2015-07-10

日付: 2015年7月10日(金)

時間: 16:00〜17:30

場所: 早稲田大学・西早稲田キャンパス 51号館18階08室

講演者: 永野中行氏 (早稲田大学)

題目: アーベル多様体と三角群のモジュラー関数

要旨: 楕円曲線の変形は楕円モジュラー関数を定めます。その特殊値は虚2次体の絶対類体と呼ばれる拡大を生成します(クロネッカーの青春の夢)。 志村五郎氏はこれを高次元に拡張しました。則ち、高次元アーベル多様体の変形に由来するモジュラー関数のうちに、その特殊値がCM体の絶対類体を生成するものが存在することを証明しました。 しかし、志村氏の理論はアーベル多様体の代数幾何学を巧妙に用いたものであるため、モジュラー関数を明示的に構成することは決して自明ではありません。よって、モジュラー関数の明示的な形は殆ど知られていないのが現状です。 この発表の目的は、モジュラー群が三角群となる場合に、志村氏の意味でのモジュラー関数を具体的に手に入れる方法を与えることです。 発表では、まず楕円曲線のヴァイエルシュトラス標準型からクロネッカーの青春の夢に至るまで、幾何学と数論が交叉する古典理論を、少し時間をかけて復習します。 次に、志村氏による理論、特にアーベル多様体の代数幾何に関する議論を見ます。 最後に今回の主結果を紹介します。時間的余裕に応じて、今回の結果を適用して得られる非自明な関数を紹介します。 今回の結果は、志賀弘典氏(千葉大学)との共同研究で得られた結果です。