途上国農村部におけるセーフティネットの現在

※主な論文:石本雄大,宮嵜英寿,梅津千恵子 2013 携帯電話を利用したセーフティネット -ザンビア南部州の事例を元に-. 開発学研究 24(1) :26-35.

ザンビア農村部では大多数が自然環境に依存するため食料生産と収入が不安定で,かつ,行政社会保障へのアクセスが困難なため,知人とのセーフティネットが社会保障として重要です。

そのような状況下で,ザンビア南部の農民は,急速に普及する携帯電話を,セーフティネットがより機能するために活用することが明らかになりました。






調査地域の携帯電話小売店


携帯電話の使用法には、次の5つの特徴が観察されました。

1) 保有の大部分を占める前払い式の携帯電話の通信料を十分に持たない場合にも,相手からの折り返しにより通話が可能となりました。

2) 携帯電話を非所持の世帯員も,所持世帯の携帯電話を共同利用することが可能でした。

これらの状況を活用し,

3) 供与についての依頼は,遠隔地の血縁者との間で現金依頼を中心に実施されました。

4) 貸与に関する依頼は,現金・生業関連品のため隣人を中心に行われました。

5) 支援依頼の実現可否には,依頼者と被依頼者の親密度,依頼品の貨幣価値,依頼の緊急度,両者の経済状況が深く影響しました。



大きいサイズの電池がヒモで固定された携帯電話

※携帯電話は繰り返し修理され,使用されます。


すなわちザンビア南部農村において携帯電話は,苦境の際に,現金や物品の供与もしくは貸与を受けるために利用され,実現を促進していました。

そして,携帯電話という現代の機器も,彼らの社会的規範や日常的コミュニケーションの文脈に沿って使用されたことが明らかになりました。