登山道荒廃はまだまだわからないことばかり.たくさん歩いて現場を見ることが大事です
これまで登山中に見つけた登山道荒廃を紹介・解説します(随時更新)
(私の登山中の心がけ)現場を観察ー記録ー分類ー原因を考察ー形態や特徴をまとめる
表流水(降雨・雪解け)による洗掘.幅が狭く深く掘れるパターン,幅が広く浅く掘れるパターンがある@北海道大雪山
樹林帯の狭い尾根では,樹木の根の露出が散見される.露出と登山者の踏み付けは樹木の生育に影響する@長野県北アルプス
上流部で侵食された土砂が下流部に流され,植生帯を覆った.一度失われた高山植生の回復には長い年月を要する@北海道大雪山
登山道外に伸びるガリーの谷頭部にあたる区間.風衝地斜面を直登する形で登山道が走っている.火砕流堆積物に覆われており,特に北向き斜面に位置する区間では現在でも活発な侵食が見られる.荒廃する登山道がどのような場所にあるのか俯瞰することが重要@北海道大雪山
吹き溜まりと融雪水により,土壌の発達と植生が見られる.登山道は斜面をトラバースする.ガリー部分では侵食の大きな進行は見られず安定しているが,登山者の迂回により拡幅した場所が侵食されており土砂の流出が見られる.登山道の拡幅がよくない結果をもたらす事例@北海道大雪山
降雨後や融雪時期には登山道上に流水が発生する.登山者の回避・迂回により登山道が拡幅したり,新たな登山道の形成(複線化)が見られる.この場合,高山植生は踏み付け等により喪失し,回復には非常に長い年月を要する.特に大雪山の風衝地では非常に厳しい.脇に逸れての歩行はやめよう@北海道大雪山
全長100メートルに及ぶ区間の侵食土砂が下流部に流入し,ミニ扇状地を形成.澪筋の変化も見てとれる@北海道大雪山
登山道外から登山道へ水が流入し,側方斜面(法面)に小さな侵食(リル)が形成された@北海道大雪山
雨や融雪水以外にも,風衝地では風と凍結融解作用が登山道荒廃を引き起こす.オーバーハングし,安定性を失った側方斜面(法面)は土塊ごと崩落@北海道大雪山
広く平坦な地形で見られる@アイスランド
拡幅や複線化により,新たに土壌が露出することで侵食の危機に晒されてしまう@北海道大雪山
ササ帯における粘性の高い土質の登山道でよく見られる荒廃パターン@北海道余市岳・暑寒別岳・ニセコ連峰など
小さな下方侵食を避けて歩いた結果,登山道の拡幅が生じた.この区間は斜面をトラバースする形で配置されている.また侵食底部に落ち葉等デブリも見られることから侵食の進行はほとんどないのではないかと考えられる@北海道オロフレ山
樹林帯で粘性の高い表土露出すると滑りやすくなる.登山者は脇に逸れて歩行するため登山道は拡幅する.新しく拡幅した部分も時間の経過とともに滑りやすくなるため拡幅が拡幅を招く悪循環に陥る@北海道ニセコ連峰
成人男性の腰まで入る深さ.一晩で一気に形成されたのか,時間をかけて形成されたのか不明@北海道余市岳
風食と土砂移動により登山道の安全性が脅かされるケース.付け替えや迂回などが必要になる@北海道上富良野岳
2メートルを超える巨大な侵食.この規模になるともはや自然的なプロセスによるものと思われるが,きっかけは登山道の開削である@北海道芦別岳
拡幅や複線化により,新たに土壌が露出することで侵食の危機に晒されてしまう@滋賀県霊仙山
軽石・スコリアが堆積する区間から侵食土砂が流入.チングルマ群落が失われた@北海道大雪山
登山道すぐ脇に迫った崩壊@北海道利尻山
地中内部の水文環境は登山道荒廃をより複雑化させる@北海道大雪山
羅臼岳登山道の水場ポイント「弥三吉水」をすぎると急に侵食が多発する@北海道羅臼岳
登山道が地形的にどのような配置配列になっているか広く俯瞰することで,荒廃の種類や傾向が見える.登山道開削時は登山者優先のルート選定が行われたため,荒廃リスクは度外視だったと考えられる@北海道斜里岳
樹林帯ではほとんど樹木の根が侵食の始点になっている.侵食の結果,段差が大きくなるため登山者の迂回により拡幅につながる恐れがある@北海道ニペソツ山
土壌の剥離など,登山道の侵食を促進する営力の一つ@北海道ニペソツ山
樹木の根を始点とした侵食.侵食される土壌に含まれる充鎮物,母岩の風化具合によって登山道荒廃の進行速度は異なる@北海道美瑛富士
登山者が最も嫌うであろう泥濘区間では登山道の拡幅が最も起きやすい@北海道空沼岳
侵食底部がさらに洗掘(下刻)されるパターンは全国の樹林帯(粘土)でよく見られる.この場合,幅は狭く深い「ミニゴルジュ」の形態が見られる.登山者の踏み込みと水の流れの関係性など調べることは多い@大分県九重連山
渓流と異なり,水の流れが降雨時に限られる登山道でこのような地形が見られるのは興味深い@北海道積丹岳
樹木の根以外にも大きな礫が侵食の始点になることが多い.この場合もステッププール地形に発達するので注意が必要@北海道積丹岳
降雨時に登山道は川となる.ステップからプールへの勢いよく落水している.登山者はこういった段差は避けて歩くため,脇に新しい登山道が形成されている@北海道狩場山
登山道研究は雨天時が最も楽しい.「ミニゴルジュ」に勢いよく水が流れ込む様子@北海道狩場山
さながらミニキャニオンのような登山道.火山灰のような脆い物質に覆われる登山道は管理は難しい@鹿児島県開門岳
狭い尾根において侵食等による凹地形の形成は,登山道がそのまま流路になることを意味する.よって流水のコントロールと排水が重要@和歌山県高野山
花崗岩質(真砂土)が広がる山地では登山道の侵食がよく見られる@鹿児島県屋久島
真砂土のステッププール@鹿児島県屋久島
札幌近郊の山では雪解け時と登山シーズンが重なるため登山道の荒廃が一気に進む@北海道札幌岳
薄い土壌に根を張って精いっぱい斜面に食らいつく樹木.そんな場所を直登する形で登山道が走ることで写真のような結果に@北海道雌阿寒岳
褐色森林土が見られるような本州の樹林帯では,写真のようなステップ(工作物)からの落水に伴う洗掘が多い.結果として段差が大きくなる@福井県荒島岳