上風力の発電分は全て液体水素に転換し、EV車などに利用すると、エネルギー自給率も100パーセントを超える事が出来る。

トータルエネルギーシステムとして世界へ拡大

パネルや風車の安い単価だけに頼ったグローバル展開ではなく、HBBSや、液化水素展開、グリッドストレージ構想、マイクログリッド技術、脱炭素化後の新電力系統制御技術のトータルエネルギー・システム技術の総合技術、それを現地に適応させるためのコンサル技術、等

全てを含んだトータル技術で世界に貢献する。

それが技術大国日本が目指す道である。


最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等

メールでozaki@smart-center.jpまで直接お送りください。