当研究室では、植物およびタバココナジラミを材料に、ウイルスの精製やDNA, RNA抽出を行っています。
このページでは、様々な実験法に書かれていない(見逃しているだけかもしれませんが)研究室で受け継がれているノウハウを記します。参考になれば幸いです。
<植物からのRNA抽出>
植物からの核酸抽出で、最重要と考えるのは、乳鉢です。細胞壁まですりつぶさないと、全然核酸が取れません。そのため、乳鉢は、新品がもっともよいです。乳鉢は有機溶媒をティッシュ等でふき取った後にオートクレーブで滅菌し、洗剤で洗って乾燥後、160度2時間で乾熱かけてから再使用しています。乳棒ですると、ざらざらが残っているかつるつるになっているかわかります。もちろん、ざらざらしたのを使ってください。
植物葉は、一度-80度で凍結後、核酸抽出することは可能です。しかし、絶対に凍結融解してはいけません。核酸は、凍結融解による分解が大きいです。つまり、凍結したら、凍結したまま液体窒素に入れて磨砕するのがコツです。
抽出精製した後のRNAの保存は、DEPC処理水またはDEPC処理水で作ったTE(TE自体にDEPCを入れたら、Trisが分解されてしまってダメです)に溶解後、-80度で保存する人が多いようです。しかし、凍結融解はRNAの分解を促進します(plasmidも、ニックを促進するので凍結融解はよくない)。そのため、エタ沈状態がもっとも安定して保存できます。終濃度0.3M酢酸ナトリウム(DEPC処理済)にして、2.5倍容の99.5%エタノールを加え、よく混ぜたのち、-20度保存です。これだとかなり長持ちします。-80度だと凍ってしまって、融解時にRNAが分解される危険があります。遠心後、上清を捨てたのち70%エタノール(RNA用)を加えてから-20度保存でもOKです。エタ沈後に乾固させ、その状態で-20度保存でもいいですが、ペレットがはがれるとロスする危険があります。
*DEPCはアミノ基をアタックするので、アミノ基をもつ物質はだめ
*DEPCの代わりにDMPCでもいいらしい
大腸菌培養、plasmid抽出など、RNaseが試薬に入っています。実験スペースの共有、同じ手袋を着用してRNA実験と同日に行う場合、いつの間にかコンタミします。逆に、RNA実験でDNaseを使う場合は、それがコンタミするとplasmidが分解されます。多くの場合、不注意や、ベンチ上が汚い時、会話しながらの実験、チューブふたの中側を手で触るなどがコンタミの危険がある行為です。手袋は、使っていると穴が開くので、長時間同じものを使っていると危険が増します。
<plasmidの精製と量>
量は、エチブロ先染めゲルで、マーカーとともに泳動して判断する。分光光度計の値だけでは、精製度が悪い場合は、信用できない。
<in vitro転写>
・in vitro転写では、5'末端にCapを付加させるため、GpppGというあらかじめCapを付加したGTPをCap analogとして加え、それをGTPの20倍の濃度にして、先頭にGTPではなく、Cap analogを取り込ませるようにしている。しかし、Cap analogは20ulスケールでのin vitro転写1回に1000円くらいと、高価である。
・翻訳は、Capを認識してからはじまるため、接種するウイルスRNAや発現させるためには、in vitro転写にCap analogを加える必要がある。しかし、siRNAやノーザンのプローブなど翻訳を要しないRNAをin vitro転写する場合、Capを必要としない。そのため、Cap analogを入れる必要がない。
・Cap analogが必要ない場合は、GTPをATP, CTP, UTPと同濃度で加えることができるため、転写効率がかなり上昇する(Cap analogを加えたin vitro転写では、GTPを加える量が少ないために、転写の律速段階となっている)。
<シークエンス反応>
重要なのは鋳型の量と質です。
エタノール沈殿で精製する場合、サイクルシークエンス反応後にEDTAを加えてからエタノール沈殿すると、よいようです。
<植物育成>
ポットや鉢で育てる場合、植物種や大きさ、そして天気によって給水量に違いがあるため、調節しないと、根ぐされや水不足がおきやすい。ポットを手に持って、乾燥時と水やり直後での重さを知っておく。軽くなったら水やりをする。水は根元にあげ、葉にはかけない。葉にかけると、日差しによって葉焼けする場合がある。
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