2023年度 第1回セミナー
題目:On the Shakirov's equation
講師:山田 泰彦 氏 (神戸大学)
場所:立教大学池袋キャンパス 4号館4階 4404教室 (hybrid)
日時:2023年4月28日(金) 17:10--18:40
概要:In 2021, a remarkable difference equation for a q-deformed conformal block was discovered by S.Shakirov.
As an analog of the undeformed case, the equation is expected to have some relations to 5d gauge theories and quantum q-difference Painlev¥'e equations.
In this talk, we will study how these relations are realized by the Shakirov's equation.
This is nontrivial since the form of the equation is quite different from its undeformed version.
I will discuss the solutions also so far as time permits.
This talk is based on a collaboration with Awata, Hasegawa, Kanno, Ohkawa, Shakirov and Shiraishi.
2023年度 臨時セミナー
題目:双曲型sinh-Gordon方程式の古典的代数幾何学を用いた準周期解の構成
講師:古郷 優平 氏 (北海道大学大学院)
場所:オンライン (Zoom)
日時:2023年5月19日(金) 14:00--15:30
概要:1982年に伊達悦朗により,sine-Gordon方程式の一般化であるPohlmeyer-Lund-Regge方程式の準周期解が構成され,その解はリーマンテータ関数を用いて表示されることが知られている.この手法はKricheverによる,Zakharov-Shavat方程式に対する準周期解の構成法を基にして作られた.今回,別の実形を考えることで双曲型のsinh-Gordon方程式のリーマンテータ関数解,およびその波動関数のBaker-Akhiezer関数による表示を得た.本講演では,その構成法について詳しく述べる.また,双曲型sinh-Gordon方程式は,ミンコフスキー空間の時間的平均曲率一定曲面の構造方程式であり,そのような曲面の構成や性質を調べることが今後の課題である.
2023年度 第2回セミナー
題目:ABJM行列模型の新しい展開-平行多面体とパンルヴェ方程式-
講師:森山 翔文 氏 (大阪公立大学)
場所:立教大学池袋キャンパス 4号館4階 4408教室 (hybrid)
日時:2023年5月24日(水) 17:10--18:40
概要:M理論においてM2ブレーンの自由度は奇異な3/2乗則に従うと期待されていた。M2ブレーンの世界体積理論(ABJM理論)の分配関数が局所化により行列模型に帰着され、その行列模型を用いて3/2乗則が再現された。さらに私たちの先行研究でその全補正項が厳密に計算された。これは背後の可積分性を示唆しており、その全貌を解明することは重要である。本講演では、一般の場合に超対称性の条件が平行多面体の考察に帰着することを示し、さらにqPVIパンルヴェ方程式に対応する設定の中で、分配関数がパンルヴェ方程式の一定式化である双線形関係式を満たすことを説明したい。
2023年度 第3回セミナー
題目:シフト作用素とLappo-Danilevsky理論
講師:原岡 喜重 氏(城西大学)
場所:立教大学池袋キャンパス 4号館4階 4403教室 (hybrid)
日時:2024年1月29日(月) 17:30--19:00
概要:Fuchs型常微分方程式に対し、モノドロミーを変えずに特性指数を整数だけずらす変換は、隣接関係式、変形方程式のSchlesinger変換、離散Painleve方程式などいろいろな文脈において現れる。そのような変換はスカラー方程式の場合には微分作用素で表現され、シフト作用素と呼ばれる。シフト作用素については、その存在や、シフト作用素が見掛けの特異点を導入しないための条件は何か、といった問題が基本的である。Lappo-Danilevskyは、Fuchs型常微分方程式についての真に独創的な理論を作り上げた。彼の理論はシフト作用素の存在問題に極めて直接的に関わる。本講演では、Lappo-Danilevsky理論の概要を紹介し、シフト作用素の存在問題を考察したい。
2023年度 第4回セミナー
題目:Petz(lite) map for scrambling channels
講師:宇賀神 知紀 氏(立教大学)
場所:立教大学池袋キャンパス 4号館4階 4407教室 (hybrid)
日時:2024年2月21日(水) 17:30-19:00
概要:量子論を用いた解析によれば、ブラックホールはホーキング放射と呼ばれる、プランク分布に従う熱的な放射を出して徐々に質量を失っていくことが知られている(ブラックホールの蒸発)。ではブラックホール内部に落ちた状態を、外部に出てきたホーキング放射から復元できるだろうか? ナイーブにブラックホール上の場の量子論を用いた解析では、内部に落ちていった状態を、外部から復元することは不可能という結論に至る。しかしこれは量子論のユニタリー性と矛盾する結果であり、何かが間違っている。この問題はブラックホールの情報喪失問題と呼ばれ、その発見からほぼ50年経った現在でも完全な解決には至っていない。AdS/CFT対応は反ドシッター空間(anti de Sitter :AdS)上の量子重力理論が、その境界における重力を含まない(特定の)場の量子論と等価になることを主張する。近年この対応を応用することで、AdSブラックホールの情報喪失問題を、その境界における非常にカオス性の高い場の量子論を用いて解析することが可能であることがわかってきた。実際この様な観点から、ブラックホールの内部の時空構造の正しい記述方法が理解されつつある。より具体的には、Petzの回復写像と呼ばれる量子情報理論的なプロトコルを用いることで、ブラックホールに落ちていった状態をホーキング放射から復元できることがわかってきた。そこで本講演では、AdS/CFT対応の一番シンプルな場合(SYK模型とJT重力の間の対応)に解析し、その性質を議論する。