請願第3号選択的夫婦別姓制度の法制化を進める意見書の提出を求める請願書への反対討論
(令和8年3月第2回真庭市議会定例会)
請願第3号選択的夫婦別姓制度の法制化を進める意見書の提出を求める請願書への反対討論
(令和8年3月第2回真庭市議会定例会)
選択的夫婦別姓は家族制度の根幹に関わる重大な課題であり、旧姓使用の拡大等の代替手段の検証や子どもへの影響、社会的コストの検討が不十分である現段階で、市議会として拙速に導入を求める意見表明は適当でないと考え、本請願には反対するものである。
私は、本請願・意見書について、「取り扱う議題の重大性から判断は慎重であるべき」との立場から、反対の討論を行うものである。
まず、氏の制度は単なる呼称の問題にとどまるものではない。家族の一体性を社会的に可視化し、世代を超えた連続性を支えるものとして、日本の長い歴史の中で形成されてきた制度であり、現在は民法に基づく制度として位置付けられている。我が国においては、近代以降、戸籍制度と相まって、夫婦が同一の氏を名乗る仕組みにより、家族関係が公的に明確にされるという、社会の基盤を支える重要な役割を担ってきたものである。
このような日本社会の根幹に関わる極めて重要な議題について、十分な熟議を経ることなく、市議会として意見表明を行うことについては、否定的な立場であることをまず申し上げる。
私自身、娘が二人おり、現行制度の下では姓を将来にわたって引き継ぐことができない可能性がある立場にある。しかしながら、それでもなお、氏の在り方は個々の事情のみによって判断されるべきものではなく、社会全体の安定という観点から議論されるべき課題であると考えるものである。
本請願では、改姓や通称使用に伴う不都合について、個別事例や世論調査をもとに制度導入の必要性が述べられている。しかし一方で、子どもの氏の決定や、家族内で氏が異なることによる影響、戸籍制度との関係といった制度の根幹に関わる論点については、十分な検討が尽くされているとは言い難い状況である。
特に、通称使用、いわゆる旧姓使用の限界が指摘されている点については、近年の制度運用の変化を踏まえた評価が十分とはいえない。国においては、運転免許証やマイナンバーカード、パスポート等における旧姓併記が可能となるなど、旧姓使用の拡大や法制化に向けた取組が進められており、民間分野においてもその活用は広がりつつある。
このような状況を踏まえれば、本請願で不都合とされている事例の相当部分は、制度改正によらずとも既に改善が図られつつある、あるいは改善が見込まれるものであると考えられる。
そもそも、不便があるという一点をもって、直ちに制度改正の必要性に結び付ける姿勢についても検証が必要である。その不便が制度運用の改善によって解消し得るものなのか、それとも制度そのものを改める必要があるのかについて、議会が意思表示を行うのであれば、まずこの点を峻別することが求められるものである。
一般に混同されがちであるが、選択的夫婦別姓制度は単なる旧姓使用の拡大にとどまるものではない。民法や戸籍法の改正を伴い、家族制度の在り方そのものに影響を及ぼすものであり、一定の社会的リスクを伴う制度である。
したがって、指摘されている不都合の解消のために、どのような手法でどこまで対応することが適当であるのかについては、慎重な検討が必要である。むしろ、現在政府において進められている旧姓使用の拡大や法制化の動きにより、相当部分は対応可能であると考えられ、その検証を尽くすことが先決であるとの見方も成り立つものである。
そもそも重要なのは、この制度によって何を実現しようとしているのかという点である。本来の目的は、婚姻により不都合を被る可能性のある方々の負担を解消することにあるはずである。
しかしながら、本請願・発議の構成を見る限り、不都合の具体的実態の検証や、旧姓使用の拡大をはじめとする代替手段の検討よりも、選択的夫婦別姓制度の導入そのものが前提とされ、その実現が目的化しているかのような印象を受けるものである。
本来の目的に照らし、課題の実態を正確に把握し、あらゆる対応手段を排除することなく丁寧に比較検討した上で対応を進めるべきであり、結論ありきで制度改正を志向する議論には賛同できない。
また、諸外国の制度については、韓国は原則として夫婦別姓、フランスは法的には別姓でありつつ通称使用が認められ、ドイツは同姓・別姓の選択制を採用しているなど、それぞれの社会制度に応じた仕組みが採られている。
しかし実際には、子どもの氏の決定や家族関係の在り方などについて、導入後も制度運用上の課題が指摘されている。したがって、「世界の潮流」であることのみを理由として拙速に導入することは適当ではなく、導入後の影響についても十分な検証が必要である。
仮に選択的夫婦別姓制度が導入された場合、子どもの氏の決定、戸籍制度との関係、行政実務や民間手続における新たな対応など、追加的な制度負担や社会的コストが生じることが想定されるが、これらの検討は十分とはいえないのではないか。
とりわけ、子どもの視点は極めて重要である。近年の調査においても、小中学生の約半数が「家族で名字が異なること」に対して否定的な認識を示し、将来についても多くが同一の氏を選びたいと考えているとの結果が示されている。
制度は大人の都合のみで設計されるべきものではなく、影響を受ける子どもの視点を踏まえて検討されるべきであることは言うまでもない。
なお、請願においても各種調査が引用されているが、これらについては特定の結果のみをもって結論を導くのではなく、幅広く確認し、調査主体や調査手法の差異も踏まえ、その内容を十分に精査した上で議論を進める必要がある。
そして何より、本件は国においてもなお意見が分かれており、国民的合意が形成されているとは言い難い状況にある。そのような中で、本市議会においても十分な熟議が尽くされたとはいえない現段階において、議会として一方に偏った意見を国に提出することが適切であるのかについては、慎重であるべきであり、拙速な判断は避けるべきである。
日本社会を支える家族制度の根幹に関わる問題であるからこそ、拙速な意思表示ではなく、広範かつ丁寧な議論の積み重ねが必要である。
以上の理由により、本請願には賛成できないものである。
議員各位のご理解を賜ることをお願い申し上げ、反対討論とするものである。