2015.04.20-丸本郁子
仁上幸治著『図書館員のためのPR実践講座―味方づくり戦略入門―』樹村房,2014.10.
感想
手ごわい批判眼と専門性の追求
－図書館員に意欲と誇りを取り戻す助けとなる本－
丸本郁子（まるもと・いくこ）
大阪女学院短期大学名誉教授／元・日本図書館協会図書館利用教育委員会委員（注1）
いやー、さすが仁上さま、良い本を出されましたね。手にするなり、フッとそこにあ
なたが歩いてきたという感じがします。相棒の尼川洋子さんと「図書館界に使いやすい
ビジネス書がほしいね」と言い続け、何冊かは出していましたが、そこそこの売り上げ
で止まっておりました。そこへ、あの真面目一筋の樹村房が現れ、『図書館の現場力を
育てる』（注2）を１年前に出してくれました。そして次があなたの本です。尼川さんは
先日「仁上さんの本は、もう増刷だって！」とくやしがっていました。そうだろう、そ
うだろう・・・と思います。
現場の図書館員が、必要な時に、知りたい情報を分かりやすく得られる便利で手軽な
ブックレットが今まで無さすぎました。そこへ、あのピンクに草亀マークの仁上本の出
現です。ビジュアル的にも、文とイラストのバランスが巧みで、取りつきやすい。そこ
に追い打ちをかけるのが、仁上さんの持ち味、適切なタイトルとサブ・タイトルの連記
です。つい目が離せなくなってしまいます。
一見、手軽に読めそうに見えながら、こうゆう本の著者は、実は、その道の達人です。
様々な経験、交友関係、人々との交わりの中から、さりげなく本質に連なる手法を展開
していますね。CUE以降の活動の広さ、トサケンの立ち上げ、教員としての学生との攻
防、数々の講演会と二次会を通じての図書館人との出会い、話し合い、などなどが上手
に結晶されているのでしょうか。一見、「できるところから始めよう」とやさしいアプ
ローチではありながら、その実、全ての判断の基礎に手ごわい批判眼があり、状況の中
にありながら、それに流されない図書館員の専門性の追求があります。
びっくりしたのは、この本『ＰＲ実践講座』の最初に情報リテラシー教育に関する「図
書館利用教育ガイドライン」をでんと掲げていたことでした。他の図書館関係者には見
慣れず読みにくいのではと、引いてしまいそうになるのですが、いや、今読み直しても、
ＰＲの基礎となる専門性の範囲を示しているのだと思い直しました。ありがとう。
ところで、この本で私が楽しんだ一つは各章の見出しのイラストでした。01はなんと
ムンクの叫びなんですからね・・・今の「逆風」の中の図書館員の叫びなんですか？？？
そして02「新しい図書館員像」は謎のモナリサ？？？ 06味方を増やすには種まく人、
08「立ちあがろう」と叫ぶのはドラクロアの女神？ マーケティングはモンドリアンの
コンポジション？・・・あなたの悪戯か、イラストレイターの遊びか・・・
あなたが「あとがき」で書かれているように図書館員に意欲と誇りを取り戻す助けと
なる本だと思います。ご出版おめでとうございました。次のブランディング編、パスフ
ァインダー編を待っています。 （2015年4月13日 私信）
（注1）丸本郁子・椎葉もと子編著『大学図書館の利用者教育』日本図書館協会、1989
年の他、著書・論文・講演多数。
https://acaddb.com/books/authors/562626
（注2）『図書館の現場力を育てる』尼川洋子・石川敬史(著), WEプロデュース・LMゼ
ミ出版プロジェクト (編集)、樹村房、2014.2.
（2015年4月13日にいただいた私信を、ご本人の許諾のもと公開させていただきまし
た。原文に若干の編集を加えた文章であることをお断りします。仁上記／2015.4.20）
日本図書館協会図書館利用教育委員会
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仁上幸治著『図書館員のためのPR実践講座―味方づくり戦略入門―』
樹村房（2014年10月30日刊行）A5判、120p、1,620円（税込）
ISBN：978-4-88367-239-4
http://www.jusonbo.co.jp/books/126_index_detail.php（2017.1.19現在）
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