※主な論文: 石本雄大 2010 半乾燥地域における生存戦略としての食料消費システム -サヘル地域における農牧民の実態調査分析をもとに-. 沙漠研究 20(2) :85-95.
発展途上国では公的社会保障が十分に発達していない状況があります。
ブルキナファソの北東部に暮らすタマシェクの人々は,地理的にも、社会的にも中央から距離があり,行政や国際支援団体からの十分な援助を期待することができません。
そこで,危機的状況に陥った際に支えとなるのが,親しい者同士のセーフティネットです。
食料生産量が低く,かつ,現金収入の少ない世帯(例:老人世帯,寡婦世帯)の食料が底をついた際にも,親しい世帯の食事に合流することで,食事の継続が可能となっていました。
食事をともにする男性たち
しかし,食料を支援する世帯にとって,この慣習は明らかに負担が大きいものですが,どのように成立しているのでしょうか。
調査を行った村では約30世帯が2㎞程に渡って点在していました。
そのうち数世帯ごとに近接し(5~10mほど),そのグループ同士の間には数十から数百mの距離がありました。
あるグループの家屋群
グループに含まれる世帯の家長の間には親族関係がありました。
この世帯間で食事の支援が行われていました。
グループのメンバーは農作業を基本的には別々に行っていましたが、時に手伝い、また家畜の放牧を共同で行っていました。
播種用種子を取る作業
また、食事に合流した後には、調理も合同で行っていました。
つまり、食料消費で助け合う人々は、近所に住む親戚なのですが、食料生産活動などで常日頃から親密に交流しているのです。
トウジンビエの脱穀・製粉作業